第30話グオンと父
「ぼくが初めてメロウを見たのは、春の日の午後、シロツメ草が咲いている、まるで、緑と白で織られた絨毯の様に見える公園の一角でした。花の妖精のようだった。ぼくは、十歳だった。あの子がメロウか……ぼくはかわいい物や、美しい物が好きです。花や子猫や、小さい子供をかわいいと思う気持ちの延長のような感情だったんです。メロウがかわいい子で良かった。そう思ったんです。三人の求婚王子って呼ばれることを強く、意識したころでした。ギルディも同じころメロウを見に行ったことがある、と言っていました。メロウは僕らにとって、特別な存在でした」
北部の領主オルドの屋敷はミカン畑が続く山の麓にあった。石垣の内側には、赤い花がぐるりと植えられていたし、色とりどりの花が植えられていた。庭でお茶を楽しむためのテーブルや椅子がに置かれていた。グオンはこの週末、父と話合うために、実家に帰った。お気に入りの場所で早速、お茶の時間を楽しんだ。料理人の焼いてくれた焼き菓子にはちみつをかけて、香り高い紅茶を飲んだ。風に髪をなびかせながら。
向かい合った椅子にきつねのぬいぐるみを座らせて、メロウもここがきっと気に入ると思う、とぬいぐるみに話かけた。白い優雅な羽をひらひらさせて、蝶が飛んでいた。まるで、メロウのようだ。
メロウは白い服が一番似合う。無駄なものをそぎおとした素の美しさが際立っているんだ。
夕食後、グオンは、父親に話があると、言って、居間で話すことになった。
グオンの話を黙って聞いていた父のオルドは、美しい、母親似のグオンを可愛がっており、いつも甘やかしていた。
「メロウはぼくらの、社会見学同好会に入ってくれて、今ではぼくらの仲間なんですよ。入学して、まだ半年しか、たっていないけど、メロウは僕らの大切な人です。メロウに幸せになってほしい。お父さん、メロウは女性です」
「えっ?」「女性です」グオンが涙を流した。「十八年前、女の子が生まれて途方に暮れたメロウの父親が、男の子が生まれたと言ってしまった」
グオンがぽろぽろ涙を流すのをオルドが呆然と見ていた。
「生まれたばかりのメロウと、まだ幼児だったぼくらを守るために、真実を隠したんです」「そうか……、グオンおまえは」
「ぼくは、メロウが好きです。ギルディやアラオルもメロウが好きですよ。この十八年間、赤いドレス着ることが出来なかったメロウですよ。ぼくは、あの日のメロウを憶えている。とてもかわいかったんです。それなのに、風になびく髪を、レースやリボンでかざることもできなかったんです。いつも、髪を短くしていたんです、可哀そうに。お父さん、メロウの父親の事、ゆるしてあげてほしいんです。」
「グオン、グオン、おまえがそう言うんなら、私は良いんだ、メロウの事は、いつも気にかけていた。メロウを巻き込んでしまったあの宴の夜のことは、私たち三人とメロウの父親の四人だけの内輪だけの話だったのに、お前まで、苦しませてしまうなんて……」オルドが苦しそうに言った。
「ぼくは、メロウに出来れば辛い選択をさせたくない。メロウは三人の求婚王子の姫という事以外に、ルリア様にそっくりだという事が大きな問題になっているんです。ボナルド国から、ルリア様の生誕百五十年のお祝いに招待されているんです。ボナルド国の人々のルリア様にそっくりな、メロウを見たいという気持ちぼくにはわかります。メロウは行きますよ」わかるけど、納得は出来ない……グオンは複雑な気持ちでさらに泣きたくなった。
オルドは意外な話続きで困惑しながらも、泣いている息子の側に寄り添い、そっと背中をなでた。「おとうさん、物事って、どうして、こう大きくなっていくんでしょうか、どんどん複雑になって、手に負えなくなっていく……、メロウは帰ってきますよね」
父がそっとグオンの手を握った。「もちろん帰ってくるよ。帰ってきてお前を、選んでくれたらいいな」
「ギルディとアラオルは協力な競争相手ですよ。恋となると、何が決め手になるか、全く分からない、顔か、頭か、力か?」
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