hidarite
ANNZY
一話完結
失って気付くことがある。
左手を失った。材木の切り出し中、「あっ」とも思えぬ瞬間に何か塊が木材の進行方向とは逆に飛んでいくのが見えた。感覚だけがあって痛みなど無いに等しく、多くの鮮血がキャンバスに殴りつけたように辺りを染めた。気がつくと病床であった。あることが当たり前であった左手は手首に包帯が巻いてありそこから先は何もなかった。太陽にかざしてみたが生えてくるわけでも無く、まざまざと左手がないことを見せつけられた。医者が言うには左手は飛んでいった後、稼働していた破砕機によって木っ端微塵になったらしい。本当についてない。ここ数日欠陥品の体で過ごしてみたが、利き手じゃないといえ日常生活でどれだけ使っていたか痛感した。こうしてタイピングするのにも片手しか使えないと言うのは本当に不便である。神様がもしいるのであれば摩訶不思議な力でもう一度この手を生やしてほしいと本気で思うのだ。そしていつだって大切なものは大切であるほどに失ってから本当の価値に気付く。今も左指が痛む、無いものが痛む。体は後退したのかもしれないが、心だけは前進していきたい。
hidarite ANNZY @ANNZY
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