【読み切り掌編】願ひごとこそ叶ひしか。


 アタシちょー遠恋エンレンでさぁ。わかる? 遠恋エンレン。遠距離恋愛。


 今年はぁ、ちょい長く好きぴと一緒にいれると思ったのにアイツ遅刻してんじゃんね。ガン萎え-。


「わ、アリかも」


 みんな毎年この時期、木に紙くっつけて何かやってんね。アタシのネイルと同じ色、アイビーグリーンの葉っぱにエモい色の紙をいっぱいぶらさげるやつ。


「ナンパ? ウザ」


 何あのグラサンの陽キャ。しつこい。

「ちゃんオリは可愛かわうぃーネ」とかダルすぎー。


 背も雰囲気もアリ寄りだけど……

 アタシには好きぴいるんだってば!


「待ってヨ、ちゃんオリ! 僕と一緒に歩かなうぃー?」

「ねーえーいい加減に……」


うたてしどうしてもダメなん?」

「え、待って待って、それ!」


 瞬間、アタシは息をむ。


「やむにやまれぬことをさとったか? オリリン」

「あなや! 分かるぞ、ひこぴ」


 いちにちもはやく、われが心を寄せるひこぴがここり。


まいるべし」

「いとおかし」


 おもひとと少しにも長くふるべきは、さても幸せなることか。


 これまではただ一夜の間ばかり、されど今宵こよいちがふ。

 

 こいしきひとの隣をあゆむべきは、さても幸せなることか。


 われにとりて忘れられぬ小暑となる。


 ささにくくられし短冊たんざくがも、さしもいとへるあんなにキライだった天の川も、うるわしくゆ。

 


 ねがひごとこそかなひしか。

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