影のヒト
―影の空間―
オンボロの望遠鏡のひび割れたレンズの先。美しい庭園で少年が少女に話しかけている。
(クッ…いつもいつもアイツばかりいい思いを…でもそれも今日までだ。)
ジルはお気に入りのビロードのマントを
(フフフ…今
ジルは少し下がってきた髪をさっとかき上げると、立てかけてあった全身鏡に映る自分の姿に
(ああ…デスメイクが似合う僕…なんて最高なんだ…きっとあの
ジルは窓を開け放つと集まっている女の子たちに投げキッスをして声をかけた。
「やぁ、可愛い”子猫ちゃん”。今日もお
ニヤニヤと
「ジル様、どうなさいました、本日は一段とご機嫌うるわしゅうございますな。」
窓際でにやけるジルに部屋の奥からスティーブが声をかける。
「スティーブ!!あんた、余計なことはいいんだよ!!ジルだってもうお年頃なんだから、黙っててやんなさい!!」
ジルの
「スティーブ…当たり前だろう、今日は僕の誕生日なんだから。これで晴れて僕も光の聖域に出入りできる…なぁスティーブ、お前もこの僕の美しさがわかるだろう。影のプリンス、ジル様のな…」
「もちろんでございますとも。ジル様。」
「スティーブ!あんた、ジルの馬鹿話に付き合ってる暇あんならさっさと食器洗いしてちょうだいな!」
「はっ…申し訳ございません、ローズ様…すぐにキレイに致しますとも…。」
スティーブは光の速さで台所へ行き、ローズに命ぜられた通り食器洗いを始める。そんないつもの光景を呆れて眺めながら、ジルは床にあった瓶ビールをグビグビと飲み干し、唇についた泡をぺろりと舐めた。
漆黒のマントを羽織ったジルが重たい木の扉を開けて
「ジル様!」
「ジル様あぁぁぁあああ!!!」
少女たちは我先にジルに触れようと必死だ。だがジルは手に持っていた薔薇の花を空高く投げるとオーブのような紫の結界を張って少女たちと距離をとった。
「悪いね、今日は大事な用事があるので…また夜になったら帰ってくるから、ちゃんとおうちに帰って待っているんだよ。」
シュンとしてしゃがみ込む少女たちを後目にジルは「光の聖域」へと向かった。
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