第二部 エンディング

第二部 エンディング


十五、愛とは


(ララ、起きてる??よね・・・君、ずっと泣いてたもんね!!さ、もう着いたよ、降りて!!)と、ペガサス姿のフラウが言った。

「フラウ・・・」と、クラリスがペガサス姿のフラウの背から降りて、問う。

「どうして、あなたまでユニコーン・・・まあ、ペガサスだけど、‥の姿をしているの??」と、クラリス。

(君の命を救うためにね、僕、短剣で自分の心臓を刺したんだ)と、フラウ。

「え・・・?!?!?」と、クラリス。二人は、ジェハ神の館の目の前の庭に下り立っていた。

「やあ、ようこそ、お嬢さん」と、その時、クラリスの横から、男性の声がした。

「誰・・・?」

(ララ、敵じゃない。僕をかくまってくれて、手紙を届けてくれていた、ジェハ神という神様だ)と、フラウ。

「ジェハ神・・・・??手紙を届けてくれていた人・・・?」と、クラリス。

「そうなんだ、お嬢さん。いや、フラウ君の奥様」と、ジェハ神が悲しそうに微笑む。

「寒いでしょう、屋敷の中に入りましょう」

「・・・」クラリスは、言われるがまま、ペガサス姿のフラウと一緒に、ジェハ神に続いて、屋敷の中に入った。

 屋敷の3階についてから、ジェハ神が、いろいろとクラリスに説明した。

 天界で自殺したフラウは、もう満月の夜と新月の夜しか、人間の姿には戻れないこと、あとは偉い神々様に仕える身となること、そして、それは永遠の罰なのだということを。

 ――それでも、君はフラウ君のそばにいてくれる??

 と、ジェハ神は言った。

 クラリスは、涙を流しながら、

「はい」

 とだけ言って、また泣いた。

「だって、フラウは私の夫でしたし、私は彼を愛していますから」と言って、クラリスはペガサス姿のフラウの背中のたてがみを優しくなでた。

(ありがとう、ララ)と言って、ペガサス姿のフラウは、涙を流しているように見えた。

「うん、君を確実に助けるには、これしかなくてね」と、ジェハ神が言った。

「君とフラウ君は、今後、晴れ晴れ堂々として、天国で暮らせる。僕から、天国をつかさどる神様に、事情は話しておいた。天国にも、そういう君たちにぴったりな場所がある。安心してほしい」

「・・・分かりました。あの、それと・・・。私と別れてから、16人の仲間は、どうなったんでしょうか」と、ララが聞く。

「えーとね・・・この大きな鏡を見ると、下界のことが映し出されるんだけどね・・・。天界の時間の進み方と、下界の時間の流れは、ほぼ一緒なのだが・・・何か大きな変化があったら、僕から天国の君たちのもとに知らせるね!」と、ジェハ神。

「ありがとうございます」と、クラリス。

(ララ、今日はもう寝よう。疲れたでしょ?)と、フラウが言った。

「そうね、フラウ、ありがとう」と言って、クラリスは、ジェハ神の館の、客室へと通された。だが、その前に、

「あの、その前に、夫が使っていた部屋を見せてください」と言った。

「?いいよ、別に」と、ジェハ神が言った。

 案内され、人間だったフラウが使っていた部屋を見たクラリスは、その部屋の一隅に、自分からの手紙の束が大切そうにしまってあるのを見た。

 それを、かがんで手に取る。

「ありがとう、フラウ・・・」と言う。


「愛しいララへ


 今から僕は人間の身、人間としての自由を捨て、君を助けに行く。

 君がたとえ僕のそばにいてくれなくなっても、僕は君の命を助ける。

 もう決めたことだ。

 さようなら、かもしれないし、これかもよろしく、かもしれない。


 だけど、これだけは言わせてほしい。ずっと君を愛していた。見守っていた。そして、これからも、君のそばにいたい。


                    想空からの最期の手紙 フラウより」



 という内容だった。

「フラウ、私はあなたのそばにずっといるわ。ずっといて、あなたと共に、この世の終わりを見つめるわ」とだけ、ララはぽつりと言ったのだった。

十六、その後のこと


 フラウとララ夫妻は、ジェハ神に見送られ、天国のある地域へと送られた。そこで、幸せに世の末まで暮らしたという。

 

 ララが一時期短い間だがすごした、コロニー第8のユニコーンたちは、全員が助かった。

 悪神シェムハザの悪の手が東リラへとのびる前に、時の賢者たちが倒したのである。

 

 こうして、この物語も一応の結末を迎えることとなる。


 アレクサンドリア夫妻の二人は子宝にも恵まれた。3人の子ができ、夫妻は愛情を込めて育てた。


 さすれば汝、えにしありて、恋のこよないかたみ、永遠(とわ)の契りとなりけり。

 天界にて結ばれんこと望みしが、

「いやいや、望みをかなえる道はあらず。

 あまりに遠い隔たりであり、

 高いみ空の星のようだ、

 高いところで美しく光っている」

 星を取ろうと望むものはない。

 きらびやかな光を楽しむだけだ。

 晴れた夜ごとに、空を仰げば、

 うっとりとしないものはなかりけり。

 はて、この二人に、連理の枝の、救いやありなむ。



 二人の連理の枝には、救いがあったということか、クラリスは、その生涯、フラウのそばを離れることがなかったという。

                                              ≪完≫




 

 

 





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黄泉のクラリス ~想空からの手紙~ 榊原 梦子 @fdsjka687

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