第5話 大晦日の歌

「年越しそば、そろそろ作りませんか」


 炬燵に突き刺さり、紅白歌合戦に目を奪われたまま、スナネコがツチノコに言った。


「作るって言ったって、台所に行く気ないだろう」


 剥いていたみかんを置いて、ツチノコはスナネコの頬をつつく。

スナネコはこたつの下をゴソゴソしたかと思うと、日中に買っておいた蕎麦の乾麺をこたつの上に広げた。


「これをお鍋に突っ込めば大丈夫です」


 炬燵の上には、二人でつついた鍋の残りが、片付けられずに置かれている。


「だいぶ濃ゆくなっちゃってるだろ。ちょっと水さしてくる」


 よっこらせ、とツチノコが炬燵から抜け出そうとすると、炬燵の下でスナネコの足がツチノコの足に触れた。


「なんだよ」


「寒いのにありがとうございます。戻ってきたら、ボクのとなり来ていいですよ」


 すぐ戻ってくるよ、と言ってツチノコは立ち上がった。

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ツチスナといっしょ けもフレ3編 とがめ山(てまり) @zohgen

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