第2話 追加で2人殺した

この2人と、僕は同じ小学校だった。


何度かクラスも被った。


でも、2人の名前は覚えていない。



この2人に限らず、小学校の同級生達の名前は

ほとんど覚えないまま卒業した。



今のクラスメイトの名前も ほとんど覚えていないし、どうやら僕は、他人の名前を暗記するのが苦手なようだ。




とりあえず、この2人の呼び方は



「女子1」「女子2」としよう。



圧倒的に、女子1より2の方が顔はタイプだ。




女子1は中学生のクセに髪の毛を金髪に染めている。



自分で染めたのだろう、全体的に色ムラがあり、毛先はパサパサだ。



真っ黒いカラコンをつけていて、お前は宇宙人かと問いたくなる。




イキりやがって、気持ち悪い。




それに比べ、女子2は黒髪ポニーテールの清楚系で肌も白くパッチリとした二重が印象的だ。




付き合うとしたら、絶対に2の方だ。




「え、モエちゃん居なくない?」


「どこいるの?」




2人は教室の隅から隅まで見渡してから、こちらを振り返って笑った。



「どーせ安藤、モエちゃんの事振ったんでしょ」



「かわいそー。モエちゃん隠れちゃったじゃん」



2人はニヤニヤしながら また目配せをした。



女子特有の「目配せ」



僕はこれを見るのが けっこう好きだ。



理由は特に無いけど。







「もっと下だよ、下。目線下げてみて」


僕は少し遠くから2人に指示した。





そして制服を上下脱いで


靴も靴下も脱ぎ、


パンツだけの姿になった。





次は、さっきみたいに伊藤1人ではなく


2人まとめて殺すのだ。




コイツらが暴れて血が服に付いたら大変だからね。


おっと、ナイフがズボンのポケットに入ったままだ。



乱雑に脱ぎ捨てた制服からナイフを探して掴んだ。



一応、念の為に持ってきていたゴム手袋も装着しておくか。


「ぎゃああああ!」


女子1と2が叫んだ。


「あ、2人とも やっと見つけた?目線下げろって言った意味分かったでしょ?」

「ぎゃああああ!」




あ、僕の声ぜんぜん届いてないね……。


「ぎゃああああ!」


2人は顔を真っ赤にしながら泣き叫んでいた。





ち、うるさい声だな。


お前らは2人揃って、サルか。


キーキーわめくな。ここは動物園かよ。


普段クラシックを好んでよく聴いている僕には

耳が痛いんだよ。



「あ、安藤、モエちゃんが……」


「なんでこんな血だらけなの?!」




ん、んん?


2人とも、僕が半裸って事はスルーなのね。



なんで?



何か一言、感想を貰えると思っていたのに。



「なんで安藤 半裸なん (笑)」


とか


「わりと腹筋あるんだね (笑)」


とかって。



こんな死体にばかり注目して、


僕の存在を軽視しやがって。




僕はイライラしながら2人の元へ駆け寄った。





「うつ伏せの死体を見て、これが伊藤なのか どうかなんて分からなくない?顔も確認していないのに。コレが本当に伊藤だと?

あのさ、テキトーな発言しない方が良いよ」


僕はイライラしていたが、


なるべく口角を上げて なおかつ丁寧な口調で

2人に注意した。


人が激昂している姿って、見ていて哀れだからね。


たまに居るじゃん、駅のホームとかに。


なんで怒っているのか よく分からないオジサンが。


僕は、そんなしょーもない大人に


なりたくないんだ。


紳士の様に、スマートな生き方をしたいんだ。



「ま、2人ともね、次から気をつけてくれれば良いよ」



僕はそう言って、伊藤殺害時 同様、


まずは女子2の首をナイフで切りつけた。


しかし見事にかわされてしまったので


浅い傷しか残せなかった。


「安藤やめて!」


女子1と2が叫んだ。


2人とも、ガクガクと足を震わせていて


逃げたくても膝に力が入らないようだ。


「だから、うるさいってば。静かにしてくれるかな」


そう言って、女子2の腹にナイフを突き刺した。


「痛い痛い痛い!」


女子2は大量の涙と鼻水を垂れ流しながら


数歩 後ろへ下がった。


あー、腹は急所じゃないから死なないか。


こういう時は心臓を突き刺さないと。


僕はナイフを女子2の腹から抜こうと


右手に力を加えた。


しかし、なぜか抜けない。


え、なんで?なんで抜けないの?!


女子2は僕の両腕を必死に掴んで抵抗してきたが、所詮は女子の力だ。


思いっきり膝蹴りをして横転させた。






女子1が、その隙に逃げ出そうとドアの方へ走り出していた。


走り出したとは言え、両足がプルプルと震えていて


それは何とも不自然で情けない動きだった。





僕はすぐ女子1に追いつき


そして追い越し


ドアの前に仁王立ちした。



「ここから生きて出られるとでも……?

あ、今のセリフ、なんか悪役っぽかったね(笑)

こーゆー映画なかったっけ?」


僕は女子1に近づいて、髪の毛を掴んだ。


手にベットリ付いていた女子2の血が、女子1の汚い金髪に染み込む様に流れ落ちていった。



「金髪よりも、赤髪の方が似合うんじゃない?」



僕は女子1の髪の毛に


手ぐしをして血を絡ませた。




手を動かすごとに、女子2の血の匂いが


ブワッと鼻にきた。




それは、伊藤の血の匂いと同じで臭かった。




僕は あの時「下品な女の血は臭い」


と解釈したが、実際は誤りで


「女の血は臭い」


が正しい解釈なのかもしれない。


だって、女子2は伊藤みたいに下品な女じゃないからね。


いや、もしかしたら「女の血は臭い」ってその解釈も誤りで


将来 男も殺したら


「人間の血は臭い」


が本当に正しい解釈なのだと


確信できるのではないか?




僕は今回、この体験型学習を通して


「経験を積むことの大切さ」


を学んだ。




追加で2人殺さなければならないのは


腹が減っている僕にとっては苦行だと最初は思ったが、


結果オーライだったな。





女子1の顔を近くで見ると、口の周りに うぶ毛が沢山生えていてドン引きした。




「ま、まだ……死にたくない……」


「それは 何で?理由を聞かせてよ」


「安藤……私の目を……ジッと見つめて……。離しちゃダメだよ。ずっと見つめていたら……私の思いが……伝わると思う……」


「何それ、ヘンなの」


「私…… 一生のお願いって……人生で一度も使った事ないからさ……だから……ここで……使う……」


「分かった、イイよ。僕の心はインド洋より広いからね。で、何秒見つめていたら良いの?」


「い……1分……」


「1分?! 長いわ!もっと巻いてこ (笑)」


「じゃあ……30秒……」


「んー、まー、そんくらいなら良いよ。

仕方ないなぁ、大サービスだよ、大サービス。

相手が僕で良かったね。普通の人なら待ってくれないよ。

ハイ、30!29!28!……あ、ちなみに数え終わったら即 殺すから」





僕は女子1の目をジッと見つめながらカウントダウンを始めた。





女子1も、僕の目をジッと見つめてくる。





え、なにこの時間 (笑)





思わず吹き出しそうになってしまい、


それをガマンしていたら鼻水が女子2の方へ


ピッと飛んでいった。



「ごめんごめん。でもさ、鼻水ってそんなに汚くないみたいだよ。唾液やおしっこよりは全然マシじゃん?

まぁ、僕は他人の鼻水なんて汚いから絶対に付いたら嫌だけど。……って、無駄話してないで続けようか。……あれ、どこまで数えたっけ(笑)」



「……28まで……数えてた……」



「あ、そうだったね。28!27!26!」










カウントダウンの途中、ガララ……



と窓を開く音が背後から聞こえてきた。



僕が その方向をパッと見た瞬間、女子1が


「アサヒちゃん逃げて!」


と叫んだ。


クソ!


コイツら、サルのくせに頭働かせやがって!



僕はまず、女子1の体に飛びかかり


両手で頭を掴んで勢いよく首の骨を折った。


実は、人間の首の骨はテコの原理を使うと

折れやすいんだ。


小学生の頃、仲良くしていた近所の高校生から


やり方を詳しく教えてもらった。




その先輩は受験勉強を頑張って


有名大学の医学部 医学科へ進学したが、


同大学の看護学科の女を車内で強姦し


逮捕されてしまったらしい。


ニュース番組を観て知った。





続いて、女子2のところへ猛ダッシュしていき


髪の毛を掴んで窓から引きずり落とした。


「あっぶねぇえ。何逃げてんの。ダメでしょ」


僕は女子2の腹に突き刺さっているナイフを、


さらに奥へメリ込ませた。




右手が暖かくて気持ちいい……。




足湯ってあるけど、手湯も流行りそうだな。




「安藤に刺されたって……誰にも言わないから……お願いだから……殺さないで……」




「それはムリ。君達が化学室に来たのが悪いんでしょ?僕、君達に来て欲しいなんて頼んでないし」




「ゆる……許して……下さい……。あたしの……バックの中に……親のカードが……入ってるから……中に200万あ……」




最後までは聞かず、女子2の首も捻り折った。






両目を見開いたまま死んでいる女子2を見て、


やっぱり美人は、死に顔まで美人なんだな


と感心した。




名残惜しくて、


何度も何度も記念に目を合わせた。




最近ハマってるバンドの曲を熱唱しながら、腰を屈めて様々な角度から顔を じっくり見つめた。



「来月のクリスマスは〜ぜってぇお前と過ごしたい♪Butお前は俺に興味ない♪」



このバンド、メロディーはイイんだけど歌詞がダサいんだよな。


僕が代わりに書いてあげたいよ。


なんだよ、Butお前は俺に興味ないって(笑)


オモロすぎんだろ。ウケ狙って書いただろ。


もっとガンバレよ、諦めんなよ。


僕は爆笑しながら歌い続けた。


最近カラオケ行ってないなぁ。


期末テスト終わったら行こうかな。






……って、ヤバイ。マジでヤバイ。



もう だいぶ時間たったよな?



今何時だ?



教室の時計を おそるおそる確認すると、まだ最初に伊藤を殺してから10分も経っていなかった。




なんだ、セーフ。ヨカッタ。




今度こそ、誰にも見つからないように


教室へ戻らなければ。



カレーを食べられないからね、警察に捕まっちゃったら。



だから、廊下で すれ違う奴らに


「おい、今から化学室行ってみろよ。おもろい事になってるから」


と言いふらして驚かせてさせてやりたかったが


その衝動をグッと堪えた。








教室に戻ると、クラスメイトたちが給食の準備をしている途中だった。



僕もその中にスルリと溶け込み準備を始めた。



学級委員長の女子が「いただきます」と挨拶すると、クラス一同「いただきます」と一斉に手を合わせ挨拶した。









「あれ?萌ちゃんいなくない?」







誰かがボソッと口にした。


すると皆が次々と


「ほんとだ、伊藤さんがいない」


「どこ行ってるんだろう?」


と騒ぎ始めた。


担任教師が


「誰か、伊藤さんの姿を見た人はいませんか?」


と立ち上がって問うと皆


「知りません」


と口々に答えた。


そりゃそうだ。伊藤が今どこに居るのか、誰も知るはずがないよな。



だって僕が、この僕が



さっき殺してきたのだから。




誰も知らない情報を、自分だけが握っている……優越感……何も知らない雑魚共が……。




突然、僕の全身にピリピリと心地の良い電流の様なものが走り、この上ない快感に襲われた。




あまりの気持ちよさに、つい「ああ……」と声を漏らしてしまった。




慌てて周りを確認したが、雑魚共の声が雑音となり、僕の声はかき消されていた。




セーフ。僕って本当に運が良いな。




カレーをパクパク食べながら、自分の幸運も噛みしめて味わった。




お疲れ様、僕。




ストレスの原因女が消えて、今日からさらに勉強に集中できそうだ。



そして僕の将来は輝かしいものとなる。



絶対に。



なぜなら僕は、努力を惜しまないからだ。



成績優秀で、顔が格好良くて、運動神経も良くコミュニケーション能力だって高い。



将来有望という言葉は、僕の為に存在するのではないか?



将来が楽しみで仕方がない。



伊藤を殺したのが僕だと、万が一バレてしまっても大丈夫。



僕は逮捕されない。




13歳以下の子どもは、殺人をしても少年院に行かされるだけだ。




実名報道もされない。




テレビ番組では、

逮捕された20歳そこらの奴が

実名報道されているニュースを

たまに観る。


「なんで未成年のうちに済ませておかなかったのだろう?成人になったら、実名で全国放送デビューしちゃうのに」


と僕は

常々 疑問に思っていた。




あの近所の先輩だってそうだ。未成年のうちに強姦して その欲求を満たしておけば良かったのに……。なんで大人になってから犯罪を犯したんだ?



僕は絶対に、あんな風には なりたくない。



《未成年のうちに犯罪を済ませておいて、

成人になってからは真っ当な人間として生きていく》


これが、僕の人生計画だ。


賢いでしょ?


罪が著しく軽くなる未成年のうちに


犯罪はヤッておこうよ。


大人になってから犯罪するのは、


頭良くないよ。


心の底から、少年法万々歳!


ありがとう少年法!


僕の尻拭いをしてくれて!


この国は犯罪者にとことん優しい。


住みやすくて最高! 最高だ。






口の中に流し込んだ牛乳を、舌の上ででコロコロ転がした。



「牛乳は給食に合わないから、お茶にしてほしい」



なんて言うクラスメイトも多数いるが、僕は牛乳が好きだから特に問題は無い。



むしろカレーに牛乳って最高。



それにしても、この電流の正体は


一体 何だろう?


ピリピリピリ……。


流れると、全身が凄く気持ち良くなる。




生ぬるい空間に体が溶けていくような、


なんとも言えない不思議な心地いい感覚。





そうだ、二年前と五年前にも、





流れた記憶がある……。


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少年法万々歳だ!!!☆この国は、犯罪者達に易しすぎる♪住みやすくてサイコー‬♡ 佐藤 夜道 @satouyomichi

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