第21話 痛み再考①ー愛のあるセックスとはー
“初めては大事にしなさい”
これ冗談抜きにしてマジ。
そんなことないよって言う奴はただの強がりか穴モテブスだと思ってる。
性行為というものは、関係を築きあげたうえでお互いの同意を持ってするものなんだから。
初めてを大事にしなきゃね、性行為というものが価値のないただの作業になっちゃうんだよ。
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最近の立ちんぼ女子は以前よりレベルが低くなっていると思う。
今のメインは外国人と地雷系デブ。若くて可愛い子もいるけど、どこか風呂に入っていないかのような不潔感がある。
警察が一回取り締まりしたからかな。前に通った時とメンツがだいぶ変わっている。
だから、カナエみたいな若くて綺麗な清楚の女の子が立っていたら皆そこに群がる。
私は目に涙を溜めながら汚いおっさん達の群れに入り込み、かなえの目の前まで歩みを進めた。
「ホ別5でいいから。」
「どっから来たの?」
「おじさんテクニックあるからさ。あ、今日車で来てるんだけどカーセックスでどう?」
「えー未成年じゃないの?バレたくないなら分かるよね?」
チー牛ジジィともが、汚い口でカナエに喋りかけている。あー仕事以外でジジィの群れに飛び込まなきゃいけないの最悪すぎる。それにもれなく全員臭い。夏のジジィほど汚臭兵器なものはない。
群れを抜けてカナエの目の前に着いた。
カナエはスマホをいじり下を俯いていた。生意気にもカナエは化粧をしている。しかも、めちゃめちゃ上手い。
化粧をすると本当に私と顔がソックリだった。
「カナエ…」と私は小声で言った。
カナエはゆっくりと顔を上げた。
「未来ちゃん…」
カナエの死んだ目にどんどん生気が戻ってきた。
「帰るよ…」と言って私はカナエの手を引っ張ろうとした。
「いや…」とカナエは言って抵抗しようとしたが、すぐに大人しく受け入れた。
それはカナエの周りを囲んでいた男達が撮影をし始めたからだ。ニヤニヤしながらスマホで撮影する。気持ち悪い。死んで欲しい。
そして、10メートルほど離れたところでYouTuber と思われる若い男が
『立ちんぼ女子に今から凸りますー!』
と大声をあげてこちらに近づいてきた。
私はカナエの手を強く引っ張り駆け出した。男達はカメラを構えたまま 走ってついてくる。「百合だ」「百合だ」と小声でぶつぶつ言っている。本当にキモい。
「み、未来ちゃん!待って!これは!」
「うるさい今は黙って走れ馬鹿!」
横目に入った立ちんぼ女子が私達のことを空っぽな目で見ていた。こんな目をした人をカナエはまだ見ちゃいけない。
5分ほど走った。人数は減ったが、さっきの若いYouTuber はまだ追ってくる。しかも足早い。
「み、未来ちゃん!」
「だから黙って!」
「電話!鳴ってるよ!!」
「え」
私は一瞬足を止めた。確かに電話だ。過呼吸がひどくて電話の音が聞こえないけど鞄が震えていた。いや、でも今は電話どころじゃ…。
あ、冬馬だ。
私は鞄からスマホを取り出した。画面には090から始まる番号が表示されていた。私は通話ボタンを押し再び走り始めた。
「とう…」
『そこの角曲がったビジネスホテルに入れ!』
冬馬の怒鳴り声が聞こえた。
「わ…分かった!」
『冬馬で予約してるから!』
と言って電話が切れた。
こ、このシゴデギがぁ!
私とカナエは角を曲がり、チェーン展開しているビジネスホテルに入った。
フロントに名前を伝えると鍵を渡され、私とカナエは456号室に入った。
鍵を開けると目の前には冬馬がいた。目が少し充血している。
「追手は!?」
「多分いない」
そうか…と言って冬馬は窓から外を確認した。
「まだウロチョロしてるな」
「くそ…」と私はつぶやいた。
「なにはともあれ2人とも無事で良かったよ。」と冬馬は私とカナエのことをまとめて抱きしめた。
「やめて!汗臭い!化粧落ちる!」
「えぇそんなに言う!?」
私と冬馬はくだらない話をするのと同時に横目でカナエの様子を伺った。
カナエの息はまだ荒れて震えていた。話を聞くのは後だ。今は休ませなきゃ。
「カナエ…一回ベットで休みな…」と私が言いかけた途中でカナエは私の手を引っ張りベッドに押し倒した。
カナエの力が意外と強くて驚いた。
そしてカナエは私の上に馬乗りになった。
冬馬はビックリして動けなくなっていた。情けないと思いたいが私も突然の出来事で動けなくなっていた。
「未来ちゃん…」
「な、なに…?」
「SEXごっこしよ」
「は…」と言おうとしたが私は声が掠れて出なかった。
カナエは上着を脱いで下着姿になった。
「待って!」私は下からカナエのことを抑えようとした。
カナエはそんな私の腕を掴み押し倒した。
「未来ちゃんはカナエの役ね…。私は…先生の役」
「先生…」
それは事件の…
「な、何考えてるの?カナエ…」
私の声は震えた。
「愛のあるセックスなんだって。愛のあるセックスになったんだって。」
「どういう…」
「示談したのか…」
後ろから冬馬の声が聞こえた。どんな顔をしているか分からない。
私の目の前には、目をカッピラいて私のことを今にも襲おうとしているカナエしか見えない。
「そう…一切の刑事罰を求めません…同意のある性行為でした…示談金として50万円あげます…だって!」
「か…」
「未来ちゃん!そうなんだって!!!。残念だったね未来ちゃん!わざわざタイムスリップしてきたけど未来は変わらなかったよ!!この役立たず!!」
と言ってカナエは私の頬を平手で叩いた。
「20年後の私はどうして10年後の私を過去に送ったの?」
何の話…。
「役立たずじゃん。何もしないじゃん10年後の私は…」と言ってカナエは涙を流した。
カナエの話が一つも分からなかった。
「未来ちゃん、どう!?思い出した!?事件のこと!?あぁもう事件じゃないのか!愛あったんだもんね!」
と言ってカナエは私の上の服をたくしあげた。
そう、私は事件のことは何も覚えていない状態でタイムスリップをしてきた設定なのだ。
私は自分の無能さに腹が立ち涙が溢れてきた。
「今から、あの時のことぜーんぶ再現して未来ちゃんに思い出させてあげるから!!」
と言ってカナエは私にキスをした。
そう、キスから始まったんだ。
ミライは風俗嬢 地極ミミ @chikyokumimimi
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