第11話 違和感
リビング・タートルに呑み込まれた俺達は、何事もなく無事に生きていた。
どうやら
体内に入るとレンが見たと言う本の通りで、目の前には人が生活できる環境が整っていた。
書いてあった内容と違ったところを上げるとすれば、三人分のアメニティグッズに食器、ベッド諸々が人数分ちゃんとあったところ。
どうやら体内にいる人数分、生活必需品や家具が用意される様だ。
「滅茶苦茶便利なモンスターだな、コイツ」
「そうね」
「うん。凄く、便利」
俺達三人はテーブルを囲むソファに腰を掛けながら、リビング・タートルを絶賛した。
「上手くダンジョンから帰れたら、私あの本を持ってちゃんと
「うん。そうだね」
「調べた時、他ではリビング・タートルの情報は出てこなかったから。上層とかだと生息してなさそうなのが残念。意図的に探索に利用するのは、難しそう。けど今後、運良く発見したなら。利用必須になるのは間違いなしよ」
「私も、そう思う」
レンとカノンがテンションを上げつつ、楽しげに会話をしている。
楽しく会話している最中だが、俺はどうしても済ませておきたい用事ができたので二人に割って入る。
「盛り上がっているところ、すまない」
「ん?何?」
「あ、はい。大丈夫です」
「風呂に、入って来ても良いだろうか?」
俺はいつぶりか解らない風呂の存在を確認した時から、入りたいという衝動が治まらなかった。
二人から無事に了承を得られたので、直ぐ様風呂に直行させてもらう。
「あー。最高だー」
風呂から上がった俺は、思いっきりソファでくつろいでいた。
こんなに気を緩めているのは、ダンジョンに潜る前以来だ。
少しだけ、涙がこみ上げてきた。
俺が風呂から出ると二人も順に風呂を済ませ、今ではソファで同じ様にくつろいでいる。
一頻り話終えたのか、冷蔵庫の中から飲み物を出してだいぶのんびりしているな。
「わ、忘れない内に」
「どうした?」
カノンから俺に話かけてくるとは思わなかった。
「ドロップアイテム、返しますね」
「あ、ああ。そうか。ありがとう。でも、そのまま貰っていっていいぞ」
「いえ、そういう訳には」
探索者ルールで。倒したモンスターから出たドロップアイテムは、倒した人の物というものがある。
カノンは、律儀にそれを守ろうとしているのだろう。良い娘だ。
でも、本当に貰っていってくれて構わない。
「良いよ。そのまま貰っていってくれ。
「え、っと。でも」
気の弱い性格みたいだから、どうしても気が引けてしまうのだろうか。
では、遠慮のない性格だろうレンも巻き込むとしよう。
「レンと半分に分けてくれたら、それで良いさ。レンはいらないか?」
話を振られたレンは、少しだけ上体を起こして清々しく言い放った。
「くれるのなら貰うわ。情報料って事ね、了解ー」
「レンが、そう言うなら。ありがとうございます」
レンがカノンにウィンクをすると、カノンも一応は納得してくれた様だ。一礼をしてきた。
俺は軽く手をひらひらとしながら、気にしないでくれと合図を送る。
それよりも、二人に聞きたい事がある。
「なあ。世界は[混世大災]が起きて以降、どうなっているんだ?聞いた感じだと、地上はだいぶ大変だと思うんだが」
俺の質問に、二人は気不味そうな顔でお互いを見合った。
「世界規模の大災害なら。十年、二十年……じゃあ、復興するのが難しいってのは解る。けど、落ち着いてはいるのか?」
ひと呼吸おいて、レンが俺の質問に答え始める。
「あのね、シンさん。その。私達も、何があったとかは詳しく解らないの」
「……ごめんなさい」
二人が知らないって、そんな事があるのか?
世界規模の大災害だったんだろう。
「えっと。その、ね」
相変わらず気不味そうな顔で、レンが話を続ける。
「[混世大災]が起きたのって、百年以上前の事なんだよね」
「はいっ?」
急に何を言い出しているんだ。
百年以上前?
「私達、まだ生まれてなかったから。学院で教わった話程度にしか、知らないのよ」
「その、ごめんなさい」
俺はその言葉を聞いて固まる。
じゃあ何か。
俺はダンジョンで、百年以上も彷徨っていたって事になるのか。
「あり得ないだろ。[混世大災]ってのは、俺がダンジョンに入った後くらいの話なんだろ?」
「そう……なるかな。シンさんの口ぶりだと」
レンの言葉に、俺は再度固まる。
嘘は、ついていないと思う。先ず嘘をつく理由がない。
でもそれは、明らかにおかしいだろう。
人間の寿命なんて良くて百年程度。更に言うなら、老いだってする。
けれど俺は。自分が老いたなんて微塵も感じていないし、ダンジョンに入った頃のまま……だと思う。
ダンジョンには、ウラシマ効果的なものでもあったのか?
俺は考える。
確かに。逆に考えてみれば、変なところもある。
俺は何十年と彷徨っている感覚があるのに、老いを感じていない。
身体は迷子になった頃のまま、一切衰えていない気がする。
何か、変だ。
顎に手をやり固まっていた俺に、レンが声をかけてくる。
異変の答えを、レンとカノンは持ち合わせていた。
「シンさんは、“
The World -混ざりました、異世界- 之 @yuki_desu
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