12.村で起きている問題への対処方法を考えよう(3)

 えーと、もしも同時並行狩りができるのなら、狩猟数は合計で四頭。数値換算『80』。

 これを厳冬期までの四十五日間継続できれば、『3600』。目標値である『3105』よりも、かなり余裕のある数字になる。

 これならぶっつけ本番で二班に二頭狩りをさせなくとも、徐々に慣らしていくこともできるだろう。


 狩猟班から巻き取った仕事は、ちょうど手が空き始めた採集班に任せることにする。二班に分けての狩猟となると、四人のチームがやや不安。となると、ここにも採集班から何人か人をやった方が良さそうだ。


 首狩り草の備蓄量自体は、食糧庫を見て確認している。

 大袋にしてぴったり二十。これは、冬を越すために必要な食糧を、ギリギリで賄えるだけの量だ。


 一度の毒抜きに使用するのが、小さめの籠に二つ分。食用にも使うけれど、こちらは数字を分けているので計算からは除外する。

 最低一日一杯は呑む必要のある薬茶は、だいたい大匙山盛り一杯で五人分くらいのお茶が賄える。このあたり、個人で飲む人と大勢で飲む人に分かれて非常に分かりにくいうえに、濃い薄いでも好みが分かれる。大匙いっぱいで十人分くらいのお茶を淹れる人もいれば、出がらしで何杯も飲む人もいるので計算がやりにくい。

 致し方ないのでだいたいのお茶の減少量から考えて、一人頭一日二杯、数人でお茶を飲むことを仮定して、ややバッファを取って二十杯程度を一日に消費すると仮定する。


 これを足し合わせて、一日の使用量が小さめの籠四つ、大匙で二十杯。


 大匙はだいたい二十杯ほどで小さめの籠一つ。籠十杯ほどで中袋一つ。中袋五つで大袋一つと換算できる。

 つまり一日で消費する量は、籠六つ。

 一か月なら三十倍して、籠百八十。これを換算し直して、大袋三つに中袋三つ。

 冬の六か月に必要なのはすなわち、大袋にして二十一、中袋で三つとなる。


 現在の在庫が大袋二十なので少々足りないけれど、これは今後の採集によって賄える見込み。日々採集量が減少していっているものの、あと十日もあれば大袋二つぶんくらいなら無理なく集められるはずだ。


 さて、こうなると首狩り草の方も問題なし。

 人員についても、あと十日ほどすれば採集班が解散するので、ここから徐々に人を移動させていくことができるはず。数字に猶予が出たおかげで、明日から最高効率で同時並行狩りをしなくていいのが助かった。

 採集班の男衆は、明日から一人二人を狩猟班に合流させて、まずは狩りに慣れてもらおう。作業が減るごとに合流させる人数を増やして、最終的には十人中八人くらいは狩猟班の作業を手伝わせたい。

 これらの人員には、厳冬期に向けた薪の用意も進めてもらう。狩猟ができなくなるのと同じタイミングで薪の収集もできなくなるはずなので、早めに見積もって十一月下旬ごろには冬を越すための薪の用意を終えておいたほうがいいだろう。


 採集班の残る二人は、雑用係の手伝いに回そうと思っている。雑用係の面々のメンタル面は少々気がかりだけど、今の仕事量で回らないのは彼らも理解をしているはず。せめて、治療に支障の出そうな作業だけは無理にでも引き取らせてもらう必要がある。

 女衆の方も手が空き次第、二、三人ほどを家事・子守り組に合流させる。これで少しは負担解消になるだろう。

 残る人員は、採集と兼任していた炊事の方に専念してもらう。これから魔物肉が延々と増えていくことになる。厳冬期は外出も厳しいとなると、今のうちに毒抜きまでやっておいた方が良いはずだ。保存、保管はその後である。


 ――――うん。


 ずっと動かしていたペンを止めると、私はようやく顔を上げた。

 本日は久々の快晴。窓から部屋に差し込んでいた陽光はいつの間にか大きく傾き、部屋には長い影が落ちる。どれほど集中していたのか、空になっていたカップが取り替えられ、まだ生ぬるさの残る新しいお茶が用意されていたのにも気づかなかった。


 たぶん、ヘレナが来てこっそり交換してくれていたのだろう。私はペンを投げ出すと、ぬるいお茶を一気に飲み干した。

 そして、思いっきり大きな息を吐く。


 あ~~~~~~~~~計算終わり!!!! つっかれた~~~~!!!!

 さすがにゲームでもここまで細かく計算しないわ!!


 でも、これでばっちり!

 食糧、毒抜き用の草、薪、人員、厳冬期までの日数も含めて、漏れなく数字を揃えられた!!


 よーし、これで冬を越せるぞ――――!!!!

 さっそく村の人々に話を持ちかけに行ってこよう!!!!








 ………………と元気に部屋を飛び出しつつ、なーんか頭の隅に引っかかる。

 うーん? なにか一つ、計算に入れるのを忘れているような…………。







――――――――――――――――


大匙→普通の大匙くらい

小さめの籠→直径15センチのボウルくらい

中袋→5キロの米袋より少し小さいくらい

大袋→その5倍くらい


中身は乾燥した草なので米より軽い

あまりぎゅっとは押し込まず、ふんわりめ

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