第6話

 人は生きていく中で、成長もしくは自己修正をしていかないとどんどん頭がPー! してしまったり、人間性が歪んでしまったりする。


 それは樹木の成長に例えるのが比較的優しい言い回しのような気がする。


 心が歪んでしまったり曲がって伸びてしまった際、なにがしかの方法で修正をかけるか、剪定をして健康な面を伸ばすかしないといずれは修正困難になり倒れたり大きな厄災となる。


 Hが数年前に脳梗塞で倒れた時、IもEも私が電話で報告した際も大して動揺を見せなかった。すぐではなくても家に来るかと思ったが、そういう素振りもなかった。今になって思えば、おそらくIは、自分の恨みや憎しみや怒りが正当なものであると信じたかったのだと思う。


 奇妙な物言いだが、HAHA(すみません、言霊の威力が大きいので、またイニシャルトークで探ります)を「許さない」事が、自分の正当性の正当化を主張しているのだと今は理解している。


 今でこそ、IやAのことを心配して口にするが、それはHも同様だったのかもしれない。(しばらくこのイニシャルでいきます)。


 「事実を認めたくない」と思う感情が、人間関係の対立のトリガーになっているというのは想像に易くないが、だからと言って「はいそうですか」と改められるものでもない。

 ある種信念のように固まった怒りや不満や恨みといったものが、自分にも非があるとどうしても認めるわけにはいかないのだろう。



 時々、街の中を歩いている全ての行き交う人全てが、ホログラムのように思える。ひどく現実味が薄れて人が投影された映像のような。

 いや、むしろ逆なのかもしれないけど。


 結局のところ一緒に住んでいなければ、全ては対岸の火事なのだ。まったく全てがオールのeverything他人事。


 本当に気が重いけれど、EにはLINE連絡しなければならない。返信を返さないと……色々とコミュニケーションに支障が出現する。

 

 で。


 母がなかなかお肉や魚を食べれずにもっと栄養を摂って欲しいんだけどな、なんて送ったのだが……

 そもそもこれ、どんな内容の返信? かというと、これは以前姉が「はちみつ」をうちに置いて行ったことに端を発する。


「あの蜂蜜食べてる? 食べさせてあげてる?」

というアンサーだ。


 ハチミツなんてそんなに食べれるものじゃないし、いくら栄養価が高いと言ったって肉や魚の代わりになるわけもない。


 ですよね? 


 それだけ食べていて体調や何かが全回復すると言うのは考えにくい。エリクサーとかハイポーションとかベホイミとかベホマとか世界樹の葉じゃないんだから。


 多少なりとも食事を取るきっかけになるかもと思わなくは無いけれど、蜂蜜をなめてご飯の食が進むと言うことがあるのだろうか。そもそもそれを私にどんどん食べさせてあげてねと連絡してくるのが正直無神経だと思ってしまう。


 Hの事についてももちろんそうだけれど、これは私に毎日Eが置いていった蜂蜜を食べさせてあげてねという催促。そもそも最初にハチミツを置いて行ったのは母が入院した当時に遡る。当の本人はHが入院して3ヶ月で見舞いにきたのは3回か4回だ、しかもいつも私から声をかけて促した時のみ。自主的に来たことなどない。


 ああ愚痴っぽい。

 愚痴っぽいぞ私!


 本当は言いたくない。私の真意と違う。

 字面ではニュアンスが違うし。言葉にした途端に何か思いがずれてしまう。

Eを責めているわけではないけれど、そういう風に取れるかもしれないし、Eに近い立場で動いてる人間からすれば私の言ってることの方がカンに触ったりもするのだろう。


【つづく】

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鮎川たまよのひとりごと 宮藤才 @hattori2525

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