発狂
石田くん
発狂
男は発狂した。狂ってしまった。もう失うものは何もない。というよりもう、失うものを感ぜられない。と言った方が正しい。発狂とはそういうものだ。ついに男は発狂した。くそう、もう何でもやってやるぞ、俺は人だって殺せるんだ、隣に住んでる女をめちゃくちゃにしてやることだってできる、なんでもできるんだ、そうだ、やるぞぉ!
男はずっと着ていたぼろいパジャマを脱いで、スラックスを履いて、ワイシャツを着て、ジャケットに腕を通した。ははは、爆弾魔のような気分だ、今から俺はしてはいけないことをする、そう思って、バッグを引っ掴み、革靴を履き、ドアをバタンと開け放して、外に出た。駅までさっと歩き、エスカレーターに乗り、電車に乗った。目的地の最寄り駅に着いた。プラットフォームから降り、改札を出て、エスカレーターに乗った。エスカレーターの乗客は等間隔に並び、誰も喋らず、遠くから見ればそれはなんだかベルトコンベアのように見えた。男は随分満足げだった。
発狂 石田くん @Tou_Ishida
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