第34話歌うイオル 秘密の計画
哀しみの夜があけたら 君に会いに行こう
会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
君に会いたい
涙の海に溺れて 一筋の光を見た 君だ
君こそが 僕の愛 夢 希望
朝焼けの道を駆けていくから
まっすぐに君をめがけて 走っていくから
抱きしめて その腕で泣かせて
君だけが僕をわかってくれる
会いたい 会いたい 会いたいよ
若者たちのための音楽会で、カナリア組のイオルが歌っていた。
イオルは、大きな目が魅力的で、その美しい顔立ちで、女性に人気があった。もうちょっと身長が高かったらなと本人は思っているようだが。「ぴったり百七十センチなんだ。あと五センチほしかったな」とよく愚痴っている。
「その顔だったら、僕は百六十九センチでもいいよ」と口笛担当のナルが笑って言った。「イオルは贅沢だよ、顔良い、声良い、スタイル抜群、女子からの人気を独り占めして、その上、もっと身長がほしいなんて、僕が神様なら怒っちゃうよ」キオが笑い、「演劇部の劇にも出るんだろ?」と言った。
「ああ、部長に頼まれてね、いつも、ガラク先生に歌詞書いてもらったりして、お世話になっているから。先生の書いた脚本でね、『水面に浮かぶ愛』って劇。池に棲む水の精霊の役」
「おっ、いいな、俺も二年生のとき出たんだよ、『螺旋階段の夜』って劇。螺旋階段に出る歌う幽霊の役「とラナンが話に割り込んできた。
「みましたよ」と三人が声をそろえて言った。
「俺は、歌う幽霊の役だったから、学園で一番歌が上手いから選ばれたんだ。でも、イオルは顔で選ばれたんだろう?」
「役にピッタリだって言われて。あっ、でも歌う場面がありますよ」
「ふーん」ナルとキオ、ラナンが笑いながら言った。
メロウの事を話し合うために、メロウたち兄弟の父を交えての食事会が明日ある。
南の領に住んでいる、兄たちは音楽会に出るという口実で一日早く、首都に出てきた。
次男のソル、三男のマイナ、四男のイルドが昼前に着いた。
「メロウ、心配するな、兄ちゃんたちがついてるからな」マイナがメロウの頭をなでた。ソルに抱きついたメロウは、南にいる時一番頼りにしていたし、こまめに面倒みてくれていたのでソルが大好きだった。
ミオリは医師になるため、ずっと、首都にいたのだ。メロウが大学生になり、三人の求婚王子たちと同じ大学にはいることになった時に、側で守るために。
三人の求婚王子たちは、兄たちと居る時のメロウの変わりように、少し複雑な思いだったが、恋人になった時、メロウはこんなふうに甘えてくれるのかなと、考えて、少しにやけてしまった。
音楽会が終わった後、エミナの家に移動した。
夕食後、居間で話し合った。ソルたちが、父の考えを皆に話した。メロウとミオリ、ラナン、そして、三人の求婚王子たちは真剣な表情で話しを聞いた。
「メロウを連れて帰る…学園には帰さない……メローディアとしての人生を送らせる?メローディアって?」グオンが動揺して言った。
「メローディアって言うのは、メロウの女の子としての名前、本名だよ」とミオリ。
「メローディア?」三人の求婚王子たちは驚いてメロウの顔を見た。
「計画が上手くいって、学園を卒業したら、家に帰って、メロウは姿を消してメローディアとして、別の地で女性としての人生を送る予定だったんだよ」とラナンが言った。
「メローディア?」とギルディ。
「はい、でも、物心ついてから、その名前で呼ばれたことないです。だから、私の名前って気はしないですね」と少し気恥ずかしくて横を向いた。
「だって、子供には使い分けることできないだろう?家と外で分けるとか、だから、メローディアを使うことはなかった」とミオリがメロウの頭に手をのせて、「ごめんね、お前にばかり苦労させて」と言った。
「姿を消すって、メロウは死んだことにするんですか?」とグオンが泣いた。
ミオリはメロウの頭を抱いて、「……そうだね、メロウは形だけ死んだことにして別の人生を生きることになる」と泣いた。
「ごめんね」
兄たちが涙ぐんで見ていた。
「兄さん良いんだよ、守ってくれたじゃない、今まで」
グオンが涙ぐんで、唇をかみ、アラオルとギルディに言った、「ぼくたち頑張ろう。メロウを守ろう。皆でやり遂げよう、メロウがぼくたちの前から消えてしまう。断固阻止しなくては」
「そうだね、ちゃんと計画を立てよう。明日が勝負のときだ」とアラオルが難しい顔をした。
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