第27話知り合ってはいけなかった

 空の記憶  海の記憶

 大地の記憶 時の記憶 

 いつか安らぎが訪れますように

 悲しみが慰められますように


 涙が流れた海に

 望みが消えた野山に

 名もなき人の思いが 風に遠く飛ばされた

 幸せな温かな日々が 確かにあったと

 愛し愛された 人々がいたと 

 失われた年月がささやいている


 この道で あの空を見上げて

 あなたは 歌っただろうか

 私の口笛が みんなの歌が 思いがとどきますように

 赤い花が あなたの眠りによりそってくれますように   


 海が見える高台に、その慰霊碑はあった。一昔前、流行り病で亡くなった人達の為に建てられたものだ。エミナが慰霊のために歌った。口笛部のウグイス組や、今年の歌姫のナルラも歌った。たくさんの人々が集まっていた。色とりどりの花が植えられている広場があった。赤い花が人々の手で、慰霊碑に供された。

 その日、慰霊のための集会があったのだ。メロウとミオリとラナンは、集会に参加して、エミナに、その帰り道相談をした。

「そういうことなら、喜んで、協力させてもらうわ。メロウの事、このままでいいとは思えなかったもの。お兄さんには、悪いと思うけど、あの時、間違えたのよ。今からでも、正すべきよ」とエミナは言った。

「おばさま、ご迷惑を掛けます、申し訳ないです」とメロウが頭を下げた。

「まあ、メロウ、何よ、水臭いわね。いいのよ、私は嬉しいのよ。シーナ家の女は強いのよ、ルリア様の昔からね。大丈夫、家を使って」

「ありがとうございます」とメロウ。

兄二人がメロウに寄り添っていた。



 ラナンにメロウの秘密が三人の求婚王子にばれてしまったことを告げたのは、慰霊の集会の三日前だった。ミオリの家で。 

ラナンは、天を仰いでうわーっと言ったが、メロウに、「そんな気がしてた、何か、計画してたのと違う気がしていた、ギルディもアラオルもグオンもいい奴だ、仲良くなるにつれて、何か違うと、思い始めていた。おまえたちは仲良くなり過ぎていた。仲間になってはいけなかったんだ。知りあって、嫌な奴って思うこともある。知り合うことは、危険だ。関係性が生まれてしまう。好きとか嫌いとかの感情が生まれる。良縁も悪縁も知り合うことでうまれる。俺も、三人の求婚王子が好きだ。メロウが彼らと仲良くなって、メロウを通じて仲良くなった。いっそ、嫌な奴らだったらよかったに、そうだったら、計画をやりとおすことができたはずだ。遠くから見るだけにしていたら。今更だけど。そうか、ばれちゃったか、で、俺たちはどうする?彼らの計画に協力することになるのか?うわー、これって、寝返ったてことにならない?」とラナンが早口で言った。

「寝返ったなんて、嫌な言葉だな」ミオリが顔をしかめた。

「確かに、僕らの今の立ち位置は、微妙なものだよ。でもね、彼らにわかってしまった今、こちら側にいる僕らは三人の求婚王子に協力することでしか、今まで彼らにしてきたことをつぐなうことができないんだ」

メロウがラナンの背中に抱きついて、「ラナン兄さんごめんなさい、私のせいで、苦しい立場に立つことになってしまって」ラナンは、背中が、涙で濡れるのを感じて、ため息をついた。「メロウ、俺はお前の味方だよ。お前が決めたのなら、協力する。もともと、この計画はお前を守るためのものだった、こうなったら、計画変更しかないよな」ラナンがメロウの腕を優しく掴み、「大丈夫だよ、俺は、お前の正義の味方さ」「ありがとう、ラナン兄さん、大好き」

ミオリが涙ぐんで、ラナンは、メロウに弱いからな子供の頃からと思った。


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