無職

僕は働くことに向いていない。

そして、兄もまた、働くことに向いていなかった。



兄は高卒で就職し、同じ職場で10年間働き続け、表彰までされていた。

同じ職場で働き続けることができない僕は、そんな兄を尊敬していた。


しかし、ある時、兄が仕事を辞めたことを母から聞かされる。

その頃、僕は既に4箇所もの職場にお世話になっていた。


兄に何があったかは分からないが、そのうち働くだろう、そう思っていた。


兄が仕事を辞めて少し経った頃、県外で夢を叶えるべく一人暮らしをしていた僕は、両親との相談の結果、実家に帰ることになった。


お金がないのだから働くしかないのだが、兄は働こうとはしなかった。

理由は分からない。

分かろうと努力はした。

専門家に相談し、できる限りの手を尽くしたが、どれも実を結ばず、月日は無情に流れ続けた。


兄は、あれから今に至るまで、まともに働いていない。

180cm100kgとなった、無敵の兄に何をされるか分からない。

両親は、日に日に偉そうになる兄を恐怖の対象として接するようになった。

僕は仕事から帰ってくると、兄の残飯を食べて、毎日を何とかやり過ごしている。

どうか、せめて愛される無職であってほしい。



僕も辛いことはたくさんあった。

それでも、様々な職場で得た経験や出会いは、多くの幸せをもたらしてくれた。

仕事を通じて、人と関わり、共に何かを成し遂げる喜びも知ることができた。

そんなものが兄にもあったら、何かが変わっていただろうか。


働くことに対する苦しみや葛藤は、僕たち家族だけのものではない。

それでも、多くの人が、厳しい状況の中で何とか一歩踏み出している。


月曜日が来ればまた、いつもの場所へと歩き出す。

その一歩が、人生を豊かにすると、僕は信じている。

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日々転々 @omuro1

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