第5話 どんな仕事が向いているのか
また一人、知り合いが結婚したという話が舞い降りてきた。
高校の時から顔がかっこいいやつで、指定校推薦で良い大学に入学したんだっけ。
普通に大学卒業したら就職して、ある程度の収入をもらって、その間に彼女も作ってようやく結婚という形だろう。
さて、俺はまだスタートラインにすら立ててないわけだが、どんな仕事が向いているのだろうか?
どんな仕事がしたいのだろうか?
まず怒られるとすぐに傷つくし、簡単に鬱になってしまうような人間。
自分がすぐに活躍できないとわかると、どうでも良くなってすぐに諦めちゃうし、努力して上に行こうという向上心は全くない。
要は根性なしだ。
この情報を元に考えると、俺が向いている仕事は……。
・怒られない優しい環境。
・努力しなくても活躍できるような得意な事。
という事になる。
……そんな仕事あるか?
そもそも世の中“できる”のレベルが高い。
毎日しているオナニーですら、上には上がいるくらいに世の中レベルが高い。
そんな世の中で何も努力せずに活躍できるような仕事なんてあるはずがないし、周りが5年間仕事してきた時間を取り戻すとなれば努力なしでは無理だ。
では資格ではどうだ?
例えば俺は日商簿記二級を持っている。
求人票を見てみると、日商簿記三級以上必須と書かれていて「おっ、良いんじゃね?」と思ったことも何度もある。
しかし実態はこうだ。
★必須条件
・日商簿記三級以上お持ちの方。
・経理関係の仕事を3年以上経験のある方。
うーん、無理。
職歴0ではやっぱり求められていない。
それに経理って仕事自体、大雑把な俺じゃ向いてないと思う。
では気を取り直して、やりたい仕事って何だろうか?
好きなのは多分、体を動かすようなことだと思う。
パソコンが割と使えるからそういうのも得意かもしれない。
嫌いなのはスピーチ用のPower Pointを作る事。
人と比べて落ち込んで結果的にどうでも良くなって大雑把に事を進めてしまうという事が良くあるから、大学時代こういうのを作る時は適当でさっさと終わらせようとしてて内容激薄で聞いてる人の反応が薄かった。
パソコンが使えるといっても人に見せるようなモノを作るのが嫌い。
なんていうかな……ある程度のクオリティーを求められるというか……そのクオリティーとやらが人によって違くて、明確じゃない暗黙のルールを求められるのが嫌い……みたいな?
まあとにかく、Power Pointは本気で嫌いで人前でその出来損ないのモノを見せながらスピーチするのも嫌い。
なんだか自己分析みたいになってきたな。
まあ、それも大事な事か。
自分の性格とかってこの年齢になってくると大体理解できてる。
例えば俺は常に人よりも前を歩いていたいという気持ちがある。
それは俺が人と自分を比べてしまうという事にも関係してくるのだが、自分が前を歩いている上で後ろを歩いている人を助けたいのだ。
悪い言い方をすると優越感に浸りたい。
良い言い方をすると手を差し伸べたい。
だけど自分がその場所で人よりも前を歩けないとわかると途端にどうでも良くなってしまう。
どうでも良くなると途端に興味が薄れて、違うことで勝とうとする。
努力できない逃げ腰な性格。
さて、今の自分はもう周りより圧倒的に後ろにいる状態だ。
それを取り返そうとするのは性格上不可能。
だからどうでも良くなってこんなところまで来てしまった。
でも、もうどうでもいいなんて言ってられないような年齢。
動き出さないと人生が終わるきわっきわの場所。
なのにまだ怖くて動けない。
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