第13話
柔らかな感情をその瞳ににのせて
君は歌う 僕のために 大切な人
振り向いた笑顔は 今 僕のもの
この週末を こうして二人ですごせる
テーブルの上には お気に入りの飲み物
おまたせ 僕は自慢の一皿を運びながら笑う
第二音楽室で、ラナンが歌うと聞いて、メロウは放課後、三人の求婚王子たちと、音楽室に寄った。後輩たちにせがまれて、ラナンは、時々、歌う。口笛部によく顔を出すので。
「兄は、恋歌が得意なんですよ。普段の兄からは遠い感じなんですけど」
「上手いね、さすが前のウグイス組」アラオルが「口笛楽団に入るかな?」とささやくような声で言った。
ラナンがメロウの姿を見つけて大きく手をふった。
「子供の頃、サトウキビの葉を素手で触ってさ、右手の親指にサトウキビの表面のとげとげが刺さってさあ、痛くって泣いたね。だって、指にびっしりとげが刺さっていたんだぜ。使用人のジルーンに抜いてもらったんだ」ギルディがサトウキビジュースを飲みながら言った。
「なんでサトウキビなんか触ったんだ?指が切れそうで触らないだろう、ふつうは」とアラオルが不思議そうに言った。
「サトウキビをかじりたかったんじゃないの?食いしん坊だから」とグオンが笑いながら言った。
「違うよ、葉っぱが欲しかったんだ」ギルディは植物の葉が好きだ。「子供の頃、くわずいもの茎を折って葉を手にに入れたのはたのはいいけど、茎から流れ出た汁で手がかぶれたことがあったし、シロツメクサクサの葉の四つ葉を探して蜂に刺されたりしていたからな」
「ギルディ先輩って、後先考えずに行動するタイプですもんね、自分の欲求にましぐらって感じですか?」メロウがサトウキビジュースの二杯目を入れようとしたギルディを手で阻止して言った。
「子供の頃って、なんでも集めるだろ?セミの抜け殻集めたりして」アラオルがメロウとギルディのやり取りを笑いながら見ていた。
「集めたね、セミも取ったし、昆虫採集もしたし、でも、葉っぱってどうなの?花ならわかるけど」とグオンが言った。
「花はきれいだよ、でも、葉っぱは形の変わったのや、大きさも様々で、楽しいんだバナナの葉や、クワズイモの葉とか、特に好きだ。クロトンの葉なんか、庭中に植えてあるよ」
「この前、クロトンの鉢植えを窓辺に置いてありましたよね」
「あれは、家から持ってきたものなんだ、園芸部にあげようと思ってね」
アラオルがギルディに笑いながら、「バナナを会室につるしているのはまあいいよ、でもね、服に匂いがしみつくのは、ちょっと、嫌だな、バナナの匂いの香水つけてるのって言われた」と言った。
「バナナの匂いの香水なら、欲しい」とギルディが笑った。
「君はそうだっろうね、ただでさえ、隣は、園芸部のバナナの木。、君にとっては天国だろうけど」と、サトウキビジュースにはちみつを追加しながら、グオンが嫌味を言った。メロウは、笑いながら、天井につるしてあるバナナを見て、(確かにこの部屋は狭いから匂いが籠るよね)と思いながら、三人のやりとりを見ていた。
その時、勢いよく、会室のドアが開いた。
「たいへんだ、オーグンとバロスがまた大喧嘩している」と二年生のアルダが部屋へ入ってきた。
ギルディが立ち上がり、「また?」と言った。
二人は従弟同士なのだが、仲が良すぎて喧嘩ばかりしている。同い年で遠慮がない。
「どこ?」
「中庭」とアルダ。
ギルディが中庭へ走った。中庭に小さな人だかりができていた。その中心で、オーグンとバロスが掴みあっていた。怒鳴る声が聞こえた。ギルディが人をかき分け二人のもとへ駆けつけた。「なにがあった?」
二人を引き離した。
「こいつが、俺の買ったばかりの服を着たんだ。まだ、俺も一度も着てないのに」とオーグンが言った。
「デートだったんだ、服くらい貸してくれてもいいだろう。僕の服だって、なんども貸してるのに」とバロスがオーグンを睨んだ。
「何がデートだ。他校との交流会の打ち合わせで会っただけだろう。おまえ、準備委員だから」
「ははーん、僕だけ、女の子と会ったのが、気に入らないんだな?」
ギルディが二人の間に入って、「はい、これで終わりにしろ。お腹へってるんじゃないか?人は腹減ると、怒りっぽくなるからな」と、肩にかけてあった鞄から干し芋を取り出した。「とりあえずこれでも食べて、仲直りしろよ、うまいぞ」と、二人の口に、干し芋をくわえさせた。
集まっていた野次馬たちにも、干し芋を配って「はい、喧嘩は終わり、解散!」と言った。
メロウとグオンが走って、中庭に行ってみると、野次馬は二、三人になっていて、皆 で干し芋を食べていた。
「もう、喧嘩おわったの?」会室に鍵をかけてからやってきたアラオルは、皆と交じって干し芋を食べているメロウとグオンを、見た。
「新しい服は、持ち主が最初に着たいものなんだぞ、いくら、仲が良いからって、勝手に着ちゃだめだよ。バロス、女の子とデートしたって?かわいい子?」ギルディも、干し芋を食べながら言った。
「かわいいです」
「オーグンは彼女いないんだろ?俺と一緒だな。皆見る目ないよな、二人ともこんなに良い男なのにな」
アラオルが笑った。(ほんと、中身は良い男だ)
「おい、おまえ、目障りだ、俺の視界に入ってくんな!」
メロウが売店に向かって歩いていると、いきなり後ろから声がかかった。ガントだった。
「ガント先輩、何ですか。普通に学園生活をしていたら、お互い歩きまわるわけです
から、当然、視界に入ってくることってありますよね。嫌なら、目をつぶってください」
「なんで、俺がそんなことしなきゃならない?」
「だって、見たくないのは、ガント先輩であって、私じゃありません」
「おまえは平気か、俺の顔見ていやじゃないのか」ガントは塀にもたれかかり、メロウを睨んだ。
「全然、ガント先輩は、大勢いる先輩の一人です。ただ、それだけです」
少し、むっとした顔で,ガントが言った、「お前、顔はかわいいのに、性格はかわいくないな」
「先輩は、顔と性格あっていますよ」メロウが素っ気なく言った。
「どういゆう意味だ?」
「言葉どうりです」
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