第七夜 七夕の夜
「ふう、晴れてよかった」
空を見上げながら安心のため息を漏らす。降り続けていた雨はすっかり止み、満天の星空が広がっていた。
近くでは園児達が賑やかにしていて、園の先生達や園児の保護者達が様子を見ながら微笑ましそうにしている。このイベントは大成功なようだ。
「この星みたいに園児達も輝いていってほしいな」
星はキラキラと輝いており、とても綺麗だった。それを見ているだけで力をもらえるような気がしたし、園児達もそういう風に他の人に力を与えられるような子達に育っていってほしいと思った。
そうして一人で夜空を眺めていた時、隣に立つ人物がいた。
「あなた、私もご一緒しても良いかしら?」
「もちろんだとも」
妻の言葉に答えて二人で夜空を見上げる。
「綺麗ね……」
「そうだな。俺がもう少し若かったら君の瞳の方が綺麗だよなんてキザな言葉でも吐いてみるんだけどな」
「ふふ、あなたには似合わない言葉ね」
「自分でもわかってる。結婚する前だってそんなに飾った言葉すら言えなかったし」
「でも、私は嬉しかったですよ。どんなに飾った言葉よりもどんなにお金をかけたデートよりもあなたの素直な言葉や一生懸命考えてくれたデートで過ごした時間の方が輝いていたはずだから」
「はは、ありがとうな。俺だけの織姫様のためだから頑張ったかいがあったよ」
「ありがとうございます、私だけの彦星様」
そうして肩を寄せあって俺達は夜空を眺めていたが、やがて園児達が俺達の事を呼び始めた。
「おや、子供達が呼んでいるな」
「ふふ、それなら行かないといけませんね。待たせてしまうのも悪いですし、あの子達や先生達とも一緒にこの星空を眺めたいですから」
「そうだな。それじゃあ行こうか」
「ええ」
そうして俺達は手を繋いで子供達や先生達のところへ向かい、みんなで空を見上げる。その空はとても輝いていて、一生忘れる事がないだろうと感じる物だった。
七夕ウィーク 九戸政景 @2012712
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