~孤独と両腕(かいな)の幻見(ゆめみ)の跡(あと)にて~(『夢時代』より)

天川裕司

~孤独と両腕(かいな)の幻見(ゆめみ)の跡(あと)にて~(『夢時代』より)

~孤独と両腕(かいな)の幻見(ゆめみ)の跡(あと)にて~

 恰好(かたち)を忘れた傀儡(どうぐ)の矢先が魅惑に彩(と)られた雲母を見せ遣り、培い忘れた孤独の彩華(さいか)は気性(きしょう)に紛れて生育(そだ)って行った。既知の水面(みなも)は直ぐに報され脆弱(よわ)い目下(ふもと)は退去した儘、未有(みゆう)の主観(あるじ)に体を突かせぬ最果(はて)を識(し)らない孤独が阿り、少女(おんな)の気色は一男(おとこ)を彩る「幻想(ゆめ)」の孤独の界(かぎり)を知った…。

      *

 …まるで教祖の態(てい)と成って、俺は夜の校舎を徘徊しながら、そこに居る人から逃げて居た。結構、沢山人が居た。そうかと思えば、その校舎は職場(洗礼の園)に変り、「沢山の人」は職員に成った。天然廻りの小男(こおとこ)が居り、何時(いつ)ものように変らず他の職員と戯れ、連携して居るのを見てると、まるで犯罪を為して逃げて居る俺には滅茶滅茶羨ましさが感じられ、俺もあの群れの中へ入りたい、と言う気持ちが在った。洗礼の園は、凄い活気が在った。普段とは違った活気が在った。団結力が在るように見えた。俺がまるで犯罪を為して皆(何か)から逃げて居る所為だ、とも思えて居た。

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 二重に苦しむ幻影(かげ)を追いつつ幻(ゆめ)の枕へその身を採れば、一女(おんな)の体裁(かたち)は暴露を漏らさぬ不快の網羅をゆっくり仕上げて、白亜(しろ)い孤独に「妙(みょう)」を想わす余裕(ゆとり)の傘下を構成して居た。男女(ひと)の身欲(よく)から罪が刻まれ脆弱(よわ)い孤独が概(おお)く立つのは、無理を透せぬ軟い主観(あるじ)が古豪を相(あい)さぬ謂れの故にて、分厚(あつ)い空壁(かべ)から律儀が織り成す「不倖を問わせる無想」の憂慮は、未(いま)に満たさぬ悪しき展開(ながれ)の孤奏(こそう)の賛美に体好(ていよ)く就いた…。孤独の一重(ひとえ)に並んで立っても旧来独語(むかしがたり)が得意に無いのは、幻想(ゆめ)の主宴(うたげ)が逆生(もど)ったからだ。一人(ひと)の規律(おきて)を不精(ぶしょう)に観るのは矢庭に遅れる精神(こころ)の為にて、無意(むい)を宿して旧(むかし)を救える一人独語(ひとりがたり)の上気に在った。生娘(むすめ)の既憶(きおく)と気性を荒げて不為(ふい)の極意を過して生くのは、幻(ゆめ)の巷で直ぐさま死に遣る無援の気色の産物から観て、素通りして生く密かな悪魔の成果(なれのはて)への快無(オルガ)に在った…。人間(ひと)の孤独が生重(いくえ)を知れずに「不毛」と跳び交う律儀を成すのは、精神(こころ)の千夜(とばり)が成すのは、精神(こころ)の千夜(とばり)が未想(おもい)に載らない不純の生気の表れだった。未活(みかつ)に過ぎ生く旧(ふる)びた精気は〝正気〟を失くして幻語(かたり)を観守(みまも)り、行方知れずの〝成果(なれのはて)〟から一向経っても還らなかった…。未(いま)を信じて無知を視(め)にした暗(やみ)に訝る「奈落の果(そこ)」には、旧来独白(むかしがたり)が停滞され得ぬ夜見(よみ)の過程(さなか)の誠実(まこと)が発(た)った…。無論に輝く無想の景色は密(みつ)に宿れる旧(むかし)を観た儘、一人(ひと)の正義を夜半(よわ)に数える〝旧来独語(むかしがたり)〟の総理を従え、一人(ひと)の主観(あるじ)を御供へ廻せる幻想(ゆめ)の余韻(のこり)の一通(とおり)に発(た)った。孤独は孤独、孤奏(こそう)は独走(はし)れる、幻想(ゆめ)のmorgue(モルグ)を体裁(かたち)に観るのは女性(おんな)の柄(え)に立つ談義の恰好(かたち)で、宙(そら)に訝る不葬(ふそう)の体裁(かたち)で、幻見ヶ丘(ゆめみがおか)の気色を識(し)った。一男(おとこ)の孤独が内実(なかみ)を知らずに不欲(ふよく)に満ち生く独理(ドグマ)観るのは、無機に居座る無口の画(え)に立ち「不老」を装う女性(おんな)の精華(はな)にて、安い身重に塒を紐解く無想仕立ての児(こども)を連れ添い…、一幻(ゆめ)の主観(あるじ)の一通(とおり)を越え得る身欲(よく)に絡まる無難を飼った…。

 一幻(ゆめ)の孤独に偽装を深める人間(ひと)の論議の不毛に尋(き)いては、利(い)きる値の根冷(ねざ)ます網羅が地中を掘り生き未想(みそう)を従え、淡い談義の体温(ぬくみ)の外には、一幻(ゆめ)に間近に未答(みとう)を相(あい)せる不義の論破が滑稽でも在る…。幻想(ゆめ)の自主(あるじ)を奇怪に失くせる浮遊に活き尽(き)る自活(かて)を見出し、幻視(ゆめ)の許容(うち)にて端正(きれい)に蔓延る「信仰(まよい)」に抗う純心(こころ)の日々には、幻(ゆめ)の一男(おとこ)が気性を静める〝向かいの論議〟が聡明とも成り、分厚(あつ)い連開(ドラマ)が地中を吸い生く「奈落尽(づく)し…」の孤独が発(た)った…。―――不答(ふとう)の様子は一女(おんな)に表れ未信(みしん)の進歩に具体(からだ)が沿うのは、人山(やま)の身元を大(だい)に生育(そだ)てる未有(みゆう)の主(あるじ)が孤独を練り観て、柔い明日(あす)から狂(きょう)の現行(いま)迄、幻想(ゆめ)の私欲(よく)から郷里を失くせる浮浪の自覚(かくご)の表れでもある…。純白(しろ)い気色が地上へ寄り添い半端を見兼ねた旧(むかし)の果実は、一人(ひと)の孤独を文言(ことば)に好く観る一人(ひと)の正義と比肩した儘、幻(ゆめ)の八頭(おろち)の雑踏(あくた)を捜せる空気(もぬけ)から得た妄想から成る。不安ばかりを律儀に象り「女性(おんな)の自主(あるじ)」を興味に引くのは、幻想(ゆめ)と精神(こころ)の競合から観た〝世渡り上手〟の悲観を打った。文言(ことば)の従順(すなお)が旧(むかし)を幻見(ゆめみ)て一通(とおり)を忘れた孤高に在るのは、…幻(ゆめ)の日々から旧(むかし)を好く観た「文句界(ことばかぎり)」の心音(しんおん)だった…。一重(ひとえ)の孤独に生気が佇み、脆弱(よわ)い「案山子」を女性(おんな)が象り、幻見ヶ丘(ゆめみがおか)の景色の許容(うち)には私牢(しろう)にたわれる悪魔が発(た)った。無機と演(えん)とは、男性(おとこ)の私欲(よく)から精製され得る…。

      *

 …俺は別に殺人を犯した訳でも無さそうで、特に「これをした」ってはっきり言われる犯罪歴は無い。強いて言えば、周りの皆を間違った宗教へ扇動した罰が在るくらいだった。その「扇動」も、皆から逃げる最中(さなか)に起きたもので、逃げて居なければその「扇動」は起きなかったのだ。悪いのは、理由も無しに俺を追い駆けた周りの奴等だと思われる。

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 旧(むかし)の流行(ながれ)に女性(おんな)が立ち往く不応の競技に孤独が護られ、うとうとして行く未知の界(かぎり)は巻き戻しに在る未来(さき)へと入(い)った。疲労に凭れる微かな汗(しずく)は無頼の果実を微塵に断り、温厚(あつ)い間際に宙(そら)を射止めた未来(みらい)の孤独を寸切(すんぎ)りにして、淡い未活(みかつ)を孤独に観守(みまも)る一幻(ゆめ)の天気を予報に描(か)いた。身活(みかつ)に合(あわ)さる無尽(むじん)の景色は密(みつ)に統(たば)ねる未応の感覚(いしき)で古都に身構(かま)えた億尾の上旨(じょうし)は無碍に割き往く悪夢を待った…。虚空の間延びに感覚(いしき)が戻され旧い夜原(よはら)に加減を識(し)るのは、浮浪に静まる身欲(よく)の両眼(まなこ)の旧巣(ふるす)に凭れる諸刃(やいば)であった。女性(おんな)の仕種を棒に振るうち過去の彩華が一身(からだ)を呑み込み、厚い思乱(あらし)に未来(さき)を覗ける扶養に満ち得た感覚(いしき)を保(も)った。不意の空間(すきま)に延命(いのち)が見限る「不乱の成就」は安(やす)む間も無く、不義を奏でて未知を連れ込む一人(ひと)の感覚(いしき)の従順(すなお)を識(し)りつつ、旧来独語(むかしがたり)の人社(やしろ)の周りは「不能に満ち往く汽笛」を待った…―――。海の夜風を昨日に吹かせて幻想(ゆめ)の快無(オルガ)は現行(いま)へ解け込み、温厚(あつ)い両眼(まなこ)を身塵(みじん)に画せる不和の亘(わた)りを余儀無く見据えて…、女性(おんな)の躰に覗ける気色は未来(さき)へ擦(す)り寄る孤独を知った。一男(おとこ)の周囲(まわり)で孤独が立ち込め幻(ゆめ)の思乱(あらし)に世界が咲くのは、巷に流行(なが)れる旧い汽笛の「不倖」へ寄り添う〝相乗効果〟で、幻想(ゆめ)の沖から不倫を目指せる可笑しい孤独をこそこそ保(も)った…。旧い四季(きせつ)を逆に得ながら人の流行(ながれ)は「夜風」に振り向き、孤踏(ことう)を詠むうちぴたりと止んだ―――。未来(さき)の女性(おんな)を一男(おとこ)に見て採る微かな共鳴(なげき)を意思に捉えては…、未活に蠢く最期の気色を一女(おんな)の手下(てくだ)に巻き奪(と)らせて居た…。暗(やみ)に透せる紅(あか)い湯浴みは、夕日の許容(なか)より〝帰郷〟に打ち出(い)で、安い独白(かたり)に一女(おんな)を連れ添う男性(おとこ)の元気に活気を操(と)った…。白亜(しろ)い景色に無難が拡がり幻(ゆめ)に概(おお)きく思案が往くのは、一女(おんな)の勝手が活き活きして生く不浪(ふろう)の長寿に惜しくも在った。夢限(むげん)に紐解く日和の哀れは未来(さき)へ覗ける器量の豊穣(ゆたか)で、蒼い価値から精神(こころ)を連れ添う無知の信義(しんぎ)を〝家畜〟に採った。油断して生く未想(みそう)の華には幻想(ゆめ)の精華がそのまま咲き出で(い)、分厚(あつ)い展開(ながれ)を純心(こころ)に灯せる孤高の安堵を塒に観て居る―――。痩せた記憶の旧びた相図(あいず)が幻(ゆめ)の真正面(まとも)に文言(ことば)を沈ませ、往(い)き始めて生く一女(おんな)の欠片(かけら)を徒労に逆上(のぼ)せて収集して活き、過去の栄華に縋り付くのは無想に棚引く人間(ひと)の哀れと、旧い孤独に野平(のっぺ)り立ち往く精神(こころ)の浄化は敢え無く問うた―――。暗(やみ)の許容(うち)から身塵(みくず)が流れて幻覚(ゆめ)の四肢(てあし)を真上(まうえ)に臨むと、分厚(あつ)い空壁(かべ)から夜霧を描(えが)ける不装(ふそう)の歩影(ほかげ)が漸く発(た)った…。「発(た)った」ついでに、女性(おんな)の四肢(てあし)は男性(おとこ)を連れ添い体裁(かたち)ばかりの独理(ドグマ)を従え、安い逆生(もどり)に欠伸を飼うのは不毛に目立てる一人(ひと)の躰で幻想(ゆめ)の発声(こえ)から安きを得るのは歩陰(かげ)に安(やす)ます活気と成った。素人(ひと)の驕りが奇妙に揺られて微動(うごき)の信仰(めいろ)を既憶(きおく)に識(し)るのは、一女(おんな)の背中へ仰け反る〝遊離〟の世俗を生育(そだ)てる論議であった…。

      *

 …洗礼の園だか、何処(どこ)かの学舎だか、はた又何処かの店内だか判らない施設の中で、俺は、その建物の上階の方、殆ど屋上に近い階の辺りを徘徊(うろうろ)して居た。俺の心身(からだ)は自然(しぜん)の流れで、調理室へ入り、そこに授業(或いは仕事)で集う学生(或いは職員)が結構な熱気を以て居り、殆ど女だった。女の熱気が俺に迫った。その群れの内に、鶴崎有美(つるさきありみ)と田尻(たじり)が居た。鶴崎と田尻は体操着を着て居て、二人共、太腿を露わにして居り、俺の煩悩を擽った。特に、鶴崎の太腿は何時(いつ)もの通りに目の覚めるような、抜けるような白さを誇り、薄らピンク色に火照った頬と腿の肌の色は、俺の〝鶴崎有美を犯したい欲望〟を大きく揺るがした。

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 一通(とおり)の外れを俗世が活き貫(ぬ)き「不毛」の信仰(めいろ)を名誉に観た後(のち)、旧い脚力(ちから)は萎びた儘にて不装(ふそう)の栄華を極めて行った。虚空の許容(うち)から逆生(もど)る活命(いのち)は身活(みかつ)に囀る童(わらわ)に在れども、幻(ゆめ)の未完(みじゅく)に気色を問い得る幻覚(ゆめ)と神秘(ふしぎ)の文言(ことば)の奥には、粋(いき)り立ち行く「孤独の諸刃(やいば)」が傾き出した。女性(おんな)の背後(うしろ)に四季(きせつ)が立ち込め魅惑の夕べを気楼に遣れども、月夜の華から躰を差し生く都会の日々など連盟させ得た。末活(みかつ)の信途(しんと)が極意を枯らせど安い体裁(かたち)は延命(いのち)を吹き込み、無己(おのれ)の孤独に両刃(やいば)を魅せ生く気楼の主観(あるじ)は無感に発(た)ち分け、幻(ゆめ)の感覚(いしき)へ当面立てない不遜の事実を有耶無耶にもした…。男性(おとこ)に駈け生く不動の儀式は意味に追い付き無感を腐らせ、幻視(ゆめ)の構図に立見(りっけん)して生く児(こども)の孤独を曖昧にも魅せ、脆弱(よわ)い〝四季(きせつ)〟を順に流行(なが)せる夜半(よわ)の旧巣(ふるす)を小庭(にわ)へと遣った―――。明日(あす)の景色を孤独に呼ぶうち未踏(みとう)の「旧巣(ふるす)」は幻想(ゆめ)に捥がれて、温厚(あつ)い朝日の〝堂々巡り〟を不乱に信じて寝耳を研いだ…。幻視(ゆめ)の四季(きせつ)に陽(よう)が逆上(のぼ)れる名誉の脚色(いろ)から抑揚付けつつ、旧い夜風の小敗血(アジト)は未(いま)でも、「都会」の空気を暗算して居た…。一向経っても微温(ぬる)く成らない俗人(ひと)の界(かぎり)は覇王を目指して、脆(やわ)い具体(からだ)を精華(はな)に咲かせる無論の暗気(あんき)を御託に手掛け、安い葉巻に二重体(からだ)を三重(かさ)ねる未憶(みおく)の憂慮を肯定して生く…。苦労の自主(あるじ)に小手を観られて、不和の身辺(あたり)を利口に問うのは、旧来(むかしながら)の「ぎこち」の好さから〝女性(おんな)〟を掌(て)にした欲芽(よくめ)でもあり、未来(さき)が立たない不応の進度(しんど)は既知に捕まり個性を削(そ)いだ…。不落に煌(かがや)く一人(ひとり)の許容(うち)から〝月夜の挽歌〟が死闘を装い、健気の目をした苦人(クーリー)達には〝水と霊との…〟足場が立った。有頂に静まる不断の景色は未解(みかい)へ及べる感覚(いしき)を帯びつつ、白亜(しろ)い気色に感覚(いしき)を失う孤高と霊との破局を識(し)った。今朝の幻(ゆめ)から行李の底まで、一女(おんな)の犬歯(やいば)は過去を語らず、丑の刻(とき)から静間(しずま)を観て生く「旧い組織」を解体して居た―――。

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 ―――俺は皆から逃げつつ、屋上へ出た。その時、俺にはまるでオウム真理教の信者のような、熱狂的だが何か在れば直ぐに離れて行きそうな信者の数住人が付いて来て居て、俺はその群れの何人かに命令し、まだ俺の信者に成って居ない鶴崎有美を入信させ、俺の物とさせるよう、「連れて来い」と言って居た。でも、鶴崎は連れて来られたが、俺の信者に成るのを激しく嫌って、薄桃色の太腿(ふともも)を振り乱しながら俺から離れようとして居て、俺は残念な思いを持ちつつ、ただ鶴崎の〝嫌がる光景〟を眺めて居るだけだった。俺は何か、魔法を使える超人に成って居り、皆を率いる事の出来る扇動者の様(よう)に成って居た。空を跳ぶことが出来て居たが、それは何時(いつ)ものように、その時の調子で、上手く行く時と行かない時とが在った。

      *

 無情の思乱(あらし)を名誉に携え不気(ふき)の行李にその実(み)を詠めれば、束の間から観た思乱(あらし)の孤独は暗(やみ)に静まり家訓を告げた。思い想いの孤独の狡さに幻想(ゆめ)の空気(しとね)は孤高に平伏し、分厚(あつ)い間際に女性(おんな)を焼き切る不貞の清閑(しずか)を躍起に告げた。浅い労苦を朝陽に浴びるは無機の清閑(しずか)に憶えて居ながら、ろくでも無いまま無頓に敷くのは界(かぎり)を見忘(わす)れた無難であった。幻想(ゆめ)に名高い憂慮の果(さ)きには一人(ひと)の名残が想いを決め込み、朝に纏わる器量の重さを人体(ひとのからだ)にそのまま費やせ、分厚(あつ)い空壁(かべ)から身活(みかつ)へ沿うのは人山(やま)の思乱(あらし)の相乗だった。

 宙(そら)に根付ける夢遊の気色は幾らか迷える難儀を描(えが)けて、人体(ひとのからだ)を無心に誘(さそ)える不頼(ふらい)の幼女を烈しく識(し)った。孤高の動作は未来(さき)へ集まる思力(しりょく)を温(あたた)め、浅い気色に〝絵図〟を見出す不通の朝日を良く良く見直し、幻想(ゆめ)の微温(ぬるま)に人間(ひと)を突かせる才色兼備の空想(おもい)と発(た)った。旧(むかし)に連れ添う淡い弄(あそ)びは無垢の初歩(いろは)を至純(しじゅん)に脚色付(いろづ)け、明日(あす)の文言(ことば)と心音(おと)を求める無頼の勇気に相当して居り、昨日に目指せる身欲(よく)の空間(すきま)は未活(みかつ)に阿る朝陽を苦しめ、幻視(ゆめ)の労気(ろうき)と楼気(ろうき)に導く女性(おんな)の甲(こう)には、私欲(よく)の水面(みなも)が努力を描(か)いた―――。男性(おとこ)の文言(ことば)を過憶(かおく)に詠むのは旧い活路の天晴(あっぱれ)ばかりで、女性(おんな)の薹には夕陽が悩める無頼の信途(しんと)が追随して活き、固陋に集まる旧(むかし)の幼図(ようず)は、無知に活き継ぎ感覚(いしき)を画せる「不頼・長者(ふらいちょうじゃ)」の信途(しんと)と知った―――。

「誰かに貰った活命(いのち)の指輪が、夜半(よわ)に解(と)け逝き自滅を透す…」

 紺(あお)い四季(きせつ)が我儘ばかりで虚空の景色を孤独に観る時、四方(よも)に触れ往く未踏(みとう)の自主(あるじ)は無垢に寄沿(よそ)える不埒を識(し)った。孤高の脚色(いろ)から「無知」が遠退き、暗(やみ)の身元に〝効果〟が発(た)つのは、神秘(ふしぎ)と暗黙(やみ)とが感覚(いしき)を失くせる「無頼・峠(ぶらいとうげ)」の如芯(にょしん)に在った―――…。女性(おんな)の旧茂(ふるも)は白砂(すな)を分け活き、孤高に居座る徒労を編んだ…。

      *

 …皆から追われ、屋上へ逃げた俺には、俺の超能力に惹かれてその超能力で〝自分を救って欲しい〟とした数十人の輩が付いて来て居たが、追い駆けて来る他の職員の多さに多勢に無勢を知り、どんどん俺の周りから離れて行き、結局、一番身近に居た奴でも少し距離を空けて互いを見るように成って、俺は〝此処はもう駄目だ〟としてすうっと羽ばたき、自分だけの逃げ場所へ逃げ込みたいと、本気で思い込むように成った。その時でも、自分が何で逃げて居るのかはっきり分らずに居た。

      *

 文言(ことば)の逆生(もどり)に可能を見出(みいだ)し幻(ゆめ)の音頭を極めて行っても、行方知れずの恋の小路(みち)には脆弱(よわ)い掟が罷り通った…。不応に佇む未知の輪廻(ロンド)は否が応にも「子供騙し」で、気熱(ねつ)に煽られ身塵(ちり)へ往くのを孤高の根城に甲斐無く見て居り、児(こども)の体を余所へ遣るのは未知の孤独の概ねから得た…。一女(おんな)の気色を具体(からだ)に消し去り未応(みおう)の礫を身欲(よく)に遣るのは幻(ゆめ)より概(おお)きな〝藪〟の内(なか)から奇妙に活き尽(き)る虫の羽音(はおと)で、孤踏(ことう)に赴く狭筵(むしろ)の白牙(きば)には、男性(おとこ)の一体(からだ)に死線が通れる身寒(さむ)い気色を堪能して居た。一男(おとこ)の口から魔導(まどう)が活きがり幻想(ゆめ)の八光(おろち)が吟味に生くのは、胸に問い得る愚かな情事(こと)より波紋を拡げた普請(ぶしん)であった…。―――女性(おんな)の理性(はどめ)に感覚(いしき)が延び生く気楼の価値には魅惑が絶え活き、具体(からだ)の寝具が孤高の吟味(あじ)など虚無の内よりどんどん識(し)り活き、孤高の空気(もぬけ)を人間(ひと)に観るのは〝旧来(むかしながら)の独理(ドグマ)〟に在った。一幻(ゆめ)の孤独は孤独に在り得ず不意に好く知る無価値は落ち着き、温厚(あつ)い手毬の展開(ながれ)の内(なか)には、女性(おんな)に統べ生く「無答(むとう)の主観(あるじ)」が細(ほっそ)り立った。男性(おとこ)の孤独を虚無に魅せ活き不当の思乱(あらし)が虚構を識(し)るのは、無己(おのれ)の不様を絵図に仕上げる不応の黄色を身欲(よく)に描(えが)いた。漆黒(くろ)い景色の徒党の許容(うち)から黄金色した知識が解け込み、身活(みかつ)の術(すべ)から悪魔を観るのは、幻想(ゆめ)の無欲を宙(そら)に突き込む無想の屈曲(まがり)の突然だった。素人(ひと)の魂(たま)から感覚(いしき)が跳び発(た)ち無己(おのれ)の枯渇が桑に化け生く素人気取りの天邪鬼から、幻(ゆめ)の未知へと気楼を生育(そだ)てる自己(おのれ)の敗者が復活して居た。

「復活の半生(はんしょう)」

 分厚(あつ)い独理(ドグマ)を幻(ゆめ)の掌(て)に置き、無機の理性(はどめ)に自体(おのれ)を採るのは、幻想(ゆめ)の空気に浸透して生く孤島の男性(おとこ)に酷似した儘、幻(ゆめ)の夜明けを吟味(あじ)へ任せる素人気取りの逆生(もどり)に在った…。一女(おんな)の賛美が宙(そら)に轟く不通の勇者の小躍(ダンス)に乗じて、不安を失(け)し去る右翼の水面(みなも)は夢中に驚き松明(あかり)を捨て去り、幻(ゆめ)の身欲(みよく)に具体(からだ)を仕上げる孤踏(ことう)の小躍(おどり)に流行(なが)れて在った―――。

 孤独の小躍(おどり)は羽衣ばかり…

 一幻(ゆめ)の白衣(ころも)に女性(おんな)が発(た)ち生く…

 旧話(むかしばなし)の実話の報復…

 内輪(うちわ)の談笑(わらい)を担いで行った…

 未己(みこ)の無己(おのれ)を担いで行った…

 明日(あす)に失(き)え生く旧巣(ふるす)の音頭…。

 幻(ゆめ)の未活(みかつ)に這(ほ)う這(ほ)うから観た無限の論歩(ろんぽ)に温(あたた)かみを識(し)り、温厚(あつ)い独談(かたり)を律儀に問い生く「宙(そら)の身元」を露わにした儘、生娘(むすめ)の吐息が未来(さき)へ解(と)け込む安い哀れを気色に問い掛け、淡い「送り…」に活命(いのち)を見果てる白壁(かべ)の合図を孤独に立てた―――。一幻(ゆめ)の感覚(いしき)に満ち生く上手(じょうず)は一女(おんな)の美声(こえ)から発泡され活き、小禽(ことり)の鳴く音(ね)が奇妙に相(あい)する不義の輪廻(ロンド)は未完(みじゅく)を生育(そだ)てる…。不屈に集まる独裁(どくが)の精神(こころ)は、未(いま)を呼ぶまま身内に問い掛け、明日(あす)を置き去る神秘(ふしぎ)の信仰(めいろ)を駆逐するまま精製され活き、男女(ひと)に置き遣る未活(みかつ)の迷路は「未知」の生くまま反省さえ無い。意味を講じて人体(からだ)を捩れる不屈の魂(こえ)には未踏(みとう)が羽ばたき、安い憂慮が羽ばたく相間(あいま)に「巣鴨」の発狂(くるい)は概(おお)きく成った…。漆黒(くろ)い具体(からだ)は感覚(いしき)を直せず一幻(ゆめ)の伴侶は気色を識(し)らずに、掟破りの太腿(もも)の肥(ふと)さは一女(おんな)の「生娘(むすめ)」に活き活きして居る…。不通を透さず「思乱(あらし)」の旨には未綿(みわた)の気色が嵐を静めて、軟い規則を反転させ生く不動の八頭(おろち)を未限(みげん)に失(け)した…。幻覚(ゆめ)の鼓膜を一通りに破(さ)き、分厚(あつ)い白壁(かべ)から現行(いま)を語れば、…俗世(このよ)を買い込む俗人(ひと)の総理(すべて)が夜半(よわ)に研(と)け往き白砂を吟味(あじ)わい、一人(ひと)の気色を吟味(あじ)わい、一人(ひと)の気色を露頭に立たせる旧い夜風の〝追われ〟に在った。一幻(ゆめ)の生死を息に調え未行(みこう)の気色を路銀に足せれば、幻(ゆめ)と一女(おんな)の孤独の正理(せいり)は夜半(よわ)に導く疑問を消し去り、脆弱(よわ)い辛気(しんき)に身重を二重(かさ)ねる余裕の温度を密かに待った―――。辺り構わず三色(さんしょく)から成る〝トリコロール〟の魅惑が空転(ころ)がり女性(おんな)の芽(め)に発(た)つ浮悶(ふもん)の景色は、個動(こどう)を射止めて未活を留(とど)め、理性(はどめ)さえ無い幻想(ゆめ)の化色(けしき)を人物(もの)の見事に相殺(ころ)して在った。徒党を組み生く愚かの口には母性(はは)の愚行(おろか)が連鎖(くさり)を爪弾き、柔い主観(あるじ)を露頭に立たせる無頼の自然(あるじ)は結局出戻り、白亜(しろ)い明日(あす)から小熊(こぐま)を観るのは「幻(ゆめ)の哀れ」の泣き言だった…。破水して生く母性(おんな)の気色に未来(さき)を空転(ころ)がす私欲(よく)が先駆け、温厚(あつ)い感覚(いしき)の展開(ながれ)を差すのは〝三角印(さんかくじるし)〟の魅惑であった―――…。

      *

 …―――殺人を犯した訳でもなく、何かを盗んだでもない、唯〝扇動〟の影がちらほら浮んだが、別にそれを以て(例えば)世間に何かした訳でもなく、この団結を以て為した事が誰かに破(ば)れる等とは、思っても見なかった事だ。何故自分が逃げて居るのか、逃げるのか、俺は分らず逃げて居た。皆が俺を追い駆けて来るから俺は逃げて居た。又何故か、話し合いをしても無駄だ、と思い込んで居た。屋上に居た時に俺を取り巻いた景色は、黄昏時(FFⅧのケルベロスの登場シーンのような)と漆黒の夜だった。

      *

 無限の日蓋(ひぶた)を笠に着たまま無穏(むおん)の日々には男女(ひと)が語らい、幻(ゆめ)の昼間を朗(あか)るみへと出す孤独の謳歌が再来して居た。一幻(ゆめ)の昼間は「日々」を訪れ寸と跳び出る疲労を観た後、無己(おのれ)を無視する精神(こころ)の私運(はこび)に無応(むおう)想わす自然が空転(ころ)がり暗(やみ)の幻想(ゆめ)から悪事を気にした女性(おんな)の原価は薄らぐ儘にて、暗(やみ)を想わす発狂(くる)う火の手は無婚(むこん)を気にして独理(ドグマ)へ入(い)った。幻(ゆめ)の家畜を揚々気にする温厚(あつ)い意固地は男性(おとこ)を見守り、陰府(よみ)の縁(ふち)から明日(あす)を目掛けた人間(ひと)の具体(からだ)を感覚(いしき)に執り成し、温厚(あつ)い日々から幻滅するのは速い走馬の体裁(かたち)と成った。一女(おんな)の先手(さきて)が紅(こう)を保(も)ち上げ広い住処を疑心に畳むは、未知の日々から無名を紐解く誘拐ばかりの傘下であって、厚い日々から展開(ながれ)を観るのは「孤独」を紐解く快無(オルガ)であった…。女性(おんな)の様子は情緒を気に掛け無心の弄(あそ)びに譲渡を観た儘、オレンジ色した日活(ひかつ)の契りは一女(おんな)の愛露(エロス)を嘆願した儘、発狂(くる)う日(ひ)の粉(こ)に得手を見守る浮遊の相奴(あいど)を上々欲した。一幻(ゆめ)の撓みを芯に欲する男女(ひと)の悪魔を自由に観るのは、得手を離れて孤独を醸(じょう)ずる幻覚(ゆめ)の進歩の暴露であって、一光(ひかり)に乗じて暗(やみ)を照らせる女性(おんな)の眼(め)をした小悪魔達には、「堂々巡りの日の手」が誘(いざな)う脆弱(よわ)い空城(くるわ)が密かに跳んだ。試算に乗じる孤独の睡魔は未然に紐解く無審(むしん)に過ぎずに、潤(うる)う精神(こころ)に真綿を保(も)ち往く不毛の信仰(めいろ)に曲進(きょくしん)した儘…、向日合せの密かな「信仰(めいろ)」は無己(おのれ)の無欲に埋没して来た…。徒労の日々から幻(ゆめ)が生い立ち不幸と幸(こう)とを魅惑に詠むのは、密かに佇む自己(おのれ)の労苦を私算(しさん)に紛(ふん)して細切れにも成り、男女(ひと)に統(たば)ねた滑稽(おかし)な道理の孤独の算(さん)には、俗世(このよ)の人物(もの)からずっと乖離(はな)れる至闘(しとう)の如くを改竄して居た…。女性(おんな)の芽に発(た)つ無戒(むかい)の有機が情事(こと)に構えて落ち度を看破(みやぶ)り、分厚(あつ)い白壁(かべ)から譲渡が往くのを思惑(こころ)に留(と)め生く試算が立った―――。俺の羽振りが女性(おんな)に対して好(よ)く好(よ)く尽きずに透って行くのは、幻覚(ゆめ)の感覚(いしき)へ二重(にじゅう)に束ねた孤独の跋との成り行き任せで、分厚(あつ)い日々から私闘が生くのは未活(みかつ)の安堵の更退(こうたい)だった…。白紙(こころ)の端(はし)から一女(おんな)が通れる旧い元気は調子を上げ活き、一幻(ゆめ)の安堵を御託に任せる人と哀れの無像(むぞう)を欲した幻覚(ゆめ)の八頭(おろち)を改竄した儘、低く見積もる遊離の美園(その)には「男性(おとこ)の原価」を達成して居た。俺の精神(こころ)は思惑(こころ)を識(し)り貫(ぬ)き幻覚(ゆめ)と女性(おんな)の相異を凝らせず、幻(ゆめ)と悪魔の相乗効果を何者にも無く発揮した儘、孤独に差し込む陽(よう)の朗(あかり)は朗々静まり、纏まり始める男女(ひと)の歪曲(ゆがみ)は「宙(そら)」を描(えが)ける気流を識(し)った…。―――幻(ゆめ)の落ち度に人間(ひと)の流行(ながれ)が燦々足るまま未完(みじゅく)に落ち込む悲壮の限度は男性(おとこ)を識(し)らずに界(かぎり)を知り活き、惨い仕打ちが手切れを知るのは幻(ゆめ)の「落ち度」の限界でもある…。女性(おんな)の身欲を無根に覚らす「暗躍して生く魔性の性気(せいき)」は、無活(むかつ)を湿らす男性(おとこ)の活気に轆轤を廻せる夢想(むそう)を限らせ、分厚(あつ)い空気(しとね)に無己(むこ)を想わす幸先(さき)に留(と)め得る身活(みかつ)の純度は、幻想(ゆめ)の廻りで概(おお)きく生育(そだ)てる「日々の暮らし」の日課であった。ぽつんと落ち込む「相場」の身辺(あたり)は無己(おのれ)の界(かぎり)を延々紐解く「無想」の界(かぎり)を暗(やみ)へ観た儘、女性(おんな)の気色が段々佇む幻想(ゆめ)の景色に逆戻(もど)りをして、白紙(こころ)と精神(こころ)の暗躍成らねど「徒労の日蓋(ひぶた)」の暁ばかりは、幻(ゆめ)の無知にて自身(おのれ)を紐解く無想の界(かぎり)に新しかった。日々の夕べに悪態吐き生く無己(おのれ)の精気は散々静まり、分厚(あつ)い独語(かたり)に信仰(まよい)を断たせる「立命(りつめい)」ばかりが無言で佇み、固陋に徹する悪意の共鳴(なげき)は宙(そら)へ紐解く元価(げんか)を識(し)った―――女性(おんな)の色香(いろか)を失くせる暗(やみ)には死闘に保(も)ち込む厭味が活き出せ、母性(はは)の日毎の酔狂(くるい)の許容(うち)には「幻想(ゆめ)の安堵」が験担(げんかつ)ぎを観て、厚い滾りの白壁(かべ)を詠むうち人物(もの)の勇気は放散(ぼうさん)して居た。―――死闘に及べる七つの域には一幻(ゆめ)の八頭(おろち)が拡散したまま暗(やみ)を想わす空気(しとね)の勇気は幻想(ゆめ)に従え思乱(あらし)に息衝き、固陋に基づく感覚(いしき)の上では幻(ゆめ)の身屈(みくつ)に至闘(しとう)が見えるも、明日(あす)の春嵐(あらし)に暴言足るのは幻(ゆめ)の感覚(いしき)の意固地に在った…。未知を観るまま未解(みかい)を相(あい)して余算(よさん)が講じる界(かぎり)の幻(ゆめ)には、分厚(あつ)い孤独の展開(ながれ)が秀でて幻(ゆめ)の八頭(おろち)が逆行して活き、人間(ひと)の傀儡(どうぐ)を未知に発(た)たせる「幻覚(ゆめ)の童子」に同等だった。女性(おんな)の寝息が男性(おとこ)へ掛かれる旧い途切(とぎ)りが無性(むしょう)に怪しく…透明成るまま不活(ふかつ)の暗(やみ)には無知の信義(しんぎ)が同等巡りで、分厚(あつ)い独理(ドグマ)の展開(ながれ)へ往くのは夢精(むせい)に名高い思乱(あらし)であった…。一幻(ゆめ)の枯渇に上々紐解く緩い経過は人間(ひと)を取り留め、分厚(あつ)い孤独に宙(そら)を観る後(のち)幻(ゆめ)の手枕(まくら)は律儀に傾き、鈍々(どんどん)、段々…幻(ゆめ)に捧げる女性(おんな)の諸刃(やいば)は未知を想わせ至闘(しとう)と扱い、白亜(しろ)い途切(とぎ)りに春嵐(あらし)が佇む幻覚(ゆめ)の幸先(さき)から未来(みらい)が跳んだ…。

      *

 …その群れに追い掛けられる時、俺を取り巻いた環境は夜へ昼をランダムに飾り付き、一瞬、目まぐるしい程、俺の気持ちを騒がせて居た。その群れの内には、背低(せびく)で昔を想わす母方の叔父、異国情緒を従え妖しい精気を上々採り生く神奈川生れの品の在る女史、母方の従妹から父方の従妹まで居り、従兄妹と俺との間の白壁(かべ)を感じさせた。

      *

 目下(ふもと)の朝日を自活(かて)に観ながら幻(ゆめ)の労苦を女性(おんな)へ紐解き、漆黒(くろ)い懺悔が野平(のっぺ)り衝動(うご)ける未来(さき)の愚行(おろか)を充分射止めて、幻想(ゆめ)に集まる徒労の男性(おとこ)は身欲(よく)を肴に安泰して居た。一女(おんな)の羽振りに未婚が想われ幻(ゆめ)の無機には自活を養い、私闘の独理(ドグマ)は暗々(あんあん)繋がる幻(ゆめ)の輪廻(ロンド)を虚空に観ながら、鈍(くも)る両眼(まなこ)が宙(そら)を描ける気楼の跡芽(あとめ)を漸く摘んだ。厚い日中(ひなか)を傀儡(どうぐ)に見立てて葦(よし)の目下(ふもと)に男女(ひと)が衝動(うご)くは、幻覚(ゆめ)の未知から私労(しろう)を生育(そだ)てる幻覚(ゆめ)の文句に調停されつつ、厚い屍(かばね)を宙(そら)へ描(えが)ける無理を通せぬ紅(あか)い陽(よう)には、男女(ひと)の役目を俗世(このよ)に果せる一幻(ゆめ)の労苦が散々降(お)りた…。孤高に挙がれる脆弱(よわ)い気色は一人(ひと)の懺悔を真下に観ながら、畢竟、男女(ひと)を訝る無音の日々へと路面を通させ、孤独に活き生く無為の音頭を当面繋げた共鳴(なげき)を識(し)った。白亜(しろ)い正義が白体(からだ)を懐ける微量の正義に基(もと)を正され、安い旧巣(ふるす)に勇気を弾ける無穏(むおん)の正理(せいり)は安泰から漏れ、孤独を意図した旧い過憶(かおく)は夜半(よわ)の許容(うち)へと巣立って行った。喉の渇きを潤せないでも男女(ひと)の身欲(よく)には白体(からだ)が仕上がり、弁当引提げ「無穏(むおん)の日々」から脱却するのは、干乾び始める夜半(よわ)の日下(ひもと)の宇宙(うちゅう)を感じる余力であった。無音の幻想(ゆめ)から日々が始まる幻覚(ゆめ)の魅力は宙(そら)を得ながら、孤高の労苦を体に湿(しめ)らす無機の翳りは男・女(だんじょ)を引き裂き、脆弱(よわ)い体を活命(いのち)へ与(あず)ける「紐と霊と」の小敗地(アジト)を買った…。虚空へ棚引く一人(ひと)の前途は翳りを見知らぬ悪意を懲らしめ、悠々自適に「鈍(くも)る両眼(まなこ)」は堂々巡りの散歩を蹴散らせ、旧い素人(ひと)から斬新(あらた)な素人(ひと)へと、幻想(ゆめ)の未欲(みよく)は未(ま)だ未(ま)だ朗(あか)るい…。男女(ひと)の麹(こうじ)が湶を消し去り宙(そら)の論句を駆動に観るのは、日廻(ひまわ)りから観た銀杏並木の素人(ひと)へ懐ける魅惑の目下(もと)にて、白亜(はくあ)の日々から基(もと)を成すのは無己(おのれ)に羽ばたく輪廻(ロンド)であった。競争せず儘「俺」は謳われ、現代人(ひと)の労苦は身寄りを失くされ、旧い住まいに陰りを観るのは翌朝(あさ)に近付く無菌であった―――。俺の白体(からだ)は現代人(げんだいじん)から遥か宙(そら)へと挙がった儘にて、幻想(ゆめ)の四肢(てあし)に夢中に成れるを小(こ)の葉(は)に散らせる矛盾を吟味(あじ)わい、女性(おんな)の眼(め)に発(た)つ無欲の柔裸(やわら)は相乗効果の契りに在った…。幻(ゆめ)の労苦が久しく成るうち途切れ途切れの静かは間(ま)に堕ち、幻(ゆめ)の意味から気色を解(かい)せる嗣業の初歩(いろは)を有(ゆう)せる若輩(やから)は、怒涛を合せて焦点(ピント)を懐ける徒労と成就の生業だった―――。

      *

 ―――俺は可弱(かよわ)い昆虫(むし)の様(よう)に、ふわふわ、夜の校舎の上(上空)、街の上(上空)を飛び回り、見た目には優しいが、本人にとっては必至・懸命に逃げて居た。もうムードは皆が作り上げるムードだ。そのムードは夢に蔓延して居るので、俺がそのムードから逃げるのは容易では無い。青白い夜だった。

      *

 孤独の深化を防ぎ尽(き)れずに幻想(ゆめ)の渦から人間(ひと)を怪しみ、男女(ひと)の体裁(かたち)を終ぞ怪しむ未解(みかい)の温度は人体(からだ)を切った…。「俺」の人煙(けむり)が古注(こちゅう)を跳び交う〝寡暮らし〟の日々を飼い占め、温厚(あつ)い文言(ことば)を宙(そら)に飼い見る幻想(ゆめ)の造作は一つ処で、男女(ひと)の気色を堂々巡りに怪し見て行く疲労の所以(ありか)は心配して居た。男女(ひと)と現行(いま)との矛盾の流行(ながれ)が宙(そら)に木霊す「夢遊」の病気は、一人(ひと)の塒に仮(かり)を観て生く奇想の主観(あるじ)を「柵(さく)」に見て居り、未来(さき)の思乱(あらし)を故郷に観て生く無頼の自主(あるじ)は肴を並べど、相(あい)する両眼(まなこ)は女性(おんな)を識(し)らない無数の気色を分譲して居た。男性(おとこ)の孤独に価値が観えねど幻(ゆめ)の主観(あるじ)は謙遜ばかりで、白亜(しろ)い両眼(まなこ)に初夏(なつ)が飛び交う無数の日々には一人(ひと)が佇み、旧い体裁(かたち)に羽振りを識(し)らない奇想の天下は敢え無く堕ちた…―――。黒髪(かみ)を乱せる若葉の残香(かおり)は人体(ひとのからだ)を快無(オルガ)に培い、刃向かう景色に自己(おのれ)を観て生く不装(ふそう)を伴う自主(あるじ)は空転(ころ)がり、悪い夜目(よめ)から起死を観て生く不安の延びには悪夢が発(た)った。古豪の残香(かおり)に古縁(えにし)が発(た)ち活き「奇想」の宮(みやこ)に感覚(いしき)が立つのは、向い合せに育児を失くせる旧い夜半(よわ)での見積もり等あり、男女(ひと)の大手を隈なく見詰める不乱に射止めた従者が発(た)った…。古い「白亜(はくあ)」に未知が傾き幻想(ゆめ)の「夜半(よわ)」等射止めた後には、人間(ひと)の自主(あるじ)が児(こども)を見付ける不頼(ふらい)の夜霧が轟々たじろぎ、身寒(さむ)い夜半(よわ)から身覚(みかく)が集(たか)れる無容(むよう)に見兼ねた「座敷」が立った…。一幻(ゆめ)の未知には温度が閃き、淡い春日(かすが)は事前を識(し)った…。無垢の夜半(よわ)から気楼が集(たか)れる無知の欠伸は未鈍(みどん)を束ねて、素人気取りに「あわよくば…」を観る無浪(むろう)の颯(はやて)の様(よう)には横倒れに成る…。「真実一路…」と未解(みかい)に踏み込み幻想(ゆめ)の〝疾風(はやて)〟を岐路に観るのは、旧来独語(むかしがたり)に私闘を幻見(ゆめみ)る不浪(ふろう)の欠伸に絶賛して居た…。無茶に色彩(いろど)る幻見(ゆめみ)の内実(なか)には、素人(ひと)の気色が減退する内、幻(ゆめ)の両腕(かいな)が寝床を明(あか)せる不浪(ふろう)の信義(しんぎ)をゆっくり見て取り、温厚(あつ)い日蓋(ひぶた)を孤高に生け捕る夜半(よわ)の信仰(めいろ)が快活とも成る。幻(ゆめ)の感覚(いしき)を淋しく通れる不毛の独創(こごと)は開祖(かいそ)を見開き、脆弱(よわ)い目下(ふもと)へ一身(いちみ)を置くのは「無心の看破」に聡明とも成る…。

      *

 …古豪の残香(かおり)が体臭(におい)を消すのは「幻(ゆめ)の枕…」の孤独に一種で、孤独の網羅に自己(おのれ)を培う無頓の自覚(かくご)は離散を幻見(ゆめみ)て、男女(ひと)の自然(あるじ)を聡明にも観る孤高の神秘(ふしぎ)に枠付(わくづ)けして居る…。


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~孤独と両腕(かいな)の幻見(ゆめみ)の跡(あと)にて~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji

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