第22話 まるで漫画みてぇだな!

「ふんふふーんいやぁ、良いのかぬぇ?こんな引きでぇ。」

 

 俺がなんでハイテンションかつ語尾がおかしいのか。それはこのカードのせいさ。

 "引き寄せる者・ミキ"。

 コスト四で種族はガイア・レイスと言うレイスのアップデート版。能力は登場時に山札からレイスを一枚選んで手札に加える。

 これだけならそれだけかと思うが、なんとその後に手札を一枚捨てればタダ出しが出来てしまう。レイスという限定的な枠組みだが、山札からサーチできるのは神。控えめにも神。大袈裟に言えばブリリアントロイヤルゴッド。しかも種族以外の制限無しと来た。


 いやぁ、ミキ以外にもガイア・レイスは当てられたから、デッキ作成が捗りますなぁ。








 ムッフッフッ…………中々の完成度…………!


「レイキーッ!ご飯ー!」

「はぁーい!」

 今日の母さんやけに不機嫌だな?




「今日は………………」


 階段から降りて一階のダイニングに行くと、母さんと父さんともう一人、知らん人がいた。

 俺がその人をボケッと眺めていると、突然ソイツが笑い出した。


「アッハッハッハッ!」

「????」

「覚えてないかぁー。まぁ無理もないか。

お前のお兄ちゃんの夾刃さんだぞぉー?」

「はあ?」

 なに言ってんだコイツ?

「そんな反応だと悲しいなぁ?レイキが三歳の時に家を出ちゃったから仕方ないかぁー。」


「ほら、食べちゃいな。食べたらちょっと話すわよ。」

 母さんに促されるまま、無言の食事は恙無く終わった。というかこの二人が受け入れてるってことはマジなんか?



「で?誰?」

「こら!」

 俺が親指で指を指すと母さんからお叱りを受けた。

「おっとー、傷付くなぁー。」

「……困惑するのは分かる。それに、お前に兄の痕跡を見せなかったのには理由があるんだ。」

 父さんがやけに真剣そうに話す。

「?」

「キョウヤ、後は自分の口から言いなさい。お前にはその責任がある。」

「…………分かったよぉ。レイキ、ちょっと刻まないか?」

「………………………乗った。」

 このままでも埒が明かないし、お互い気まずい。それならデュエルしながらの方が意外とすんなり受け入れられるかもしれない。




「「ビートを刻め。」」

 なんだ?あのキョウヤってやつ、雰囲気が変わったな。



キョウヤ一ターン目


「俺のターン、エレメントをセット。ターンエンド。」



レイキ一ターン目


「ドロー、エレメント。浮遊する魂をクリエート。ターンエンド。」



キョウヤ二ターン目


「俺のターンドロー、エレメントをセット。コストニでデプロイ!"孤独な沼地"!」

 な!?また新ギミックか!?リアフィールドだとかなりショッキングだったろうな。イラストR-15だろ。

「ターンエンド。」



レイキ二ターン目


 注意しないとな。

「ドロー、エレメント。」

「効果発動。」

「ん?」

「孤独な沼地の効果により、各ターンエレメントが置かれる度にお互いの山札の上から二枚をセメタリーに。」

 ゲェ、メンド…………


「ニコストで影踏・トビマルをクリエート。こいつはスタンバイ時、相手がそのターンに置いたマナを使用不可にする。」

「へぇ。」

「ターンエンド。」



キョウヤ三ターン目


「俺のターンドロー、エレメントをセット。沼地の効果は随時発動。実は俺諜報員なんだ。コスト二でデクレイション、"汚染ミスト"。

 セメタリーにあるコスト二以下かつキラー・スワンプを一体クリエート。俺は"ポイズンウッド"を選択。」

「諜報員ね…………ん?」

「ターンエンド。」


 あ、え?諜報員?スパイってこと?

「どうした?手が止まってるよ?」

「あ、あぁ。スパイってことね。」

「そゆこと。」

 はーん。



レイキ三ターン目


「ドロー、エレメント。バット・バードをクリエート。トラップをセットしてターンエンド。」



キョウヤ四ターン目

「俺のターンドロー、エレメントをセット。スパイと言ってもあれだよ、怪しい奴の監視とか処理ね。この国の敵とかじゃないから。」

「これで、セメタリーが八か………大変そうだなその仕事。」

「まぁ、そうだね。でもそれだけ実力を認められたってわけ。コスト三で"デンジャースケルトン"をクリエート。」

 毒で汚染されて紫色のスケルトンとかグロすぎだろ………………

「登場時効果で山札からスペルを一枚手札に加える。」

 スケルトンとは思えない能力だぁ…………

「更にセメタリーにカードが六枚以上あればもう一枚。」

 やっぱりか………読みは当たったな。

「ポイズンウッドで攻撃。」

「ライフ。」

レイキライフ六→五

「ターンエンド。」



レイキ四ターン目


「ドロー、エレメント。コスト三で引き寄せる者・ミキをクリエート。効果で山札からレイスを選択してハンドを捨ててそいつを踏み倒し。

 見果てぬ闇・ハッピースマイリー。さらに効果で自分と相手は手札が五枚になるようにカードをドロー。自分が三枚ドローしたら手札から種族レイスのファミリアをタダでクリエート出来る。相手が三枚ドローした時自分の山札の上から三枚をエレメントへ。

 更にコスト四でカッターガールをクリエート。」

「おお、中々の…………」

「カッターガールで攻撃。その時に能力発動。相手の手札を捨てさせ、それがファミリアなら山札からエレメントを一枚置く。」

 成功!

「フゥ!痺れるね!」

「そのままポイズンウッドを攻撃!」

「良いのかい?。」

「いや、合ってる。」

「把握してたか。ポイズンウッドの効果でバトル相手も破壊。」

「その時トラップ発動!」

「何?」

「"監獄からの解放"。お互いのセメタリーにあるカードを山札に戻してシャッフルだ。」

「………やるね。」

 っし!キョウヤの顔が歪んだ。けへへ、チョロいもんだぜ。

「ターンエンド。」



キョウヤ五ターン目


「俺のターンドロー、エレメントをセット。今日帰ってきたのは理由があってね。トラップをセットしてコスト四でクリエート。沼地の支配者・アーミア。」

 おう、スタイルは良いけど髑髏を被った女だ。

「登場時効果で相手のパワー三千以下のファミリアを破壊。トビマルだ。」

 ま、仕方ない。

「更に孤独な沼地がある場合、パワー五千以下のファミリアを破壊。ハッピースマイリーだ。」


 チッ………マズいぞ…………そもそもレイスはパワーの値が低い。それをシデムシやハーデンこんにゃくで補ってたが、ガイア・レイスの登場に浮かれて抜いたばっかだ。うちの主戦力のハッピースマイリーがやられたとなると、プロテクトされたら勝てねぇ。


「理由はお前だ、レイキ。スカウトしに来た。デンジャースケルトンで攻撃。」

「ライフ。」

レイキライフ五→四

「今決断しろとは言わない。難しいだろうからな。ターンエンド。」



レイキ五ターン目


「ドロー、エレメント。………は?スカウト?」

「あぁ。」

「……………落武者ウエモン、宵を生きるもの・首吊り男、団結する集団無意識をクリエート。ウエモンの効果で一枚捨てろ。」

「残念、今捨てたカードの効果発動。バトルフィールド以外からセメタリーに送られた時、タダ出し。"毒沼の番人・ヴォイド"。登場時効果で、ターンの数だけ山札の上からセメタリーに送り、セメタリーの数以下のコストになるようにファミリアを選んで破壊。

 俺とお前で五ターンずつ。セメタリーは十二枚だ。首吊り男、ウエモン、バットバードを破壊。」

「クソッ………」

 後は集団無意識とミキと魂だけか…………相手はヴォイド、アーミア、スケルトン。バトルで勝てねぇ。

「ターンエンド。」




キョウヤ六ターン目


「俺のターンドロー、エレメントをセット。スカウトの理由もある。レイキ、お前も持ってるだろ?

 コスト六でクリエート!"大いなる翼・スピカ"!」

 な………ユニバースクラウンだと!?

「効果により、俺とお前のファミリアは全て強制バトルだ。」

「な!」

 い、一瞬で更地かよ……………!

「これによりバトルした数分各プレイヤーはドロー。さ、三枚引くと良い。」

 ぐあっ!ハッピースマイリーを初使用した時のハシラの気持ちを痛感したぜ!

「そしてトラップ発動。手札を二枚捨てることで、自分のファミリア一体をスピード状態に。もちろんスピカだ。」

「…………ハハ。」

 終わったわ。

「トドメだ。」

レイキライフ四→0





「レイキ、返事は明後日まで待つ。もし、了承してくれるなら、ここに来い。」

 キョウヤはメモを置いた。

「キョウヤ!折角帰ったんだから………!」

「母さん。」

 何かを言いかける母さんを父さんが止めた。

 キョウヤはそれを一瞥した後、何も言わずに家から出ていった。

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