第5話 君はファンが足りない

(数日が経過。夜の自室、扉のノック音と同時に扉が開く)


「お兄ちゃん生きてるー? 小説読まれたー?」


「ええええええ!? 全然読まれないの!? なんでー!?」


「ちゃんと毎日呟いてるよね? 他の人にもいいねしてるよね? 毎日宣伝してるよね?」


「ん? きんきょうのーと……って奴も更新してるけど読まれないの?」


「ええ……ウソー……いっぱいやってるの全然読まれないの?」


「うう……どうしよう……もうアタシもどうしたら良いか全然わからないよ……」


(ギシッと椅子が動く)


「……え? いろいろ手伝ってくれてありがとうって……」


「ええええええ!? 自分には才能が無いからって……ちょ、ちょっとお兄ちゃん! そんな諦めないでよ!」


「ち、違うよ! ただ読まれてないだけだから! お兄ちゃんの小説は面白かったから!」


「……ただ身内だから煽ててるだけって……そんな訳無いでしょお兄ちゃん!」


「ちゃんと聞いてお兄ちゃん! アタシ、お兄ちゃんにもお姉ちゃんにも、お父さんお母さんにも、からかってるけど本音で話してるでしょ!」


「ちゃんとアタシの目を見て! いい? お兄ちゃんの小説は面白かった!」


「アタシって、つまらなかったらつまらないって言うでしょ? でも、お兄ちゃん小説を読んでから、つまらないなんて一言も言ってないよね?」


「お兄ちゃんの小説は面白かった! ワクワクもドキドキもした!」


「ヒロインの女の子も守って上げたくなるぐらい可愛くて、主人公の男の子もカッコよかった!」


「お兄ちゃんの小説を読めば、誰でも面白いって言ってくれる自信がアタシにはある! お兄ちゃんには才能がある! あの引きこもりのお姉ちゃんが凄い読まれてて、お兄ちゃんも同じ血を引き継いでいるんだから絶対面白いんだってば!」


「だからお兄ちゃん! 自分に才能が無いなんて言わないでよ。そもそも小説を書ける事が才能なんだよってお姉ちゃんも言ってたよ」


(少し間を置く)


「……お兄ちゃん落ち着いた? 大丈夫、謝らなく良いんだよ。読まれて無いぐらいでお兄ちゃんの価値は変わらないよ!」


「そしたら、アタシがお兄ちゃんの小説のファン1号になってあげる! お兄ちゃんの作品が面白いよって皆に伝わるように頑張るよ!」


「……うん! 元気出たね! よしよしよしよし!」


(髪の毛をくしゃくしゃにする程々撫でる妹)


「そうだ! いっそのことお姉ちゃんに相談してみる?」


「ほら、お姉ちゃん小説書いてるって言ったでしょ? 確か就職したけど会社でパワハラとセクハラ受けてから病んで退職したって言ってたよね? お兄ちゃん覚えてる?」


「それで、気分転換に書いた小説がコンテストで受賞したんだよ! そこから書籍を出しつつ、小説投稿とか、あふぃりえいと? ってやつで稼ぎながら……ってあれ? そう言えばお兄ちゃん、なんでそのこと知らないの? もしかして、このことってお兄ちゃんだけ知らないの!?」


「なんでだろう? ま! そんな事はいっか! とりあえずお姉ちゃんの部屋に行こうよ!」


「……っとその前に……お兄ちゃん」


「お姉ちゃんの小説、読んでみる?」


「直接本人に聞くのが早いけど、アタシ達はまだ焦ってないからさ! ちょっとはお姉ちゃんの趣味、知っておいた方が良いんじゃない?」


(頷く。服が擦れる音)


「……だよね! それじゃあお姉ちゃんのアカウント検索しよ! あのね、アカウント名は……」


(妹に教えられながらカタカタとパソコンで検索。そしてすぐにアカウントが見つかる)


「あったこれこれ! このアカウントがお姉ちゃんのアカウント!」


「ホラ見て! 評価10万ポイントだって! どう高いかわからないけど、なんか高いって事はわかるね!」


「せっかくだからさ、お兄ちゃん一緒にお姉ちゃんの小説さらっと読んでみる?」


「……そうだよね。お姉ちゃんの作品に人気になるヒントが隠されてるかもしれない」


「よし! それじゃあさっそく、この『』ってやつを読もう!」


(2人で1つの椅子に座る為、椅子が軋む)

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