第32話恋する君の十三の質問
好きな物は何? 嫌いな物は?
何をしているときが一番たのしい?
初めてのデートで 君は僕を質問ぜめにした
緊張して 何も話せないで終わるのが嫌なの
君は笑った
いつも 見つめるだけの恋だった
こうして 二人でいるのが 夢みたい
だから、最初で最後のデートでもあなたのことをたくさん知って帰りたいの
好きな色はなに? 好きな歌は?
あなたのこと 何でも知りたいわ
だって あなたの事 大好きなの
友達のお膳立で 小さな喫茶店で 二人
こうして 向かい合っている
恋する君の 十三の質問
いま テーブルをはさんで 二人
一生忘れないわ あなたの事だけ話題にして
美しい思い出だけ胸にだいて 帰るの
十三の答えをもらって……
音楽堂での、口笛部の小さな演奏会が開かれた。日曜日には、定期演奏会や、色々な催しがあり、いつも音楽堂は賑わっていた。出ることが決まった時、ヒヨコ組が新
曲をやるから来てと手を合わせた。ラナンが笑って、「お願いされなくても行くよ」「恋の歌です」ヒヨコ組がうれしそうにはしゃいだ。
「恋の歌が似合わなそうなのにな、おまえたち。でも、初恋って感じが、いいよ」
客席から三人を観ていたメロウは兄二人に「ヒヨコ先輩たちって、弟みたい。なんだか、一生懸命な感じが、際立っていて、よしよしってしてあげたくなりますよね」
「そうだな。あっ、そろそろ終わりだよ最後の方の歌詞が良いんだ」
……あなたの好きな物に囲まれて 暮らすの
今日はありがとう
また会える?
そこで君の好きな物教えて 会うたびにひとつずつ
ぼくから 君への 十三の質問
沢山の拍手を貰い、ヒヨコ組の三人はうれしそうだった。
深く頭を下げて、お辞儀して、舞台袖にさがった。メロウたちがホールで待っていると、楽しそうに感想を言い合い口笛部の部員達がにぎやかに出てきた。
「ラナン先輩、僕どうでした?」
とシドが言った。
「よかったよ、今年一番に」「うわー、嬉しい、先輩、悪いときはずけずけ言うもんね」「だって、かわいい後輩にいい演奏してほしいからさ」
「あれ、今日は三人の求婚王子たちいないの」とロン。
「ええ、三人共用事で実家に帰っているんですよ」
「へー、なんだか物足りない感じ、メロウ寂しそう」とライがメロウを見た。
「そんなことないですよ、今日中には帰ってくるんですから」メロウは先輩たち、今頃何してるのかな?話し合いはうまくいったかなと思っていた。ここで失敗すると大きく計画が狂う。
「どうだった?」とギルディが聞いた。
「ぼくのところは大丈夫」グオンが笑った。
「メロウはうちの領だ、父はショックだったと思う。でも、何とか、納得してくれたよ」アラオルはすんなりとはいかなかった、夕べの父とのやりとりを思いだして、小さくため息をついた。(何とか乗り切れてよかった)
日曜日の遅くに、寮に帰って来た、三人の求婚王子たちは、状況を報告しあった。
それぞれが、明るい顔をしていたので、話合いは上手くいったのだとわかった。
「よし、次が大事だぞ、気合入れていかなくちゃ」とギルディが言った。
「メロウとシーナ先生とラナン先輩に頑張ってもらわないと」アラオルがうなずきながら、簡単ではなかった父との話合いを思い、祈るような気持ちで言った。
「南部の人は頑固な人が多いんだ」
次の日、 三人の求婚王子が朝食を食べに食堂に行くと、メロウとミオリがが待っていた。三人の明るい顔を上手くいったんだなと、わかった。
「おかえりなさい、上手くいったんですね」
「おう、俺は頑張ったぞ、メロウもがんばってくれるよな」「はい」
ミオリには分っていた。この子たちはどんなことも突破していくという気概がある。それほど、真剣だということだな。
「メロウぼくも頑張ったよ。ちょっと、泣いちゃったけど」とグオン。
「グオン先輩は泣くとと思いました、頑張ったんですね」
うん、うん、とグオンは半泣きで、うなずいて、「会いたかった」と言った。
こいつって、ずるいな。僕が一生できないようなことを、さらっとしてしまう。アラオルが苦笑した。「僕もなんとかやり遂げたよ、メロウ。メロウも頑張って」
「アラオル先輩、ありがとうございす。先輩が一番大変でしたよね、わかります。父は、領主さまの事をとても尊敬しています。あの……怒っていませんでした?」
「驚いてはいたよ。メロウの事を心配していた。可哀そうな事をしたと言っていた」
「そうですか、許してくれましたか。ありがとうございます」
「俺たち、三人がんばったよな」「うん、第一関門突破だね」
四人のやり取りを見て、「さ、僕も頑張らねばな」とミオリが決意した。
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