第2話 謎の空間、異形の化け物

 目を開けるとそこには日本では見たことも無いような壮大な景色が広がっていた。


「これが異世界か、空気がおいしい!!」


 自然由来の空気が肺いっぱいに入りとても爽やかな気分になった。広大な景色の中には地球では見たことも無いような生物がのしのし歩いている。


「やばい目が合った」


 俺は速やかにその場から撤退した。今の俺はただの人間、しかも運動もあまりしていない一般人、多分普通に死ねる。そう考えているとある物が目に入る。


「なんだ? なんもないのに変なヒビが入ってる?」

 

 すげぇ気になる、触っちゃいけない奴っぽいけどなんか抗えない、触りたい。


「そこの君!!”ソレ”に触っちゃダメだ!!」


「へ?」


 後ろから声がした、それと同時にヒビに触れてしまった。


「あ」


 次の瞬間、俺の体がじんわり消えていく。


「え!? なにこれ!?」


 やはり触ってはいけない奴だったか・・・


「体が戻ってる、つまり・・・」


 多分ワープ的なやつだよな、つまりここはさっきの場所とは別の所、というか別世界? 空がバグった色しているからだいぶやばい場所に飛ばされたかもしれん。


「取り敢えずコソコソ隠れてやり過ごすか、もしかするとさっきの生物よりヤバいのがいるかもしれん・・・」


 後ろから何かの音が聞こえてくる、結構近い。


「何も見ずに逃げるのが最善手だが少し見てみたいな・・・えい!」


 振り返るとそこには頭の部分にへんな物体が付いた人型だった、あと腕が殺意高めな剣に変形している。


 なにも喋らずに俺は猛ダッシュで逃げた、スタートダッシュの時にわざとこけかけることで十分な加速が得られると体育の先生が言ってた、今凄く役立っている。


「なんだあれ!? 化け物より化け物してたぞ!?」


 あれに捕まれば確実に・・・、ん?。


「なんでこんなとこに銃が落ちてるんだ? しかもなんか血みたいのついてるし・・・」


 後ろからあの化け物の音が聞こえる、ここで迎え撃つ。


「弾入ってるかわかんねえけど、何とかなれー!!」


 引き金を引くととてつもない衝撃でかなりよろけた、目の前を見るとさっきの化け物は上半身が完全に吹っ飛び、そしてボロボロと崩れて消えていった。あの化け物にこの武器は有効だと証明するには十分だった。


 護身用の武器を手に入れ少し喜んでいると、目線の先に女性が倒れている。


「だ、大丈夫か!?」


 その女性は右腕を酷く損傷していて、あと右腕を中心に変なヒビ割れのようなものが見える。


「に・・・げ・・・」


「無理して喋らなくていい、えーとこの場合はどうすればいいんだ!?」


「思いだした、まずは出血部分を布で巻くんだ」


 俺はもう着る意味はあまりない制服を脱いで女性の傷口にきつく巻き付けた。


「ここは危険だ、とりあえず物陰に隠れるぞ」


「は・・・やく・・・げて・・・」


 多分「早く逃げて」みたいな感じの言葉だ。


 不味い、あの化け物に見つかった、早くここから・・・ん?


「キュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


 あの感じ・・・、いやな予感がする。俺の嫌な予感は的中した、そこかしこから化け物の声が聞こえてくる。


「まじかよ仲間呼ぶのありなのかよ!? ここから抜け出さないと不味い」


 俺は重症の女性をおんぶして移動する、幸いここは岩が多くて身を隠すのに適している。


「ギャオオオ!」


 クッソばれた。俺はすかさず右手で拾い物の銃を持ち、ぶっ放す、音につられてたくさんやって来た、俺は奴らが来る前に走り抜ける、足がもつれかけた。


「おい、大丈夫か? 取り敢えず逃げれたぞ、あとは出口を探すだけだもう少しの辛抱だ」


 そう言うと女性が口を開く。


「なん・・・で、たすけ・・たの?」


「あのまま見捨てるのはよくないだろ? 目に入ってしまった以上、助けるしかねえだろ?」


「・・・・そう・・・」


 そう言うと彼女は寝てしまった、寝てるよな? ああ寝てる。


 歩き続けること約1時間、俺の足が限界を迎えるころに、ソレは現れた。


「あれはまさか・・・」


 ここに飛ばされる前に触ったヒビのようなものがある、アレに触れれば帰れるかもしれない。


「おいおい、この音はまさか・・・・」


 遠くから凄いスピードで化け物たちが追ってくる。


「うおおおお!! ここまで来て捕まってたまるか!」


 俺は全力で走った、彼女を抱えてめっちゃ走った、そしてギリギリでヒビにに触れることができた。瞬間、俺の体とおぶっている彼女の体がじんわりと消えていく。


 目が覚めるとさっき俺が消えた場所に居た、空はとても青く、あの場所から無事生還できたことを表している。


「君!? まさか自力で戻って来たのか!?」


 さっき俺に注意してくれた人だ、後ろになんか小規模の軍隊みたいのが付いてきているが。


「おい起きろ、帰ってこれたぞ俺達」


 そう言うと背中で寝ていた彼女が目を覚ました。


「私たち・・・生きてる?」


「生きてるぞ、俺達生きてるぞ」


「本当に、よかっ・・・た・・・」


 寝てしまった、どうしよう。


 


 


 

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