第6話
エリザベスの研究施設から得た手がかりをもとに、俺たちはエヴァンの居場所を突き止めた。彼が隠れ家として使っている廃工場に向かう途中、夕日が沈み始め、空は深紅に染まっていた。緊張感が高まり、俺たちは決戦の覚悟を固めていた。
「ここがエヴァンの隠れ家か。準備はいいか?」と俺はリサに確認した。
「もちろん。エヴァンを見つけて、真実を突き止めるわ」とリサは力強く答えた。
廃工場は巨大で荒れ果てていた。崩れた壁や壊れた機械が散乱し、静寂の中に不気味な雰囲気が漂っている。俺たちは懐中電灯を手に持ち、慎重に内部へと進んだ。
廃工場の中は広く、無数の部屋や通路が迷路のように続いていた。足音が響く中、俺たちはエヴァンの痕跡を追った。
「エヴァンはここで何をしているのかしら」とリサが呟いた。
「おそらく、自分の過去と向き合っているんだろう。母親の遺志を継いで、でもその重みに押しつぶされそうになっているんだ」と俺は推測した。
しばらく進むと、遠くから微かな光が見えた。その光を目指して進むと、廃工場の奥深くに広がる大きな部屋に辿り着いた。そこには無数のモニターが並び、中央にはエヴァンが立っていた。
エヴァンは俺たちに気付くと、静かに振り返った。彼の目には深い悲しみと決意が宿っていた。
「アレックス、リサ。君たちがここまで来るとは思っていなかった」とエヴァンが口を開いた。
「エヴァン、俺たちは君の過去を知った。君が何をしていたのか、なぜここにいるのかも」と俺は答えた。
「母親の遺志を継いで、記憶を操作する技術を完成させようとしていたんだろう。でも、それが君を苦しめることになった」とリサが続けた。
エヴァンは一瞬目を閉じ、深く息を吸い込んだ。「そうだ。母の死後、俺は彼女の研究を引き継いだ。記憶を消すことで痛みから解放されると思った。でも、それは間違いだった。記憶を消すことは、痛みを隠すだけで、解決にはならない」
「エヴァン、君はそれに気付いたんだな。でも、まだ遅くはない。君の技術を正しい方向に使うことができるはずだ」と俺は言った。
エヴァンの目に希望の光が一瞬宿ったが、すぐに暗い表情に戻った。「でも、もう多くの人がこの技術によって苦しんでいる。俺の罪は償えない」
「そんなことはないわ。君が自分の過ちを認めて、正しいことをするなら、まだ救いはある」とリサが強く言った。
その時、突然モニターに警報が表示され、廃工場の警備システムが作動した。無数のドローンが部屋に侵入し、俺たちに襲いかかってきた。
「警備システムが作動した!?どうして…?」と俺は驚いた。
「俺がここに来る前に、仕掛けておいたんだ。誰かが侵入した時のために…」とエヴァンが答える。
俺たちは即座に対応し、ドローンを撃退するために戦闘態勢に入った。廃工場の中で激しい戦闘が繰り広げられる。
「リサ、エヴァンを守れ!俺がドローンを片付ける!」と俺は叫んだ。
「分かった!エヴァン、ここから出るわよ!」とリサがエヴァンを守りながら出口に向かう。
俺はドローンを次々に撃ち落とし、廃工場内での戦闘を続けた。敵の数は多いが、俺たちは決して諦めない。
戦闘が終わると、廃工場の中は静まり返った。無数のドローンが破壊され、煙が立ち込めている。俺たちは無事に戦いを終え、再びエヴァンの元に戻った。
「エヴァン、大丈夫か?」と俺は尋ねた。
「…ああ、ありがとう。君たちのおかげで助かった」とエヴァンが答えた。
「これからは、君の技術を正しい方向に使おう。母親の遺志を継いで、記憶を操作する技術を人々のために使うんだ」と俺は言った。
エヴァンは深く頷き、「そうだな。俺の過ちを償うために、これからは正しいことをする」と決意を新たにした。
エヴァンとの対決を終え、俺たちは新たな一歩を踏み出した。記憶を操作する技術は、正しく使えば多くの人々を救うことができる。そのために、エヴァンと共に新しい道を歩む決意をした。
「これからも、俺たちは一緒に戦うんだ。過去の痛みを乗り越え、未来を切り開くために」と俺は言った。
「そうね。未来は私たちの手にかかっているわ」とリサが微笑んだ。
俺たちはエヴァンと共に、新たな冒険と挑戦に向かって歩き始めた。過去を受け入れ、未来を築くために。
【完結】「潜在意識の迷宮」 湊 マチ @minatomachi
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