第25話 新チーム

3年が引退し、1,2年の新チームが発足する事になった。

練習前に軽くミーティングが行われ、新キャプテンのミドルブロッカー2年の竹内が挨拶をした。


「新キャプテンの竹内です。よろしくお願いします。副キャプテンは、例年だと同じ2年から選ぶんですが、今年は2年との連携を考えて、1年から選ぶ事にしました。

それで、岡本先生と考えた結果、石川さんにお願いしようと思います。」


急に名前を呼ばれ、紗代は驚く。


「え?あ、あたしですか!?」

「すごいじゃん!紗代!」


愛那は隣に立つ紗代に、拍手をする。


「頑張って!」


知佳もまた、笑顔で拍手をした。


「あ、あたしなんかでいいのかなぁ。」

「あたしは、石川さんが適任だと思って、岡本先生に相談したら、先生も、石川さんがいいって即決しました。」


そう言いながらパイプ椅子に座り、様子を見ていた岡本先生が立ち上がる。


「やってくれるな?石川。」

「は、はい!頑張ります!」


背筋をピンッ!と伸ばす紗代に、全員が拍手を送った。


「じゃあ、とりあえずアップを初めて。その後レシーブ練習!以上、解散!」

「はい!」


「紗代、一緒にパスやろ!」

「うん。」


愛那と紗代はキャッチボールを始める。

男子もまた、新チーム発足に伴い、新キャプテン、副キャプテンを決めていた。


「新キャプテンは、俺、藍田、副キャプテンは同じく2年の唐田で、お願いします。」


先日、顧問と話し合った結果、キャプテンは柚羽、副キャプテンはセッターの唐田に決まった。


「よろしくお願いします!」


安が目を輝かせる。


「お、おう。」


――こいつ、悪いヤツじゃないんだけど・・・なんか苦手なんだよな。


柚羽は、やや押され気味に答えた。


「シートやるから、吉田、紗代、知佳、侑里禾、愛那、入って。」


竹内が言うと、愛那はキョトンとしている。


「愛那!早く入って!」

「は、はい!」


――あたし、入っていいんだ。


「今までの先輩の動き、ちゃんと見てたよね?自分でよく考えて動いて。」

「は、はい!わかりました!」


愛那はレフトに入る。

知佳が上げたトスを思いっきりクロスに打ってみる。紗代がしっかりレシーブで上げる。


「くぅ〜!つよっっ!」

「愛那!今度はストレート狙って!」


知佳がもう一度愛那にトスを上げる。


――ストレート、ストレート!


バシッ!!


「うきゃ!!」


今度は侑里禾がしっかりとレシーブを上げる。


「吉田先輩!」


バックトスを上げると、吉田がクロスで、愛那の前に打ち込んだ。


「はい!」


抜群の瞬発力で滑り込みレシーブを上げる。


「ナイス愛那!知佳!」

「はい!キャプテン!」


知佳が竹内に短いトスを上げると、竹内は速攻で真ん中に落とした。


「ここ、あいてる。誰が行く?」


竹内がみんなに聞く。


「愛那に打たせる事を考えたら、あたしが行きます。」


紗代が手をあげた。


「オッケー、じゃあそれで行こう。」


再び知佳がトスをあげ、シートが始まった。


練習が終り、いつものように下駄箱に行くと、安が待っていた。


「愛那ちゃん、一緒に帰ろう。」

「え?う、うん。」

「ヒューヒュー!このまま付き合っちゃえば?」


紗代と侑里禾、知佳が冷やかす。


「そ、そんなんじゃないから!」


愛那は慌てるが、安は少し嬉しそうだ。


「そんなに否定しないでよ。俺は全然構わないよ。」


――は!?


「キャー!公開告白!?」


紗代が顔を赤くして叫ぶ。


「すごいな。」


侑里禾がボソと呟く。


「ち、ちがっ!ちょっと何言ってんの!?あたしはそんなつもりないから!」

「愛那、彼氏いないんでしょ?いいじゃない、付き合えば。お似合いよ。」

「はあ?知佳、何言ってんのよ。」

「でしょ?世良さん。俺ら、お似合いだよね。」


安が愛那の肩を組む。


――や、やめてよ!また怒られちゃう!


愛那達がガヤガヤしてると、着替えを済ませた柚羽が唐田と一緒に出てきた。


「何騒いでんだ?」


ふと見ると、安が愛那の肩を抱いてるのが見えた。


「安は春川の事が好きなのかね。2人とも美男美女だし、お似合いだよな。なあ、柚羽。」


唐田は柚羽を見る。


「あ?ふん。そうか?」


柚羽は不機嫌な顔をして2人の後ろを通り過ぎた。



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藍より青く 本間和国 @kunuakitubu

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