境界線
光の聖域と影の空間の境目には頑丈な石造りの門がそびえ立ち、屈強な光の戦士達が門番をしている。光防衛軍の中でも選りすぐりのエリート達だけがその任務に就くことが許されており、その境界線は光も影も自由には行き来することはできなかった。ジルは16歳を迎えた証である「世界統一証明書」を胸ポケットから出して門番に提示する。
「ん?見慣れないヤツだな…フン、16歳証明書か。お子ちゃまが出しゃばりやがって。」
門番は鼻で笑った。
「なんだと?おい君、僕を誰だと思っている。影の空間の王子、ジル・クラウン様であるぞ。」
「知るかボケ。影の分際で生意気なガキだ。たとえお前がここを通ろうと、光の世界では誰もお前のことなど相手にせぬぞ。」
「おまえに僕のなにがわかる。いいからどけ。僕を怒らせたらどうなるかわかっているか?」
ジルは門番を睨みつけると頭上にボウッと紫の光を
「クソガキめ。せいぜい自分の
ジルの額の血管が浮かび上がり、紫の光が一段と巨大になったその時、横から女の声がした。
「あ〜ら、素敵な門番さん。うふっ。あたしも今日16歳なのよ。そっちにイキタイの。イ・レ・テ・ク・レ・ル??」
赤紫のロングパーマの髪にプルプルの唇、フォークのような巨大な槍に、先端がハートマークになった悪魔のような尻尾。下着のような姿ではだけた胸元をちらつかせながら女は門番に近寄り、その谷間を寄せた。
門番は顔を真っ赤にしてあたふたしている。
「…あっ、は…はい…どうぞ…ご自由に…貴方様のお好きなように…」
女はニコニコと笑ったまま門番を突き飛ばすと、その顔をハイヒールでグリグリと踏みつぶした。
「さっきはうちのジルがお世話になったみたいでありがとう❤︎これはほんのお礼のキモチよ…」
「あ…あひゃああ…お嬢様…もっと…」
門番は女の短いスカートの中身を覗きながらその魅力に骨抜きになっている。
「くくく…馬鹿な男。これだから光の連中は。」
「あぁ…なんてことだ…もっと…お願いです…もっと言ってください…。」
女は失笑するとジルの方を見てウィンクした。
「メドゥー!!さすがだな。恩に着るぜ!!」
ジルは目を輝かせて女とハイタッチした。
「うふふ。ジルのためならなんだってするわ…アタシはここでもう少し楽しませてもらうわ。じゃあね、ジル、頑張って。」
「サンキュー。メドゥーも王子様みつけてこいよ。」
「…王子様ならすぐ近くにいるんだけどナ…まぁ、しゃーないか。」
メドゥーはジルの後ろ姿を目で追った。
足元から男の声がする。
「こっ…このクロノアが…貴方様を一生お護りする盾になりましょうぞ!」
地面を見下ろしたメドゥーの目から生気が抜けた。
「はぁ?あたしのことすら倒せないヘタレ野郎が、何ほざいてんのよ。」
メドゥーは右手を開いてポンポンと軽く2つの光の玉を生み出し、男に向かってポイッと投げつけた。赤紫の光がどろどろのゼリーのように激しくはじけ飛び、男は跡形もなく姿を消した。
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