第39話ああ、永遠に貴方に愛された今日を生きたい
「僕たちも、公表して、十八年前のような、事が起きるかもと、考えました。でも、どうしても公表しなくてはいけない。メロウは歌うことが好きです。歌姫になる夢をひそかに持っているんです。きっと、歌姫になれる。公表しないと叶えられない」とアラオルが優しくメロウを見て笑った。
「歌姫になれるなんて買いかぶり過ぎです。でも、私のためにいろいろ動いてくれた先輩たちのために、求婚を受けることにしたんです。彼らの為にも、歌いたい。歌姫になる、それ以前に、私が歌いたいんです」
目の前に立っている、歌姫ルリアの絵にそっくりなメロウ、この、十八年間を思うと、心が痛かった。ナグはにっこり笑って、「よい記事を書きます。ボナルド国に行くんですね、ルリア様の生誕百五十年の祝賀会に参加するために」
四人の仲良さそうな様子に、ナグは心を動かされたのだ。
その夜、メロウの夢の中で、ルリアが手に赤い花を持ち、歌っていた。
愛が 愛が 愛があふれて 止まらないの
唇からは 愛の言葉しかこぼれないわ
貴方の目に映るわたしは きれいかしら
ああ、永遠に貴方に愛された 今日を生きたい
三人の求婚王子とメロウは記事が出た時に備えていたので、ナグと話し合った三日後に新聞に記事がが載ったとき、それぞれの覚悟はできていた。
メロウは、一時的に、兄、ミオリの家に避難した。
三人の求婚王子たちはいつもどうりの学園生活を送ることが、一番良いだろうという事で、身を隠す事はしなかった。
しばらくは、学園にいても色々騒がれることだろうと、分かっていた。
新聞記事が出た時の人々の反応は、大変大きなものだった。
何しろ、十八年たった今でも、三人の求婚王子と呼ばれている、三人の領主の息子たちだ。
あの時生まれた男の子が実は、女の子だったなんて、『嘘だろー』って話だ。
新聞はいつもの三倍売れ、「新聞みた?」が挨拶がわりになった。
「嘘でしょ、本当に?」が大半の反応で、「メロウが女ってことは、メロウは誰と結婚するの?」「ギルディ様だよね」
「グオン様でしょう」
「アラオル様にしてほしい」と口々に言い合った。
それは、大学内でも、同じだった、四人共ここにいるのだ。大変な騒ぎとなった。
三人の求婚王子が朝の食堂で話すことになった。
「新聞の発表は本当のことで、メロウは女性だ。俺たち四人の、個人的な事で、世間を騒がせて済まない。ここまで、騒ぎが及び申し訳ない。俺たち、三人は、ずっと求婚王子と呼ばれてきた、三日前に、俺たちは、メロウに求婚した。これで、やっと、正式な求婚王子だ」とギルディが言った。「メロウは、騒ぎが少し収まるまで、身を隠すことになる、皆そっとしておいてほしい」とアラオルが言った。ざわざわと、皆の声が聞こえた、近くの者同士、話していたのだ。多くは、野次馬的な会話だったが、良く思わない者達もいた。
三年生の席の方から、「メロウは大丈夫なのか?こんな騒ぎになって心配だな。だが、メロウは我々の大学の同士だ。メロウの事を悪く思う奴はいない。なあ、皆、そうだろう?だが、言いたい奴には言わせておけ、心の狭い奴だ。ギルディ、アラオル、グオン、メロウをしっかり守ってやれよ」と三角ボール部のナライが立ち上がり皆を見渡しながら言った。
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