幼い頃の彼は、眩しいほど自由で、真っ直ぐで──
そして、何の疑いもなく私に言った。
「大人になったら、僕と結婚してくれる?」
けれど、彼は知らない。
私が"王女"であることも、
運命に従えば、遠いどこかの貴族に嫁ぐ未来が待っていることも。
──なら、変えてしまえばいい。
10年後、イクトは夢に向かい冒険者となる。
私は城を抜け出し、彼を見守り続ける。
だって彼が英雄になれば、誰も文句は言えなくなる。
「彼が王女に相応しくない? なら、世界一の英雄に育ててみせるわ」
だけど、彼に近づく女たちがいる。
ギルドの受付嬢ティーダ。
そして、これから現れるであろう"他の誰か"。
邪魔者は排除する。
私が彼を一番理解しているし、一番愛しているんだから。
この恋を"正攻法"で勝ち取るために、私はどこまでもやってみせる。
姫と冒険者、決して結ばれぬはずの恋。
ならば、彼が英雄になればいい──私の隣に立てるように。
運命を塗り替える執念の物語、ここに開幕。