第22話

「メロウ何処も行かないね、残ってくれるね」とアラオルが言った。

「はい、でも、アラオル先輩、この問題を僕らの手に取り戻すってどうするんですか?「うん、まだ具体的な案は無いんだけどね。君の家族の不安や心配をとりのぞけばいいんだよねメロウ心配しないで、四人で考えていこう、必ずいい考えがみつかるよ。いざという時の為に、準備しておけるようにね」

「俺たち、何でもするよ、メロウ、心配するな」

「ぼくも頑張る、ただの泣き虫じゃない」

メロウがにっこり笑った。「先輩たち、ちゃんと、約束守ってくださいね」

「絶対に守る」と三人の求婚王子たちが言った。

「絶対に良い未来にしていく、シーナ家や、求婚王子とその親たちも含め納得のいくような。そうじゃなければ、私は残れない。家族を裏切ってしまったと思うからです」「メロウわかるよ聞いてくれ、君の人生を生きるのは君だ。周りで、いろいろ、いうことはできるけど。君は、裏切るわけじゃない、違う道を選ぶだけだ。もう、子供じゃない。その時々に合わせて変えるべきところは変えていかなくては。君は、歌うことが好きだろう?、いつも、口笛部が演奏するのを、目を輝かせて見ていたね。             僕らはちゃんと気ずいていたよ。なぜ歌わないんだろうって思っていたよ。夢をあきらめてはいけない」

「気ずいていたんですか?私には叶わない夢です」「今まではね。でも未来は違うよ。僕らは 求婚王子である前に、仲間だ、君の夢をかなえるために、協力させてもらうよ」グオンが優しく言った。

 メロウが「でも、私は……」「あきらめるのか?」とギルディが言った。

『僕らは、君が歌うのを見たいな」とアラオル。

 「私が歌う?」「歌姫として、音楽堂でね。ぼくは大きな花束を贈らせてもらうよ」「俺は部屋いっぱいの花を贈るよ」メロウがくすっと笑った。

 「それでも、君は、家族に納得してほしいんだね。そうでなければ、君が幸せになれないんだね、僕たちは、全力で、がんばるよ。だから、あまり、重く考えすぎないでほしい」メロウは、うなずいて、「私は、もっと、強くならなくてはいけませんね」と言った。

「君は強いよ。今まで、頑張って来たんだろ?強くないと出来ないよ、君は、強いよ」とアラオルが言った。

メロウの目に涙があふれた。「そんなこと言われたら、三人の求婚王子にそんなこと言われたたら……私はひどいことをしました」

メロウの涙を見て、三人の求婚王子たちは、心が痛かった。

「君はなにもしてないよ、来てくれたじゃないか」とグオンが言った。

「俺たちが出会って一緒に過ごしてきて、きっと、なにかが変わったんだ。絆ができたんだよ。もっと、一緒に色々な所にいかないか?」

「社会見学同好会だしね、色々な所に行こうね」グオンが優しくメロウの肩にそっと手を置いた。

メロウが泣きながらうなずいた、「四人だけの秘密にするんですね」

 「時がくるまでね」とアラオル。

 四人は夏の夜の闇のなかで、約束した。

「さあ、部屋に戻ろう、メロウは海に落ちたんだから、ゆっくり、休まなければ。

もう、出て行かないね。僕らが寝ずの番をしなくていいね」

「はい」メロウは、涙をふくと、にっこり笑った。

 四人は家の中に入り、メロウの部屋の前でお休みを言って、メロウが扉を閉めるのを見てから、求婚王子たちは、その場を離れた。

これからの事を話し合うため、三人の求婚王子たちは、ギルディの部屋に場所を移した。

「うわーっ、俺はきっとだめだー」部屋に入るなり、ギルディが頭を抱えた。

「きっとメロウに選ばれることは無い。変な所ばかり見せちゃった。せいぜい、面白い先輩としか、思っちゃくれないよ」

「なんで?君はメロウと一番仲良しだろう、いつも、にぎやかに、楽しそうにしてるじゃないか?」とアラオルが言った。

「そうだよ、ぼくなんて、ただの泣き虫の夢見がちの男だと思われているよ。でも、今日君たちまで泣くなんて、驚いたよ」

「泣かなきゃいけない場面で泣けないなんてだめだろう」と、アラオルが水筒から、コップに水を注ぎ、グオンとギルディに渡し、自分も飲んだ。

「メロウは、大学に三人の求婚王子を終わらせるために来たと言ったね。十八年前の男の子が成長した姿をみせるために、それが、三人の求婚王子を終わらせることになる」とアラオルが言った。

「きっと、そうとうな、覚悟をしてきたんだろうな、かわいそうに」とギルディが言った。

「うん、ぼくは子供の頃見たメロウの姿を覚えているからね、かわいかったんだ、とても」とグオンが、長い髪をかき上げながら言った。

「考えていたんだけど、、メロウが女性だと分かった時点で、僕らは三人の求婚王子降りて、メロウを開放してあげるべきだったんじゃないかな?」とアラオルが言った。ギルディとグオンがアラオルの顔をじっと見た。

「今となっては無理だ。君だって、三人の求婚王子降りる気はないだろう?」

「君が、三人の求婚王子降りるなら、競争相手が減って、ぼくにとっては幸運だけど」とグオンが言った。

「意地悪なんだな、僕は求婚王子降りないよ」

「それでこそ、三人の求婚王子だろ。なに、気持ちをぐらつかせているのさ。ぼくは、メロウが好きだ。あきらめない。アラオル、君はぼくらの頭脳なんだからな。選ばれなくても、メロウを応援する。それが、仲間だろう?」

「グオン、良い事言うな、たまには。そうだよ、俺たちは仲間だ、アラオル、守り方って色々あるだろ、俺たちは約束で縛ったりしない。求婚だって、姫がいるなら求婚したいって俺たちの気持ちの問題なんだよ。俺も、お前に言いたい。あまり、重く考えるな」

「わかったよ、君たちっていい奴だな」とアラオルが、ぎゅっと拳を握りしめた。

「ぬけがけはなしにしようぜ」とギルディが言った。

「君が一番しそうだけど」とグオンが笑った。


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