第3話 冒険者研修

「剣はしっかり握るんだ! じゃないとすっぽ抜けるぞ!」


 あれ? 俺今まで何してたっけ?。


~一週間前~


「ありがとうございます、どこに行けば街に着くか分からなかったから助かりました」


「いえいえ、本当にタイミングが良かった、あと2分くらい遅れていたら私たちそのまま撤収してましたので」


 結構ギリギリだった。


「そういえば彼女のあのヒビは何だったんですか?」


「あれはダンジョンに生息しているモンスターに付着している物質が傷を介して侵食する現象、我々は【反魔素病】と呼んでいます」


「すいません、そもそも魔素って何ですか?」


「魔素というものはこの世界にありふれている物質であり、魔力の源である。反魔素というのは、ダンジョン内でしか確認されず、魔素とは正反対の負の物質だ、さらに魔素と反魔素はお互いを侵食し合う物質ということが研究で分かり、反魔素病を治療する【魔素血清】というものが発明されたのだ!!」


 すげぇ・・・、勢いがすげぇ・・・。


「彼女は傷が深かったんだが、君が布で止血してくれたおかげで侵食の進行が遅れて助かったんだ、もう少し侵食が進んでたら彼女は彼女じゃなくなってたよ」


 彼女が彼女じゃなくなる、つまりそういうことか・・・。


「そういえば君、名前なんて言うの?」


「カジカワ ユウキっていいます」


「なるほど、カジカワって名前なんだ」


「違います、カジカワが苗字でユウキが名前です」


「ああごめん、ユウキって言うんだね、俺はハバタ、ダンジョン専門のレスキュー隊員だ、なにか聞きたいことがあったら教えるぞ」


「じゃあさっそく質問する、俺たちが迷ってたあの場所は何なんだ?」


 そう聞くと少し悩んだ後に答えてくれた。


「あの場所は【ダンジョン】と呼ばれている、まだ研究の最中だから冒険者ギルドと連携してダンジョンに冒険者を行かせて未知の領域・ダンジョンを調査しているんだ。あそこではさっき話したような「反魔素」由来の資源の他に、ダンジョンに生息するモンスター、「ダンジョニアス」と呼ばれる化け物も生息している」


「もしかして、反魔素病が完全に進行してしまうと・・・」


「ああ、だから手遅れになる前に助けるのが俺たちの仕事なんだ」


 ふと、彼は右手の腕時計らしきものを見て。


「ああ、もうこんな時間か。すまない、これから用事があるから俺はこれで」


「そうですか、色々教えてくれてありがとう。」


「あ、もし冒険者になりたいのならば、街の中央にある冒険者ギルドに足を運ぶといい」


 そう言い残し、せっせとその場を去って行った。それから俺は冒険者ギルドと呼ばれる所に行き「冒険者登録」をするための研修に参加した。そして今、俺は基礎である剣の振り方扱い方の訓練をしている。


「変わった名前の小僧!前よりも様になっているじゃないか!!」


「あ、ありがとうございます・・・。」


「礼を言うならもっとシャキッとせんかい!!相手に失礼だとは思わんのか!!」


 このとにかく元気なオッサンは現役のベテラン冒険者だ。今のところは典型的なThe・熱血教官だ、剣を扱う上でのコツとかも教えてくれるしその人にあった剣の長さとかも見てくれる。


「もうこんな時間か。お前ら!昼飯の時間だ!午後は2階授業室に各自好きな席に座って待っていろ!」


 昼ごはんの時間だ、俺達は3階の食堂でそれぞれご飯を食べている。食堂のメニューはどれもとにかくおいしそうな物しかない。


「突角ウサギ肉のから揚げ・・・ミートタンクのステーキ・・・スパイシーギャラットスープ・・・ああなんでこんなにも美味しそうな・・・」


 クソッ・・・それも一線級のモノじゃあないか・・・。


「なんだ選ばんのか?」


 振り向くとそこには教官。


「どれも美味しそうで・・・2個注文ってありですか?」


「だめだ、他の奴の分がなくなってしまうからな」


「ですよね」


 悩みに悩み、「突角ウサギのから揚げ」に決め、注文。


 口に入れた瞬間に「美味」という2文字が脳内を駆け巡る。思わず「コッホォ・・・」と意味不明な言語が漏れる。


「それはどういう感情なの?」


 隣に座っている女の子に突っ込まれる。同じ研修仲間だ。


「うますぎて思わず漏れ出たんだ、忘れてくれ」


 そうして話している内に段々人が集まり話もそれはそれは大いに盛り上がった。


 そうして午後の座学に遅刻した俺達研修生全員がこのあと教官にこっぴどく叱られた。

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異世界転生者、可能性を信じて前に進む @kurokuro11223344

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