あまのじゃく
「……おい…大丈夫か??」
「何が??」
「見つかったらやばいんじゃないか?」
「大丈夫よ、私のお部屋、広間から離れているから…」
「ちょっと待って、
ジルは首に下げていたゴツゴツしたネックレスを天に
「うーん…いまいち効果が薄いな…光の影響だろうな…」
「ジル!!あなたこんなすごい魔法が使えるの!?」
「魔法…?…あぁ、”魔術”のことな。
「ねぇ、すごいわ!私にもその魔法かけて!!」
「無理だよ。光の聖域で魔術を使うのは
「消される…???どういうこと??」
「知らねぇよ。オレだって今日はじめて
「………」
アンネは不安そうにジルを見つめてから目線を下に落とした。
「私の部屋はこの上よ。」
「…随分と大変な場所に部屋があるんだな。」
ジルが不思議そうに尋ねる。
「本当はもっとすぐに着くんだけど…」
アンネは何か続きを言おうとしたが、そのまま口をつぐんだ。
目の回るような階段をしばらく昇っていくとアンネの部屋が見えてきた。ドアにハートマークの木のプレートが貼ってある。
「ようこそ、私のお友達。」
アンネが部屋の扉を開けると、柑橘類の匂いと甘いパンの香りがあたりに広がった。温かい部屋の中は木の温もりを感じられる茶色で統一されており、色とりどりのぬいぐるみや人形がたくさん並べられている。
アンネは雨で重たくなったジルのマントを脱がせると椅子の背もたれに掛け、真っ白なふかふかのタオルを棚から取り出してジルの頭の上に乗せた。
「え~い!!」
「うわっ!!」
アンネは楽しそうにジルの濡れた頭をぐしゃぐしゃと拭く。ジルは息が止まりそうな大きなタオル攻撃の隙間からなんとか顔を覗かせた。
「…ぷはっ!!すっげぇ!!!」
家も外も殺風景な
「これ、食べていい!???」
ジルはテーブルに乗っていたブレッドケースからクロワッサンを取り出し、答えを聞く前に食べ始めた。大きく口を開け、ハムスターのように両方の頬にパンを頬張ると、もふもふと幸せそうにその味をかみしめる。
「うまい!!!」
「うふふ、それは良かったわ。でもジル、ちょっとお行儀が悪いわよ。」
ジルはアンネの言葉も耳に入っていない様子で、パンを口に入れたまま、布団の上にダイブすると楽しそうにピョンピョンと飛び跳ねている。
「すっげぇ!!!ふっかふか!!!」
目をキラキラさせて楽しんでいるジルを見て、アンネはたまらずに吹き出した。
「ぷっ…ねぇジル、あなたってなんて面白いの!?とっても可愛い!」
「は!?…か…可愛いだとっ!!??」
ジルは眉間に
「ねぇジル、さっきのピョンピョンするやつ、もう一度やってちょうだい。」
「やだっ!」
アンネはしゃがみ込んでジルを見ると、服の裾を引っ張った。
「どうしてよ。お願い。もう1回見たいの。」
「い・や・だっ!!!」
ジルは腕を組んだままそっぽを向いた。
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