3% バルガー山脈(3)
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
あぁぁぁぁ楽しぃぃぃぃ!!
なんだこの開放感!?いや、ゲームでも大空を移動するアレがあるが、そんなレベルじゃない!!
『ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!フゥゥゥゥゥ!!』
何も考えていない。ただただ羽音が鳴り渡っていた。
周囲を警戒はしつつも、その快感を味わっている。夢の中で空を自由に飛べる!そんな快感だ!!ビィィィィィィィィィ!!
原付や自転車で走るようなこの爽快感が堪らない!!ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
『まぁ.....うるさいのが難点だな』
こんな音で街中を走ろうものなら、迷惑極まりない野郎だ。深夜に我が道のように音を立てるバイクの様に、恐らく、密かに恨まれるだろう。
おっと、紹介をわすれていた。
さっき手に入れたばかりのコイツのステータスを紹介しようか。
ピロッ!
【バルガーヴェスパニア ランクC】
≪ステータス≫
HP 233
MP 35
ATK 152
DFE 72
MDF 123
SPD 82
≪固有スキル ヴェスパニア≫
【毒針】...突属性の攻撃に毒を付与する。
【統率本能】...熟練度が上がるほどに支配力が上昇する。
【獰猛化】...HPが20%以下になると発動。ATKとSPDが50Pづつ上がる。
【羽音】...飛行時、敵に気づかれやすくなる。
正直パッとしない性能だった。明らかなデバフ付きだしな?一番下ァ!
やはり≪統率本能≫、統率系のスキルがあった。因みにザトウヌシこと、ハベルタス種にもコレが備わっている。
『ヴェスパニアの女王はザトウヌシみたいな奴じゃないよな?』
獰猛化も同様にハベルタスが持っていた。
正直敵がこのスキルを持っていても、攻撃は基本避けるから問題ない。問題は連携による回避やコンボで、それをされると俺は数に押されて負ける。
毒針は毒牙の別バージョン。羽音はデバフ。
『引き継げたスキルは......これだけか』
ピロッ!
≪固有スキル スタルタス≫
【壁歩】...僅かな時間壁が歩ける。
≪ユニークスキル フローター≫
【浮遊糸】... MPを消費し、僅かな時間空中を漂う特殊な糸を生成する。
【根性】...HPを消費し、スキルの限界値を僅かな時間超えることが出来る。
≪固有スキル ペンドピード≫
【多足】...脚部の痛覚を無効化する。また、HPを消費して自己再生を行う。
【鋭い猛毒牙】...牙の攻撃に猛毒を付与する。また、牙での攻撃時に相手に追加のダメージを与える。
≪固有スキル ローリーポーリー≫
【収納】...持てるアイテムが増える。
必然的に汎用性の高そうな六つが残った。これこそがこのゲームの肝となるシステムだった。
ダンゴムシ時代の≪弾丸移動≫みたいな、効果が限定的なスキルは強い代わりに、引き継ぎが難しいデメリットがあるってわけだ。
逆に引き継ぎやすいスキルはその分効果も弱く、役に立たないことがほとんどってわけだな。
『ユニークススキルは引き継ぎやすいのか?』
もしかしたらそういう線引きがされているかもしれない。
ユニークスキルは強くて引き継ぎやすい。
ちなみに最初から持ってる≪アルマ≫と≪攻略者≫のスキルは効果としてはべらぼうに強いが、完全に俺の固有スキルらしい。
この感じだと何をしようが消えることはない。いわゆる最低保証ってやつだろう。
『んで、収納?コイツのどこに...収納すんの!?犬みたいに口で運ぶのかぁ?』
ダンゴムシは丸まった内側に収納するスペースがあったが、巨大な蜂の様な魔物のどこに収納する場所があるのか?
なんて思っていたが、どうやら飛行時に脚に持てる量が増えるらしい。
軽く力尽きた同胞を持ってみると、想像では一匹二匹が限界だが、何と四匹を同時に持つことに成功してしまった!
『通常の二倍程度持てるのか...!?収納、この子......優秀すぎない??』
つまり、これまで通り
あとは地味に鋭い毒牙が引き継げたのは助かった。毎回毎回ケツを向けて攻撃とかやってられん!!
追加のダメージ量も結構ありそうだったしな。
『まぁ......毒牙使うと体液が口に嫌でも入るからクッソ不快なんだけどな?マズイし!』
とりあえずはバルカの器、せめて人型の器が手に入るまではコツコツと引き継いでいこう。こんな状態じゃまともに人前に立てやしない。
『見た目だけでバトル開始の合図だもんな』
雑談の様な独り言を終えて飛び立とうとする。
飛ばない......飛べない?
欲張りな俺は四体のバルガーヴェスパニアを抱えて飛ぼうとした。しかし、低空飛行が限界で、それ以上は飛べなかった。
≪収納≫はあくまでポケットを広げるスキルらしい。例えポケットに車が収納できても、人間にそれを持ち運ぶ力はない。
『.........一匹で我慢するか』
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!
選りすぐりの一匹を大事に抱えると、この場所を後にするべく羽を広げて飛び立った。
『よし!一匹までなら機動力も問題ない』
今いるここは中層だ。とりあえず、上層のマップを完全に埋めたい。
戻り道を探して周辺を探索しているが、上層に繋がる道はそう簡単に見つかりはしない。中層は上層以上に高低差が激しく、天井もかなり高い場所だった。
マップもほとんどが黒塗りで不明な箇所が多く、中層のマップを埋めない限り、上層には辿り着けない雰囲気が漂っていた。
一応、上層に続く道を一つだけ知っているが、そこにいけば早速手に入れた残機を使う羽目になりそうだ。
『渓谷まで戻って登る?無謀なのはいけないと思います!』
そんなことをぶつぶつ呟いていたら見つかった。岐路だ!!
迷わず右!上層の道を選ぶ。
左には下層に通じる通路があるわけだが、明らかに道幅が広かった。下層の規模感をふと想像する。考えただけで恐ろしいぃ!!
『なぁ〜マップの埋まる範囲もっと拡大してくれよな〜熟練度とかじゃなくて、レベルアップしてくれよ〜進化しておくれよ〜』
一体誰に出したオーダーなのだろうか?そんな願いは虚しく消える。
マップが埋まる範囲がどうにも歯痒い!!
ランドマークに触れたら一気に解放とかしてくれればいいのにな!?
この世界の地図とか発見したら一気に埋まるとかあんのかなぁ?なんか、ありそうだな。てか、それじゃね?これ......意味ある?
『あー...とりあえず戻ってこれた......ひでぇ目にあった!』
なんとか上層に戻って来た。マップを見る限り、ここはまた別の場所のようだ。
壁を何枚か挟んだ先が、ダンゴムシ形態でゴロゴロと惰性で転がっていた長い通路だろう。その通路の長さに麻痺して渓谷へ落ちたというのは言い訳か?
『あれはただの前方不注意だ......次は落ちない』
今は羽があるから安心感がレベチ。
あの時は自動運転のように何にも考えずに走っていたのが悪い!!
ブゥゥゥゥゥゥゥ!
けたたましく羽音を立てながら進んでいく。
その道の中で数多くの魔物と遭遇したが、全員が様子を見て留まるか、大人しく逃げていった。
『流石ランクBの体と≪統率本能≫のスキル持ちだな!』
俺を襲えば仲間のヴェスパニアが確実に援護に来る!そのことを恐れてか、奴らはソロの俺にすら手を出してこないってわけだ。
逆にこのうるさいエンジン音のような羽音が、歩行者に対して、
『俺!車!ここにいるぜぇぇぇぇぇ!!』
と知らせて、衝突事故を防ぐみたいな状態になっていた。原付とかがやけにうるさいのはそれも要因なのだろう。
『気楽だな〜』
そんなことを考えながらマップを埋めていく。
ある程度埋めた結果分かったことだが、どうやらこの山脈はいくつかのブロックで構成されたダンジョンのようだ。
今のところ発見したブロックは最上層、上層、中層、下層の四つ。
その四つをメインに、さらに小さな層や空間、それこそ上層と中層にあった狭間のような場所が繋ぎのように存在している。
ここまでで言えることは、間違いなくこのダンジョンは序盤にあっていい難易度じゃない!!
『特にあの渓谷!あそこのステージレベルだけバグり散らかしてるだろ!!』
しかし、それと同時にこの場所が序盤のダンジョンだと思わせる要素もあった。それは、俺が若干トラウマになっているあの渓谷だ。
あの渓谷から先は確実にステージレベルが違った。
文字通り桁が違う世界、ステージだ。
比較的自身のスキルやシステムを理解した、高度な戦略性を持った敵が雑魚として存在する現実。
『軽く脅威度Sが序盤の雑魚として出現する恐怖が分かるか??分かるよなぁ??』
闘鬼バルカやザトウヌシといったヤバヤバ要素は確かにあったものの、あれらは半ば恐怖演出的ともいえるボスたちだ。
中層を爆走する巨大なムカデの親玉も、徘徊者的な要素でしかなかった。
ステージの先へ進むのに、必ずしも倒す必要のないボスってことだ。つまり!今いるこの場所はこの世界でも比較的優しい、序盤に相応しいダンジョンと言えるわけになる!!
『んで、あの渓谷は同じダンジョンでも一つレベルが上のブロックってことだろうよ』
このダンジョン、要素としては四階層しかないかもしれない。しかし、ここはそういった更に細かいブロックがその中に点在し、かなりスリルのあるダンジョンに仕上がっていた。
オープンワールドだと当たり前だが、序盤に終盤の敵と戦える環境にいるってことだ。
バッタリと最強に遭遇することもある。
【パンパカパーン!!】
『うぉ!?ああ、埋まったのか...!?』
【バルガー山脈 上層部のマッピングがお!お!終わりましたよぉぉぉ!!】
『今日はなんだかノリノリだな?』
ついついそう思ってしまった。この絶妙なリアクションを期待している俺がいるのかもしれない。
進捗に応じた報酬は今のところない。
スキルの使用回数による報酬?レベルアップ?これもよく分からないが、≪ターゲットフォーカスlv.Ⅰ≫と書いてある以上なんらかしら存在するってことだろう。
一応、魔物を見つけたら積極的に≪ターゲットフォーカス≫を使ってロックオンしてみるけど......≪Lv.Ⅰ≫から動きはないな。
『レベルが上がったら何があるんだろうな?』
上層までのマッピングが終わり、そんなことを考えながら再び中層に戻っていく。
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