25.来る冬に備えよう(2)
えー、そういうわけで、ここをこうしてこうしてこう。
ここまで得た知識をもとに、前回書いた村人の職業配分を書き換え入れ替え微調整。前に書き加えていなかった新顔の私たちも数に入れ、子供も労働人口にカウントして、二歳児だけはさすがに除外しあれしてこう。
頭を悩ませつつも一応の形になったところで、執務室の扉が叩かれた。
「殿下、お茶をお持ちしました」
そう言って部屋に入ってきたのは、意外な人物でもなんでもなくヘレナである。
どうやら屋敷の掃除は終わったらしい。彼女はティーポットを手に執務机に近寄ると、慣れた手つきで私にお茶を入れてくれる。
部屋の掃除にベッドメイクに給仕。侍女というよりはメイドの仕事だけど、このあたりヘレナは慣れたものだ。
なにせ王宮でも、鈍臭さゆえにあれこれ仕事を押し付けられていたみたいだからね。下級貴族で田舎者、生真面目なお人好しな侍女見習いなんて、王宮に居場所があるわけがない。
私の侍女になるまでの間、彼女もいろいろと苦労が多かったらしい――と言うのは置いておいて。
「お仕事の方はいかがです? 朝からずっと考え込んでいらっしゃいましたが……」
お茶を淹れついでに、彼女はそう言ってちらりと私の手元へ視線を向けた。
彼女の視線の先。私の手元にあるのは、いろいろと書き換えた村のステータス表だ。
現在は、ちょうど筆を置いたばかり。別に隠すものでもないので、私はお茶と入れ替わりにヘレナにステータス表を差し出した。
「だいたいやることが決まったわ。明日からはこんな感じで動いてもらおうと思うの」
とにこやかに言ってヘレナに押し付ければ、彼女は素直に受け取って紙へと視線を走らせる。
そのまま上から順に読むことしばらく。視線が下に向かうにつれて、彼女の表情が強張り、どんどん険しくなり――。
「………………殿下、これ、本気ですか?」
最後まで読み終えてから、彼女はたいそう沈痛な――王宮にいたときよりもいっそう気苦労の多そうな面持ちで、私を見てそう言った。
開拓村 ステータス(4年目仲秋)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【総人口】
総人口: 39人→46人(現在)↑
【人口内訳】
男性:25人(うち負傷4人)
女性:16人
子供:5人(2歳・7歳・7歳・8歳・10歳)
【職業】
狩人:5人
雑用/狩り支援:4人(うち負傷4人)
相談役/医者:0人
炊事/採集:10人(うち子供3人)
家事/子守り:3人
野営地派遣:6人
墓穴掘り:10人
護衛:4人(野営地道中護衛:2人、村護衛:2人)
御者:1人(野営地往復)
侍女:1人
領主:1人(うち子供1人)
【食糧生産】※村人1人あたり1日の消費量を1として換算
消費量:23/生産量:25(見込み)
【食糧備蓄】※村人1人あたり1日の消費量を1として換算
120(維持)
【薪】※村人1人あたり1日の消費量を1として換算
消費量:39/生産量:13(節約!)
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