呪術医イサヤ

コウセイ

一幕  ~四神ノ巫女外伝~

 これは安倍晴明あべのせいめい現代げんだいへやってまえはなしである。

 数年前すうねんまえ

 かねてより暇乞いとまごいをして、ようやく晴明せいめい山荘さんそう隠居いんきょするとなった。最後さいご挨拶あいさつにと御所ごしょ出向でむき、陰陽寮おんみょうりょうかおしてのかえり。



   トコ トコ ピタ・・・



「はて・・・あのようなどうてられておるとは?」

 晴明せいめいあしめた。

 りょうがある場所ばしょからはなれた敷地しきちおぼえのないどうてられていたである。

 だれかにたずねようと──



   キョロ・・・リ



 ──晴明せいめいまわりをた。

晴明殿せいめいどのひさしいですな!」



   トコ トコ



 こえをかけ、近寄ちかよもの

「これはこれは・・・(だれであったか?おもせん)」

 まったかおおぼえがなかったが、晴明せいめいれいとして挨拶あいさつかえす。

「あのどうになられますか?」

 とし五十ごじゅうえているであろう、おとこう。

「ありますな」

 と、晴明せいめい

「あれは・・・」



   コレコレ コウコウ



「・・・とうわさでしてな」

「ほう・・・むかし側仕そばづかえのもの身籠みごもったはなしがあったか」

 そのものはなし自分じぶんの話し相手はなしを、晴明せいめいらしわす。

「これも云っとき《いっとき》のことでしょうな」

 そうい残 《のこ》し──


   トコ トコ



 ──おとこってく。

晴明せいめい・・・いいのか?あのようなもの見逃みのがして」

 晴明せいめいかげひそ式神しきがみかたりかける。

かまわん・・・わしは隠居いんきょするで、あとことあとものまかせようぞ」



   スタ・・・



 一歩いっぽすが──



クルリ



「(あのもの・・・)」

 ──晴明せいめいかえる。

「どうしたか?」

 式神しきがみう。

「いや・・・なんでもない」

 い、晴明せいめいあるす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

   呪術医イサヤ コウセイ @potesizu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る