13.村の問題に対処していこう!(2)
優秀な部下たちに後を任せ、次に向かうは採集班の男衆のところだ。
狩猟班とは違い、彼らはまだ屋敷の外。日が暮れるまでは草刈りを続けているはずである。
現在はヘレナも連れていないし、さすがに一人で草原に出るほど私もうかつな性格ではない。
ので、通用門の前に陣取って、草を屋敷内に運び入れるところを捕まえる。数人が集まったところで、今後の話をかくかくしかじかまるまるくまぐま。
「明日から何人か、狩りの手伝いに行ってほしい? ああ、かまわんよ。一人二人いなくなってもこっちはもう問題ないしな」
私の話を聞いて、採集班の男衆は顔を見合わせながらうなずいた。
特に異論もなければ反論もない。なにせ、こちらも『狩猟班に合流してくれ。詳しい話はそこで』としか言っていないからね。
それがまさか、炎上案件だとは思うまい。まあ、そもそもこの村自体が大炎上中で、ごちゃごちゃ言っていられない状況でもあるけども。
とにもかくにも、こちらは支障なし。
もう少しだけ話を進め、明日からは一人、明後日はさらに一人、その後は採集班の状況も見つつ人を動かしていくということで合意を取った。
狩猟班に合流する人員には、あとで外套も用意しておかないといけないだろう。そのあたりは、夕食時にでもまた話をつけることにして。
残る問題はというと、狩って来た余剰の肉をどこに置くか、だろうか。
肉は熟成させるもの。低温の状態で、数日から十日ほど置いた方がおいしくなるという。
これはつまり、逆に言えば数日程度なら腐敗することはないということだ。
低温という状態は、今の気候ならもう問題はないはないだろう。腐敗のしやすさも肉の種類によって変わりはするだろうけども、少なくとも今日明日程度で傷みはしない。暖炉の傍にでも置きっぱなしにしない限りは、大急ぎでどうこうする必要はないはずである。
なのでひとまずは、狩猟した日がわかる状態で地下食糧庫に保存。狩猟したぶんをそのままその日の食糧にするのではなく、古い順に消費していく形にしておこう。
今はまだ、日中の日が出ているうちは氷点下まで下がらない。夜に下りた霜も日差しを受けて、昼になる前には溶けてしまっている。
だけど川の水が凍るころになると、話はまた変わってくる。昼になっても雪は解けず、川の氷はますます厚くなり、吐きだす息さえ凍り出すのだという話。
こうなると、もう保存を考える必要もない。ここまでくると、肉だってガチガチに凍っちゃうからね。
もちろん、その前に日中も氷点下の季節が来る。
厳冬期に川が凍るということは、その前の十一月くらいにはもう日中も氷点下。日陰に置けば、それだけで保存が成り立つ時期である。
要は、ここまで腐らせずに肉を残せれば勝利である。
ぶっちゃけ、地下食糧庫に保管すればほぼ問題なし。そもそもあの場所、すでに氷点下じゃないかとさえ思う。
日光も当たらないし、人の出入りもほとんどないし、温度が上がる余地もない。外を走り回る子供さえ入りたがらない冷たさは、外気温より低いのは間違いない。
まあでも、念のため桶に水でも入れて置いてみようかな。
これで、少なくとも氷点下であるかどうかはわかるはず。氷が張れば氷点下、張らなければそれよりも上。日中でも氷が解けなければ氷点下を維持した状態と言えるし、そのまま置いて完全に氷になるようなら、もうこれは冷凍庫だ。
じゃ、これまたさっそく試すとしよう。
いつもと違って力仕事担当がいないけど、まあ井戸から多少の水を汲むくらいなら、私の力でも大丈夫でしょう。
と、前庭にある冷たい井戸水を汲み上げつつ、ふと思う。
………………そういえば、井戸水が凍ることってあるのかな?
まさかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます