目覚めたら、木綿豆腐が話しかけてくる

ぷらすぷらす

おはよう

 朝目が覚めると、机の上に見慣れない物体、いや、見慣れたけどなんかこう違うんじゃないかという物体がある。


 一辺おおよそ1mの豆腐だ。しかも木綿豆腐だ。


「よお、随分とお早いお目覚めじゃねえか」


 時計に目をやる。朝5:00、仕事に行くにはまだ早い。いや、今しゃべった?


「普段のお前に足りないもの、わかってるか? タンパク質だよ」


 昨日の夜、ラーメン大盛りの後にアイスとポテチを胃に注ぎ込んだ思い出が蘇る。炭水化物による血糖値スパイクによってBed in…したのだ。


「タンパク質って何かわかるか? 俺だよ」


 寝ぼけた思考の隙間に、三段論法が入り込んでくる。飢えた体に食の正当性というガソリンが注ぎ込まれ、エンジンがフルスロットルになる。うつぶせの姿勢は、野生の本能を加速させ、即座に木綿豆腐のはらわたに食らいつくことを可能にした。


「がっつきすぎだぜ」


 むさぼりつく自分の姿。口いっぱいに広がる木綿豆腐本来の味。


「腹いっぱい食え」


 自己犠牲に涙が溢れる。そうか、俺は、この愛を、いや、塩分を求めていたのか。





 ふと、目が覚める。  夢か。

 

 今日の朝飯は、木綿豆腐だ。


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