風呂桶で物語が作れるということ

「転が弱い」「オチが弱い」そう指導されやすい私ですが、そこで劇薬的なものを入れればいいってわけじゃない……。

そんな課題を持つ私に、納得の見本を書いてくださったような作品です。


物語の導入のなめらかさはいつものごとく。

主人公の人柄の良さは文体から醸し出され、人物説明の言葉が少なくて済むという洗練された感じがあります。

そして、今回のキーワード、風呂桶。

風呂桶の背景がこの物語に奥行きを出し、さらに核を担っているというのは、素晴らしいスキルだと思いました。

その一段階目のひねりと、キャラの意外性の二段階ひねりで、優しい調子の物語に見えますが、グッと胸に来ます。

故に、もう少し、人物描写があったら……と思うところがありました。


書くに至る前の、調査や取材の大切さが身に染みました。