自分は短歌の知識とかない、捻くれ者で。こうしたノスタルジーな文章を見るたびに「舗装されていない砂埃の道、沢山の虫。思い出を美化しすぎては駄目だ」と、ツッコミを入れたくなりますが。
・・しかし、この作者の句は余計な気取りもなく、相変わらずの透明感に溢れて。情景が浮かび上がってきて、涼やかな気分になれます。「風」が様々にカタチを変えて、陰に陽に、透明な色彩を添えています。
ストーリーとしては、朝から昼にかけて、下町を散歩して、浮かび上がってきた情景を詠んでいます。SF(すこしふしぎ)ではなく、今回は日常ものです。
魚屋、下町美人、夏期講習、屋形船、灼熱の工房、我が家で過ごす夜。
読者自身の記憶も道連れに、この透明な世界を歩いてみませんか。