現実を食べる

ほのかな

単話

もしゃり

目の前の誰かが粘土のような四角い何かを食べていた。

「それは何?」

気になったので聞いてみると、

「現実」

彼はそう答えた。もしゃもしゃと彼はそれを食べ続けているが、表情が死んでいるようにしか見えず、好んでそれを食べているように見えない。

「美味しいの?」

「味は無い。冷たさは感じる」

「なんでそんなものを食べるの?」

「これしかないから」

「いやならやめたら?」

「周りがダメって言うから。食べないと生きれないから」

「そこまでして生きたいの?」

「全然。でもそれしかしちゃいけないってみんな言うから」

私は目の前の生き物に哀れみしか感じなかった。

「どうしてそんな顔をするの?」

「え?」

「君も変わりないだろ?」

そう言われた私の後ろには、彼が食べている現実と同じ物が山のように積まれていた。

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現実を食べる ほのかな @honohonokana

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