第66話瓜実金太世界を釣る
ハワイで朝食と言えばそう、ドーナッツである。
ハワイ通のキツネ耳、豊川さんの案内で地元の人がよく行くドーナッツショップにレンタカーで行く。
運転は一花さんに任せ、俺と夏目と母親、銀太郎さんと豊崎さんの五人だ。
瓜実氏と希来里さんは全然寝ていたし、ニックと栗鼠崎さんは二日酔いで動けないからおいてきた。
地元警官が制服のまま買いに来てるくらい地元密着なドーナッツはとりあえずデカく甘い。
俺と母親はシェアして半分こ。夏目は満面の笑みで粉砂糖まみれになりながらもりもりドーナッツを食べている。
一花さんと出会ったキツネ耳の豊川さんは、
「私が死んだときもお願いね」
と、俺にウィンクした。
豊川さん、死にそうにないキャラ第二位である。無論一位は希来里さん。
ホットコーヒーを飲みながら海岸線をドライブ、夏目が見つけたマイフェイバリットマクドナルドにより、夏目がメニューの中にライスが乗っているプレートを見つけ大興奮、今日二食目のハワイオリジナルブレックファーストプレートを店の前の海岸に下り、海を見ながらがつがつ食べる。
「やっぱりマックは最高じゃ!!」
夏目が楽しそうで何よりだ。
母親も笑顔でもりもり食べる夏目を見ている。
日差しは強いが風が吹いていてすごしやすい。
海は青く、空も青く、夏目もずっと楽しそうだしハワイ、控えめに言っても最高ではないだろうか?
ウメが近くの地元のレコードショップの軒先のあったウクレレを買ってきて、ぽろろんと奏で始める。
ウメは楽器の演奏がうまいし好きなようだ。
今度好きな楽器をきいて買ってあげようかなと思う。
海、ウクレレの演奏、そこにたたずむ骸骨が全てを台無しにするがそれはそれ、風も気持ちいい。
そんな気持ちも台無しにする車が一台視界の端に映っている。
ダークスーツの男たちが車の中からこちらをうかがっているの見える。
まあいい、こっちからは接触しないし、あっちから接触されても無視だ。
夏目がプレートを食べ終わり、バカデカいコーラを飲み切ったので車に乗り込みペントハウスに戻る。
ペントハウスの中ではニックが希来里さんに朝ご飯を作らされていた。
「鉄火丼じゃ!!」
夏目は希来里さんがガッついているどんぶりを見て大興奮、ニックに字部員の分んもおねだりする。
「鉄火丼!! ニック!! 鉄火丼!!」
「ポキだぜ!」
夏目にポキを出してくれるニック。
今日三回目の朝ご飯をモリモリ食べる夏目。
瓜実氏も起きてきてポキを見て、
「朝から鉄火丼か! 最高じゃねーか!」
と言い、ニックにポキだと訂正されていた。
俺はウメにウクレレを習い、簡単な曲を弾く。
母親はベランダに出て、椅子に座り海を眺めていた。
朝からポキをどんぶり三杯食い切った希来里さんが立ちあがり、
「海行くわよ!」
と、雄叫びをあげる。
栗鼠崎さんと豊川さんと夏目と母親を水着に着替えさせ、自分はアマゾネスにしか見えない筋肉の鎧にビキニに包み出発する。
ニックは二日酔いの中無理やり朝食を作らされたので再度ダウン、銀太郎さんは小間使いとして希来里さんたちに付き従いビーチに向かう。
残された俺に瓜実氏が、
「お前さん、いける口か?」
と、竿をくいくいするしぐさを見せた。
◇◇◇◇
俺と瓜実氏を迎えてくれたキャプテントムは笑顔で握手を求めてくる。
船上でトローリングの説明を受け、出航。
四本ほど竿を流し、船は進む。キャプテントムが言うに魚探はビンビンだから今日は釣れるとのこと。
素肌にライフジャケットを着た瓜実氏がにやりと笑う。
十五分ほど船を船を流すと右端の竿についていたアウトリガーのゴムがパシッと切れる。
竿がぶるぶる震えだし、糸がどんどん出ていく。
「ミスター!!」
キャプテントムが瓜実氏に声をかける。
ベルトをし、椅子と自分を固定する瓜実氏。
キャプテントムが竿を瓜実氏に渡す。
「ファイ!」
魚と瓜実氏の戦いが始まる。
しなる竿、浮き上がる上腕二頭筋、跳ねるカジキ。
デカい。
かなりの引きではあるだろうが、そこは横浜ダンジョンの上澄み探索者瓜実氏だ、筋力の物を言わせぐいぐい糸を巻き上げる。
それでも三十分ほどのファイトの後、フッキングし上げたカジキの巨体は二メートルは軽く越えるのではないだろうか? 汗まみれの瓜実氏は金歯を見せて笑う。
まさに瓜実金太世界を釣る!だ。
それじゃ次は俺かと気合を入れると、キャプテントムがカジキが大きすぎて船にあげられない、鮫に食われる前にカジキを陸にあげたいと言い出し帰港することになった。
港で多くの人に見守られながらカジキが吊るされ、瓜実氏がその横に立ちキャプテントムが記念写真を撮る。
その後も色々書類を書いたりなんだりして、瓜実氏とキャプテントムは忙しそうなのでマリーナの横で一人ぼうと海を見る。
まだまだ時間がかかりそうだ、すぐに船は出ないだろう。
ウメと一緒にウクレレでも弾こうかなと思っていたら、ダークスーツを着た三人が近づいてくる。
「船、すぐ出ます」
はい、行きます。
瓜実氏のよりデカいの釣ります。
俺はダークスーツの男たちと共に船に乗り、一メートルを超えるマグロを二尾釣り上げ、上がり切ったテンションそのままで、アメリカ本土に行く約束を取り付けられてしまった。
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