Y子の家の隣だった森野弥生さん(仮名)
Y子ちゃんが亡くなったって聞いて本当に驚きましたよ。あんなに良い子だったのにねえ。Y子ちゃんがちっちゃいときは家の前で縄跳びとかフラフープとかで遊んでいるのをよく見かけてましたし。会えば元気に挨拶もしてくれましたよ。いじめられてるなんて思いもしませんでした。だって小学生まで友達がいっぱいいたようだし。ニュースとか週刊誌で取り沙汰されてるのを見て知ったんです。Y子ちゃん、小六で引っ越して環境が変わっちゃったのが悪かったのかな……ええ、その後は会うことも話すこともありませんでしたから。
でも、一回だけ、気のせいかいまだにわかりませんけど、Y子ちゃんの亡くなる前に見かけたような気がするんです。最後に会ったのは小六で、あの時Y子ちゃんだったとすれば中三ですから成長して容姿が変わってるかもしれないんですけど、どことなくY子ちゃんのおもかげがあったんです。でも様子がおかしかったですよ。家の前の道を何度も往復して「ガガンボ! ガガンボ!」と叫んでいるんです。私怖くなって。カーテンの隙間から様子を伺ってたんですが、私の視線に気づいたのか顔が二階に向いて、急いでカーテンから距離を取りました。でも、あれはY子ちゃんに似ていた気がするんです。
ガガンボ? 私もわかりませんが、もしかしたら家族内の誰かのことかもしれません。Y子ちゃんが小学生のときに道で挨拶したら「ガガンボは今日、家にいないよ」と聞いたことがあります。最初はお母さんのことをそう呼んでいるのかなくらいにしか思いませんでしたけど、わざわざ気持ち悪い虫の名前でお母さんの名前を呼びますかね。
家族の中に嫌いな人がいてその人につけていたあだ名とか……。それくらいしか想像がつきません。
ガガンボ 佐々井 サイジ @sasaisaiji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます