第4話

パシィはセリクの腕の中で静かに息を立てて寝ていた。


セリクを光で覆った髪の長い女性がパシィに微笑み見かけ細く白い手で頬を優しく撫でてくれた、パシィは愛おしい気持ちになり思わず、お母さ、とパシィは言いかけたすると遠くへと去ってしまった。

「待って!」とパシィは目覚めるとバージニアと出会った部屋にいて寝具に横たわっていた。夢だったどこから自分が力を使ってもう魂を抜かれたの?でも父さんを思う気持ち、みんなを救いたいという心は残っている。

体は動く、抜け殻になんかなっていない、少し起き上がるとパシィの寝ている端に銀色の髪をしたセシルが眠っていた、パシィが起きるのをずっと待っていてくれたのか、パシィの傍で安心し疲れ果ているのか、すやすやと気持ちよさそうに眠っている。

セリクの顔を改めて見てみた、長く銀色のまつげはカーテンから差し込む光に反射して星の輝きを纏ったようにきれいだなと見入ってしまった、アクマだと思っていたが今はまるで天使のような寝顔だ。

カーテン越しの光でセリクが「んっ」とまぶしそうにして目を覚ました「パシィ?」

「良かった、君が目覚めるのを待ってるつもりだったのがいつのまにか僕の方が眠ってしまったんだね、こんなに気持ちよく寝ていたことは無かったよ。」とほほ笑むセリクにパシィはセリクを見つめていた自分に少し恥ずかしくなったので目を背けてしまった。

「みんなに報せなきゃ。」セリクがバージニアを呼ぶ呼び鈴を鳴らす。

煙とともにバージが現れた「パシィさまー!!」とパシィに泣きつく。と思った時ドアの方から勢いのある音がして強くドアを開けた。

「パシィ!我が孫よ!」と王が威勢よくパシィの肩に手を置く。パシィは二人の声が大きくて心臓が飛び出しそうだ。

「パシィ!」とはっきりとした声で呼ぶそこにはリュカがいた。

リュカを見たとたんパシィは王国の外も良くなったんだと思い、肩の力が抜け涙が出てきた。

「パシィありがとう、お前を利用したようでごめんな。お前のおかげで妹は助かった。とこれ。」とリュカが一枚の紙を差し出した。

(パシィ、お前のおかげで父さんの呪いは解けた、魔術師を上手く説得できたんだね。ありがとう、母さんもどこかで喜んでいるよ。父さんが王国から逃げ出したことも謝りたい、私にはできなかった、今も森宿守としてこの森を見守り続けるつもりだ。お前の友達リュカから聞いた、王国を継ぐと言ったそうだね。お前は強い子だ、お前の帰りを待つことは私の幸せの限りだがお前の自由だ。この先はパシィ自身が決めなさい。いつまでも愛しています。)

父の筆跡に間違いない、パシィは「この先は自分で決める、、」父のもとに帰るつもりでったパシィだったがその言葉に戸惑った。

王が「パシィ、この国を継いでくれとは言わないがその気持ちがあるのならばお前を迎えたい。このセリクとともに。」魔術師セリクもこの国のためにと思ってこの国を豊かにしたが、その反動で国の外が荒れてしまった、王もセリクが国を思う気持ちは分かっているうえで言っている。

「魔術は解いた、僕も魔術は少ししか使わない、もう魔力が無くて使えないんだ。この国も貧しくはなるが少しずつ王や国民と苦労を分かち合って、助け合っていきたい。国の外は前とは違うもう平常になった。」セリクが落ち着いて言った。

パシィは「私、この国、父さんが逃げてしまった国だけど、この国が美しくて好きだわ。」

王が「ならばこの国を継いでくれるな」とはつらつと言った。

「はい。王様ですが、条件があります。」


パシィは暑い森林を歩いている、と「パシィ!川があるぞ!」リュカが言った。

「わあ」とパシィはリュカの方へ向かっているその川には花も咲き誇り、魚も虫もいて自然が満ち満ちていた。そこにはあの旅の時のようにキクリはいない。

国を少しの間空け、手紙を残した「父さん、王様、セリク、バージニア私は旅に出てもっと自分の目で世界を見てみたい。いろんな国の文化や習わし、自然、自分で確かめてから必ずこの国に戻ってきます。それまではおじい様とセリク、バージに国を任せます。父さんのもとへも顔を見せに行きます。」と手紙に託した。

森の神様、私に宿した力はもう使い果たしました、ですが私のできる限りの事をしていきます。母さんにも誇らしいと思えるように。






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シィの森 ひじか ゆい @4134

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