第5話
翌日、俺たちはエリザベス・ストーンの研究施設に向かった。施設は郊外の森の中にひっそりと佇んでおり、長い間放置されていた様子が伺えた。外観は廃墟のようで、ツタが絡み、窓は割れているが、内部にはまだ多くの秘密が隠されているに違いない。
「ここがエリザベスの研究施設か…。中に入ってみよう」と俺は決意を固め、リサと共に施設の扉を押し開けた。
内部は薄暗く、ほこりが舞っている。壁には研究に使われた機器や資料が散乱しているが、ほとんどは破壊されている。俺たちは懐中電灯を手に持ち、慎重に進んでいった。
「ここにエヴァンが何かを残しているはずだ。手がかりを見つけよう」と俺はリサに言った。
リサは頷き、「まずは中央のラボを調べるべきね。エリザベスの主要な研究が行われていた場所だから」と答えた。
俺たちはラボに向かい、そこにある機器や資料を調べ始めた。机の上にはエリザベスの手書きのノートが散乱しており、彼女の研究の詳細が書かれている。
リサが一冊のノートを拾い上げ、「これを見て、アレックス。エリザベスの研究ノートよ。彼女の考えや実験の記録が書かれている」と言った。
俺はノートを手に取り、中を確認した。そこには、エリザベスが記憶の改竄と消去の技術について詳細に記していた。
「エリザベスは、記憶を操作することで精神的な痛みを和らげる方法を探していたんだ。でも、その過程で多くの倫理的な問題に直面していた」と俺は読みながら言った。
「そうね。そして、彼女の死後、エヴァンがその技術を引き継いでいたのね」とリサが続けた。
ノートには、エヴァンの名前も頻繁に登場しており、彼が母親の研究をどのように受け継ぎ、発展させたかが記されていた。
突然、リサが壁の一部に違和感を感じ、「アレックス、この壁の裏に何かがあるみたい」と言った。
俺は壁を調べ、隠し扉を見つけた。扉を開けると、そこにはさらに深い地下室が広がっていた。地下室の奥には、エリザベスが隠した研究の核心が待っているに違いない。
「行こう。ここに全ての答えがあるはずだ」と俺は言い、リサと共に地下室に足を踏み入れた。
地下室は暗く、冷たい空気が漂っている。懐中電灯の光が壁に映り、そこにはエリザベスが残した数々のデータが保管されていた。古いコンピュータがまだ動作しており、俺たちはそれを調べ始めた。
「これがエリザベスの最後のメッセージかもしれない」と俺は言い、コンピュータを起動した。
画面にエリザベスのビデオメッセージが現れ、彼女の声が響いた。
エリザベス: 「エヴァン、もしこのメッセージを見ているのなら、私はもうこの世にはいないでしょう。あなたが私の研究を引き継いでくれることを願っています。でも、記憶を操作する技術は非常に危険です。正しく使わなければ、心を壊してしまうこともあるわ」
エリザベスの声には、母親としての愛情と科学者としての警告が込められていた。
エリザベス: 「私はあなたを信じています。あなたなら、私の過ちを正してくれるでしょう。どうか、自分を見失わないで」
俺とリサはそのメッセージを聞きながら、エヴァンの苦悩と決意を感じ取った。
「エリザベスは、エヴァンが技術を正しく使うことを願っていたんだ。そして、彼が自分を見失わないようにと」と俺は呟いた。
「そうね。エヴァンもきっと、母親の言葉に従っていたはず。でも、途中で迷ってしまったのかもしれない」とリサが答えた。
俺たちはエリザベスの研究施設で得た手がかりを元に、エヴァンの行動の真意を理解し、彼の過ちを正すための方法を考え始めた。
「次は、エヴァンと直接話をする必要がある。彼を見つけて、全てを解決しよう」と俺は決意を新たにした。
「そうね。彼を見つけて、彼の心を救うのよ」とリサも同意した。
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