第6話 永遠の友情
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ……
廊下に杖の音が響く。
面倒だけど、これがないと真っすぐ歩けない。
B子もC子も、同じ。
コツ、コツ、コツ。
私は、杖なしでは歩くのが困難になった。
あの日の朝から。
友情のおまじないをしてから、一か月は経つのかな。
あれから、ずっとこの調子。
翌朝起きた時から、ずっと。
そう、おまじないの効果。
間違いなく、あのおまじないの御利益。
おまじないのおかげで、私達三人はずっと一緒。
望んだとおり、永遠に一緒。
友情のおまじないに書いてあった、「親友三人がずっと一緒にいられる」。
確かに、中学卒業後も、ずっと三人一緒にいられる。
この身体なら。
ずっと永遠に、この身体で。
おまじないの翌朝、起きてリビングに行こうとした時、違和感に気づいた。
歩きづらい、足がもつれる感じ。
壁をつたい、何とかリビングに行って、支度を済ませた。
学校へ行くため靴を履こうとしたら……
サイズが合わない。
両方とも、靴のサイズが合わない。
びっこを引きながら、なんとか校門に着いた。
遅刻ギリギリで、何とか着いた。
そしたら前に、びっこ引いてる姿が見えた。
C子だった。
教室に入ると、もうB子は座ってた。
休憩時間、周りを気にしながらB子が席をたった。
その姿は、びっこを引いていた。
放課後、B子とC子に声をかけた。
話をしたら、朝から三人とも同じだった。
びっこを引いて、真っすぐ歩けない。
帰り、三人で下駄箱に行って、靴を履こうとした。
他の二人も、履きにくそうだった。
もしかして、これって……
「ねえ、靴、交換してみよ」
二人に言ったら、すんなりと交換することになった。
変なこと言いだすと笑われるかと思ったけど、そんなことはなかった。
二人は素直に靴を出した。
何回か、靴を交換して履きなおしてみる。
そして、あった。
靴が、ピッタリと入った。
もう、間違いない。
足が、入れ替わったのだ。
三人の足が、それぞれ入れ替わったのだ。
ばらばらに、足が入れ替わってしまったんだ。
私の右足がB子に、左足はC子に。
B子の右足がC子に、左足は私に。
C子の右足が私に、左足はB子に。
それぞれ、入れ替わってしまった。
私は、B子の右足と、C子の左足で。
B子は、C子の右足と、私の左足で。
C子は、私の右足と、B子の左足で。
そう、私達三人は、ずっと一緒に、どんな上り坂も乗り越えていける。
友情のおまじないに、書いてあったとおり。
三人は永遠に一緒だ。
でも、こんなはずじゃなかった。
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ……
今、私は図書館に来ている。
市立の図書館に。
中高生向けの小説コーナーで立ち止まる。
何冊か、面白そうな小説を立ち読みする。
いや、面白そうな小説を探している。
目的の小説が見つかるまで、立ち読みを繰り返す。
ようやく、その小説をみつけた。
私たち三人みたいな女子中学生が、興味を引くホラー小説を。
周りを見る。近くにいる学生が、周りからいなくなるまで待つ。
ちょうど、いなくなった。
ポケットから、折られた紙を取り出して、その小説に挟む。
そのまま、そっと元の本棚に戻す。
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ……
なかなか出口に辿り着けない。
後ろで、ひそひそと声が聞こえる。
「ねえ、このホラー小説、題名が面白そうじゃない」
「えー、そう? ありきたりな気がするけど。どう思う?」
「良いんじゃない。どうせタダで借りるんだから、読んでみたら」
ちょうど、三人の女の子が喋っている。
振り返ると、女の子が三人いる。
とっても仲良さそうな女の子が三人、
私の選んだホラー小説を、手に取りながら、喋っている。
三人とも、親友同士みたい。
私は、心から願う。
――その本の、すべての頁をみてください。
――必ず、最後の頁までみてください。
その本の、すべての頁をみてください―― かながた @kanagata
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます