第13話「【フォース・オブ・スノウ】」

 物心ついたころから、虐げられている妹がいた。

 だが、それも当然のことだと思っていた。

 なぜなら自分は冬神に愛された四女フォ―スであり、妹は生きる価値もない五女フィフスだったからだ。


 いつもビクビクしていて何ら価値のない妹だったが、1つだけ有用なところがあった。

 自分――雪の四女フォース・オブ・スノウが受けたくない授業があるときに、妹と入れ替わってサボることができるところだ。

 スノウはフィフスを顎で使い、フィフスとたびたび入れ替わった。

 フィフスはいつも屋根裏部屋に閉じ込められていたので、入れ替わったスノウが野山で遊んでいても、バレることはなかった。


 ある日、スノウは可愛らしい年下の少年・アイスと引き合わされた。

 アイスを手下にして野山で遊ぶスノウだったが、スノウのことを『姉様』と呼んでとてとてと後ろを付いてくるアイスが可愛らしくて、スノウはアイスのことをすっかり気に入ってしまった。

 スノウはフィフスに授業を押しつけては、抜け出してアイスと一緒に遊ぶようになった。


 フィフスもまた、スノウの振りをしているときにアイスと接する機会があり、アイスに恋をした様子だった。

 アイスと一緒に遊びたがるフィフスだったが、スノウはそんな彼女を一蹴した。



   ◆   ◇   ◆   ◇



 スノウとフィフスの5歳の誕生日。

 長々とした式典や祈り、続々と訪れる来訪者への挨拶に辟易したスノウは、いつものように入れ替わってアイスと遊びに出かけた。


 遊び疲れて帰ってみると、家の者が血眼になってフィフスを探していた。

 スノウはフィフスだと思われたまま父母の前に連れていかれ、そこで背中に『予備』を意味する焼き印を入れられた。


 この国では、5歳児までは『神の子』と呼ばれている。

 長じれずに亡くなる子供が多いからだ。

 逆に、5歳を超えればもう大丈夫だとして、人の子として扱われる。

 もともと四女フォースの予備扱いだった五女フィフスが、正式に予備になった瞬間だった。


 スノウは泣き叫び、自分こそが四女フォースなのだと何度も訴えた。

 だが、誰も信じてくれなかった。

 泣きはらした様子のフィフスとも目が合ったが、すぐに目を逸らされてしまった。


 こうしてスノウは、五女フィフスとして生きていくことになった。

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