第6話
三時三十分に三角ボール部の試合が始まるので、部員たちが三角ボールのコートにあつまって来た。口笛部の演奏を見ていたのだ。口笛部の部員達やその見学者も試合をみるためにそのまま残った。メロウと三人の求婚王子たちもそのまま残って試合を見る。
副部長のナライが手を叩いて「集合」と叫んだ。「昨日の組み分けのとおり三チームの選手はそれぞれのチームの鉢巻きをして、右手に腕輪をつけること、自分のチームのゴールまちがえるなよ。新入生が見ているから良いプレイを見せられるように頑張れよ。部長、掛け声お願いします」
ナライより三センチ低いだけなのに、十キロも体重の軽い部長のリオンが前に出て「三角の頂点とるぞ」と叫んだ。それに合わせて、全員で「おー」と叫んだ。
三角ボールとは、三角形のコートで三チームが戦うボールゲームで、二人の守り手と、六人の攻め手の八人でおこなわれる。
ゴールは固定された太目の棒の先に袋状の網のかごが取り付けられている。
赤、青、白チームは自分のゴールのあるコート側の白線に自分のチームカラーのボールを持って並び、ピーっという合図で、守り手は自分のゴールの根元の後ろにボールを置きゴールを守り、攻め手の六人は自分のチームカラーのボールを持ってコートの中に駆け込み、自分のゴール意外のゴールをめがけて走り、守り手の防御をかわし、ゴールにボールを投げ入れる。自分のボールを投げると、まだ、投げていない他のチームのボールを奪いゴールに投げいれる。ゴールに入らずコート内におちたボールもひろって使える。
投げいれられたボールの数が一番多いチームが負けだ。守り手の防御で同じチームの者にボールを渡せない時は、攻めているもう一つのチームの者にボールを渡し共同して攻撃することができるが、ボールを渡された者はこのボールをいれなくてもこのチームが最下位だと判断した場合、とどめの一点をいれてもいいし自分が渡せそうな同じチームの者に投げ、今、ボールを渡してきたチームのゴールを攻めることもできる。コートにボールがなくなってきたら、守り手がゴール根元の後ろに置いたボールを投げ入れ、試合をつづけボールがコートになくなった時点で試合終了。前半、後半で戦う。
ぴーぴーと試合開始の合図の口笛がなった。三角の三つの辺にならんでいた選手たちがコート内に駆け込んできた。
「三角ボールはうちの国で一番盛んな球技だからね、子供から大人まで、やってる人が多いよ。この学園でも口笛部と一、二を争う人気なんだ」とアラオルが言った。
白チームのエナが赤チームのゴールにボールを投げ入れたが赤チームの守り手ヤホにボールをカットされた。コート内にボールが落ちた。青チームのリオンがキャッチして素早く投げ入れた。エナがぐっと拳を振り上げた。赤チームのゴールにはもうすでに三個はいっていたので今のところ最下位だ。白チームには二個、青チームには一個ボールがはいっていた。
「副部長のナライは今日は青チームの守り手だよ。彼は体が大きくて力があるから、バシッてボールを弾くんだよ。かっこいいんだ」とギルディが言った。
「あのごっつい人ですね。強そう」
「どこが一位になるかな」とグオンがわくわくを抑えられないというかんじなので、メロウが笑って「先輩たちも勝負好きですよね、うちの兄たちと同じ」と言った。
「部長のリオンは攻め手が得意で、走るのも早いしすばしっこいし、ボールを投げいれるのが最高にかっこいいよ。今日は青チームだね他のチームは不利だね」と言った。
青のゴール前に青いボールを手にした赤チームのタリが走って来た、青チームの守り手のナライが険しい顔をした。もう一人の守り手のウコが一歩前に出た。自分のチームのゴールに自分のチームーの色のボールを入れられるのは不名誉とされている。味方から奪われたボールだからだ。しばらくにらみ合いが続いた。
タリが青いボールを投げた。すごい形相でナライがジャンプしておもいきりボールをうち叩いた。
おおー!っと見学者たちが声をあげた。
「すごい、さすがナライ」拍手が起きた。
試合は青チームが一位を取った。メロウは三人の求婚王子たちと他の学生達にまじって楽しくすごした。皆の熱気でむせかえるようだった。
「あれが、社会見学同好会の会室だよ」
ギルディが指さした先に、派手な木造の小屋があった。
全ての壁の色が違った。赤、青、黄色、緑だ。ドアの色と屋根の色も赤だ。
「あれですか?」
「俺が作ったんだ。ペンキも塗った。派手だろう。ギルディが笑った。
「はい、ギルディ先輩がどんな人かわかりかけてきました」メロウがまじまじと見つめてくすっと笑った。(いや、おもしろいけど……)
「中は普通だよ、僕も最初はあきれてなにも言えなかった」アラオルが笑って言った。
「ぼくは色で殴られたみたいだった」とグオンが苦笑いした。
園芸部の畑のすぐ側にあるその小屋は、ギルディのバナナの木の側ににあった。「手をのばせばバナナの実が取れる。園芸部に畑を持っているんだ。パパイヤやいも、パイナップルも植えてある。おいしいものが大好きだから。ほかに、クロトンや赤い花も植えてあるよ」ギルディが柵でぐるりと囲まれている、園芸部の畑をのぞきこみ言った。「クロトンの葉が大好きなんだ。赤とか黄色とかの色が絶妙に緑と混じり、くるくるってなってる葉のかわいいこと」
アラオルが鍵を開け、メロウを部屋の中に入れた。
ギルディも入ってきて、「君の椅子はその赤い椅子、俺のは緑で、青はアラオル、黄色がグオン」
部屋の中央には茶色のテーブルが置いてあり、その周りに四脚の椅子が置いてある。
一方の壁に棚があり、四つに区切られていた。色分けされているので、赤い所がメロウの場所だろう。他の場所は荷物が置いてある。
「この会室を作った時に四人分の棚を作ったんだ。君の分も」とアラオルが笑顔で言った。「やっとこの棚を使う時が来た」グオンがメロウを棚の前に連れていった。
「シーナ先生に君はりんごが好きだと聞いたから、赤にしたんだ」とギルディが笑って言った。
メロウはもし兄がメロウはみかんが好きだと言ったら、壁や椅子がみかんの色になっていたかもと思うとおかしくて、笑いをこらえた。
「ぼくなんて、好きなものはなにかって聞かれたから、卵の黄身だって答えたら、椅子がが黄色に……椅子は何色がいいって聞いてくれたらいいのに」とグオンがぶつぶつ文句を言った。
「僕は何が好きかって聞かれたから、空だって答えたんだ」
「俺はね、バナナやいもやパパイヤや好きなものがいっぱいあるんだ。葉っぱの緑さ」とギルディが言った。「さあ、メロウが来た。楽しくなるぞ」
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