第23話

温かな布 柔らかな枕 軽やかな音楽 安らぐ香

貴方の好きな物に 囲まれておやすみなさい

涙は いつか 乾くから

優しさに包まれて 夢の国へ

幸せな幸せな夢をみてね

私のかわいい人 まあるいお月様のような心で

赤い花のように咲いてね 

そして、明日へ 戻っていきなさい


夢の中で、ルリアが歌ってくれた。優しい声で。メロウの頬の涙は、乾いていった。「メロウ、貴方は歌えるわ」ルリアがメロウに話しかけた。「貴方は、歌えるわ」

 

 次の日の朝、メロウは、何もなかったような顔をして、起きてきた。

「おはようございます。先輩たち、ずいぶんと早起きですね,ちゃんと寝ました?兄たちの前で、いつもどうりでいてくださいね。四人だけの秘密にすると決めたのなら、しっかりやりましょう」と、メロウが言った。

 三人の求婚王子たちは、顔を見合わせて、笑った。

「メロウは眠れた?」とグオンが言った。

「はい、覚悟を決めましたから」

 アラオルは、心配していたけど、なんとか、気持ちの折り合いをつけてくれたようだと、安堵した。

「俺は心配しなかったぞ、メロウは意外と、しぶといもんな」とギルディが言った。

メロウが、ふーっと息を吐いた、「よかった、いつもどうりで。先輩たちの態度かわっていたら、嫌だなって、思って」

「約束しただろ、約束は守るよ」とアラオルが言った。

「そうだよ、約束は、なるべく、守る」とグオンが笑った。

「心配するな、一緒にいることで、お互いを守れる、安心できる。その為に、仲間になったんだ」ギルディが焼き魚の皿を、メロウの目の前に置いた。「はちみつかけておいたぞ」


「ただいま、はい、ギルディ先輩の家の干しイカ、おみやげだよ」

「おお、うまそう、メロウ、少し焼けた?楽しかった?」

「うん、楽しかった。ラナン兄さん、心配で、ミオリ兄さんと待っていたの?」

 メロウは泣くまいと決めていたので、泣きはしなかったが、心の中は、複雑な思いで、ざわざわしていた。

 ミオリがお茶をいれてくれたので、メロウは、兄の側に近寄って、「ただいま」と言って、ミオリの肩に頭をもたれさせて、「兄さんたちの側にいるとほっとする。なんだか、疲れた」と言った。「楽しかったんだろう」

「うん、楽しかった」

「兄ちゃんたちの側のほうがいいだろ?」とラナン。

「心配した?」

「そりゃあな、ミオリ兄さんなんて、一日が五十時間に感じる」って言ってた。

メロウが笑って、「たった、一泊二日なのにね」涙がまつ毛の淵までこみあげてきそうなのを、なんとかこらえた。

メロウは、そっと目をつむり、ミオリのいれてくれたお茶を飲んだ。(温かい)胸に沁みた。(ごめんね)

 何も知らない兄たちの側で、ずきずき痛む胸の思いを隠した。裏切ったんじゃない、前向きに全てをよくするための路線変更だから、必ず、終わり良しにするからとメロウは思うしかなかった。(ミオリ兄さん、ラナン兄さんごめんなさい、必ず、良い未来にするからね)

「ミオリ兄さんイカ焼いて」気を取り直して兄に甘えてみた。

「いいよ。甘えん坊がいなくて、寂しかったよ」とミオリが笑った。



 夕食の食堂でメロウとミオリは、三人の求婚王子と会った。

「ギルディ、干しイカ美味しかったよ、ありがとう」とミオリが言った。

「美味しかったですか?良かった」ギルディは笑顔で言って、隣のメロウをちらっと見た。

「私も夕食前なのにたくさん食べちゃったので、夕食は少なめにします」

「メロウは意外に大食いだから、大丈夫でしょう」と、グオンが笑った。

「メロウ疲れていない、ちゃんと休めた?」とアラオル。

「昨日はずっと、釣りしていたんですよ」とアラオルがミオリに言った。

「メロウは、釣りが好きだからね。釣れた?」

「メロウは二匹つったんですよ」

そんなやりとりを見て、メロウは少しほっとした。大丈夫なんとかなりそうだと、思った。


 メロウが授業が終わって、図書館に向かって歩いていると、後から声がかかった。

「おい」ガントだった。

「おまえ、何、暗い顔して歩いてるんだよ。かわいい顔しか取り柄が無いんだから、せっかくの長所潰すようはことするな」

「ほめているんですか、けなしているんですか?」

「けなしてるんだよ、誰がほめたりするか」

 メロウが笑った。「なんですか、いつも、憎まれ口ばかり叩いているのに、らしくないですね、私の心配なんかして、お腹の調子でも悪いんですか?」

 ガントが、メロウがうっむきかげんで、暗い顔して歩いているのを見かけて、声をかけたのだ。

「お前なー、誰がおまえの心配なんかするか!」

「ガント先輩にもわかるくらい、暗い顔していたんですね、ありがとう

ございます」

「なんだよ、ありがとうって?」

「かわいい顔って言ってくれたお礼です」

「おい、悪口だぞ、かわいい顔しか取り柄が無いって言っているんだぞ」

「そのとうりですから」メロウは一礼すると、「さようなら」っと言って立ち去った。ガントはその背中を見ながら、(あいつも、意地っ張りだな)と思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る