第21話 侵入

 正暦10504年5月21日午後7時ちょうど。


 相原真人、中田泰助、和田憲示、夢見想の四人は雨川奏時の解放のため、真人の《記憶飛きおくとび》によって拘束施設の入り口前に来ていた。


 想はまだ手錠をかけられている。


 警備員は二人。まずは真人が一人で近づいていく。


「なんだい君は?」

 大柄な男二人が詰め寄る。


「雨川奏時に会いに来た」

 真人は一回り体の大きい二人に動じず堂々と宣言した。


「彼は保有禁止魔法を使える危険な存在なんだ。君に会わせるわけにはいかない」

 強引に警備員二人の腕を掴む。《記憶消去きおくしょうきょ》。


「あれ?」

「俺たち今何を?」

 その瞬間に後ろから近付いていた泰助と和田が一人の首を締め殺す。それを助けようとしたもう一人は相原が隠し持っていた包丁で首を搔っ切られる。


「はあ、はあ、はぁ、はは、ははは」

 泰助は新しい快感を得た。


「俺今やばいことしたんじゃ」

 和田は自分のしたことに実感を持てていない。


 夢見想はあまりの衝撃に吐き気を催していた。


「この人たち、おかしいよ……」


「あ? なんか言ったか?」

「なっ、なんでもないです」


「よし行くぞ! 三人とも」

「待ってろよ、奏時―」

 手に残る感覚を噛み締めながら泰助が声を上げる。


「もう行くの?」

「へばってんじゃねえぞ、和田」

「うん」


 彼らに恐れをなす想も後をついていくしかない。



 ◆



 同日午後7時7分。


「とうちゃくー! って、え!?」

「え……?」

 先に走っていった神前さんと思恩の反応は俺の想定通りのものだった。俺もやっておかないと。


「え? どうしたの?」

 完璧なリアクションをする。


「人が……」

「死んでるの!」

 満点解答である。


「とりあえず中へ! 俺たちがやったと思われたらまずい」

「そうだね! 行こ、思恩くん!」

 俺たちはダッシュで向かう。しかし──。


「ゆっくり行こう」

 神前さんは急に慎重になり俺たちを制止する。

 俺としても確実に奏時の解放が終わった所に向かいたい。


 あくまでも真人たちが主犯者であり、俺たちはその後をつけてきたという設定でいく予定だ。


「思恩! 《容姿変化ようしへんか》だ!」

「やっぱり緊張するよ」

 言ってる場合か!


 まあいい。ここから先は父様の手配により警備員もいない。計画は順調に進んでいる。





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