紫苑と少女 🌺
上月くるを
紫苑と少女 🌺
ひとりゐる少女に降りる秋の雲
天高しまさらな耳にささやける
遠目にはやさしく見ゆる鰯雲
近寄れば数多の小骨うろこ雲
秋色や気づきし母の近寄りぬ
秋風は薄き笑顔で立ち去りぬ
どうしたの少女答へぬ紫苑かな
紅藤の紫苑やさしくほほゑみぬ
丈高きしをにに託すこころかな
紫苑咲く少女の耳はけがされず
案じゐる母には言へぬ秋の声
おずおずと仰げる空に秋の雲
*
星飛ぶや少女黙して成長す
秋深しあの日の毒を耳底に
花芙蓉母には告げぬ傷みかな
九年母や子の悲しみの種零す
*
とき過ぎて秋空たかく鈴の音
教会の木の扉にも木の実降る
秋晴れや佳きひとを得て幸せに
つまべにや恋女房の泣きぼくろ
紫苑と少女 🌺 上月くるを @kurutan
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