ぼっち女児、祠を壊して魔物をゲット

あいすらん

1

 平成中期で6歳だった。

 私は県境の限界集落に住んでいた。

 おーい、と叫べば、こだまが10往復するくらいの山奥である。

 教員である父の赴任で住み始めたそこは、虫と鳥と動物は腐るほどいるが、人間の数……特に子供が少なくて。

 話し相手も遊び仲間もゼロ。

 私はたった6つで、深い孤独を味わっていた。


 遥か下にある国道を眺め、「あの車の中には人間がいる……人間が……うう、人間……」と飢えたゾンビみたくうめいていた私の前に、突然5人の男児が現れた。


「お前が先生の娘か。全然似てねーな」

「ゴリラの娘にしちゃー可愛いのう」


 庭にいた私を取り囲んだ、いかにもわんぱくそうな父の教え子たち。

 いがぐり頭のタケシ君がボスで、それ以外は取り巻きだろう。

 彼らの醸し出す空気からは明確なヒエラルキーが感じ取れて、かすかな違和感を覚えてしまう。しかしそれも一瞬だった。

 タケシ君が言ったのだ。

 膝を曲げて、私と視線を合わせて。


「俺らと遊ぶか?」


 ……と。



 遊び。

 それは幼児の日常。

 だが、ぼっちの私にとっては夢物語だった。 

 狂おしいほど欲していたその奇跡があっけなく与えられ、灰色だった土曜日の昼下がりが、たちまちカラフルに輝き始める。


「……いいよ」


 冷静を装ったものの内心狂気乱舞だった。おそらく、父の命令でやってきたお情けのお誘いだろうが構わない。

 真の友がどうとか、この際贅沢は言ってられない。地獄で神様に出会ったような気分だった。


 父……グッジョブ。

 出張中の父に心の中で感謝を叫び、私は彼らに伴われ弾むように山を下り始めたのだった。





 やがて私たちは小さな神社にたどり着いた。

 屋根も庭も境内も枯れ葉だらけでしばらく誰にも手入れされてないとわかる。どこかからお化けが出てきそうだ。


(こんな場所知らない……)


 ここにきて半年、母とはあちこちを探検したが、まだまだ開拓すべき場所があったとは。

 落ち葉拾いをするのか、それともかくれんぼか。

 これから始まるひとときに胸が膨らむ。


「あー、おったおった」


 タケシ君がニンマリ笑う。視線を辿ると、長髪をゆるく束ねた和装の男性が目に入った。

 古びた祠の前にゴザを引き、胡座をかいているその人は大木と祠の借景を背負い、まるで父の好きな時代劇で見る侍のようだった。

 怖い。と一瞬思ってしまう。侍には、刀でバッサバサと人を斬るイメージがある。


「邪魔やのう」

「あいつ、足が悪うて歩けんのぞ」


 お兄ちゃんたちはニヤニヤ顔で言い合っている。

 意地悪……を通り越して邪悪な顔だ。


「……またお前らか。帰れ」


 男性は真っ直ぐに前を見て言った。

 意外にもかなりのイケボだ。

 澄んだ響きのそれに、恐怖がやわらぐ。

 そんなに怖い人じゃないかも、となんとなく感じた。

 ところが。


「うっせーわ」


 タケシ君がおもむろに石を拾い、男性へ投げた。

 たらりと眉間から血が流れる。私は両目を見開いた。


「お兄ちゃん……」


 どうして、という言葉は、発することができなかった。タケシくんの細められた目がとてもうれしそうに見えたからだ。

 意外すぎて思考が止まった私の前でタケシくんが叫ぶ。


「やっちまえ!」

「おう!」


 タケシ君の音頭を皮切りにして、取り巻きたちも次々に石を投げ始める。


「バチ当たりめ!」


 男性は足が不自由なため、立ち上がれない。

 しかし反射神経は凄まじく、5箇所から繰り出されるつぶてを、持っていた杖でカキーンカキーンと跳ね返している。


「くそっ! よけんな! ゴミクズめ」


 少年たちは、君ら本当に子供なん? とツッコミ入れたくなるほどの悪どい顔で、石を投げ続けている。

 しかし、そのどれも、男性に当てることはできてなかった。

 開始の自然さといいスムーズな試合運びといい、しょっちゅう繰り返されているバトルなのだろう。

 目の前で石つぶてが弧を描いて飛んでいく様が繰り返される。


 私はポカーンと口を開けた。

 最初の流血には驚いたが、その後は男性の人間離れした反射神経と、言っても悪役が子供でちゃちいという事実が物事を複雑にさせていた。


(これは……もしかしてお遊びなのか?)


 そんな可能性が頭をもたげる。

 訝しむ私の目の前をカキーンと過ぎていく石つぶて。


(そうかもしれない)


 だとしたら期待外れもいいところだった。

 私がしたかったのは……もっと、こう、女児でも参加できる穏やかなもの。例えばどんぐり拾いとか、せいぜい鬼ごっこあたり?

 侍っぽい男性対小学生低学年の仁義なき戦いに、ぼっち女児の私が割り込めるはずはありません。


(お父さん。なんで女子を寄越してくれなかったの……。女児の遊び相手はお姉ちゃんでしょ!)


 悔しさに唇を噛み締める。

 父が帰ってきたら小一時間ほど問い詰めたい。


「帰ろっかな……」


 失望を隠せず立ち去ろうとしたらぴたりとつぶての応酬が終わった。

 少年たちが一斉に私を見る。


「え?」


 嫌な予感が胸をよぎる。

 タケシ君がニンマリ笑って近づいてきた。

 さっきまで眩しかったその笑顔が今は悪代官の笑みにしか見えない。

 タケシ君はかがむと大きな石を拾い、私に差し出す。

 重い。両手で持たないと足の上に落としそう。

 タケシ君は不気味な笑みを浮かべたまま、とんでもない事を言い出した。


「これ、あいつに投げてみ?」

「え?」


 私はチラリと男性を見る。

 長く垂れた前髪の向こう側から鋭い目がこちらを見ている。野獣のようなその目に見惚れてしまう。

 その間にも邪悪なお誘いは生きていたらしい。


「当てたら、遊んでやるけんの」


 耳元で囁かれ私は思わず唾をゴクリと飲み込んだ。

 めちゃくちゃツボをつかれているっ。

 なんてことだ。遊びは、私にとって特別なものだ。喉から手が出るほど欲しかったもの。


 でも……。


「やめとく」


 石を地面にそっと落とす。

 私は女児だし。激しいお遊びは苦手なんです。


「なんでじゃ。お前、一人ぼっちなんやろ。ずっと遊び相手になっちゃる」


 敵はさらに痛いところをついてくる。


「俺らの仲間になるためや。ほら、投げい。大したことないわい。こいつも、喜んどる」


 タケシ君はしつこかった。

 仲間。ううう。そりゃ欲しい。

 欲しいけれども。


 私はおずおずと男性に目を向けた。

 未だ額から流れる赤い血。

 目にした瞬間、胸がきゅうっと締めつけられる。


「無理」

「なんでや」

「痛そうやし」


 そう言った瞬間、はっきりと気づく。

 コレはやっぱりお遊びなんかじゃない。

 もっと違う、何かダメなものだ。


「お兄ちゃんたちもやめたら? 可哀想」


 冷たい風が私たちの間を通り過ぎる。


「ハハハ」


 いきなり男性が大声で笑い始めた。


「恥ずかしい奴らめ。ちびにお説教されとるが」

「なんだと」

「お前らは卑怯者じゃっちゅーことよ」

「くそ」


 1人の少年が私の前に立ちはだかる。

 そして、腕を強い力で握りしめた。


「生意気やのう。ゴリラの娘のくせに」

「え?」

「最初からお前なんか、仲間にしてやる気はねーわ」


 私に向けられた視線は、とても冷たいものへと変わっていた。


 ◇◇


 縄跳びの縄で大木へと縛り付けられた私に、タケシ君たちはとうとうと全てを語った。

 ドラマなどで崖っぷちに追い詰められた犯人がなぜか全てを語るシーンをよく見るが、それを思い出させる典型的な悪者の吐露だった。


「ゴリラ(注※私の父です)には恨みがあるっ。去年までは玲子先生が担任だったのにっ! なんで今はゴリラなんだよっ!」

「ゴリラのせいで俺らは小猿の軍団と呼ばれとるんや」

「玲子先生っ! カムバック」


 父の前の担任は玲子先生という美女だったらしい。

 そして確かに私の父はゴリラに似ている。

 バナナを食べていると思わず二度見してしまうほどだ。

 念の為に確認しておく。


「えっと、恨みをはらすために私を……?」

「はっはっ。今頃気づいたか」

「ゴリラ顔ってだけで?」

「最悪だろ!」


 ……父よ。

 ああ、いや、父に罪はない……。

 ゴリラな見た目は望んで得たものではないのだし。


 はああああああああ。

 善意で誘われたのかと思っていたら、私怨による拉致だったとはなんたる罠。

 山道を下る時は手を引いてくれて、優しい言葉もかけてくれた。

 あのお姫様扱いは全部私を油断させるためだったのか。

 そんなのあり?

 頼むから嘘だと言ってほしい。ドッキリでもいいよ。許す。

 でも、長方形の札が出てくることはなく。

 期待が大きすぎたため、失望が半端ない。


 私は泣きたかった。


 仲良くなれるかもと思ったのに……。

 遊んでもらえると思ったのに。

 寂しさが……ワクワクに変わって、踊り出したいくらいだったのに。

 世界で一番幸せな女の子だったのに。

 これから私は何かされるのかもしれない。

 でも、きっとその痛みは。

 今この瞬間味わっている胸の痛みほどではない、と確信できるほど私は心から傷ついており。

 傷ついた顔を見せたくないと思うくらい、浮かれていた数分前の自分が恥ずかしくて哀れだった。


「わしに石の一つも当てられん無能のくせに」


 男性はますます煽る。


「それじゃ」


 タケシ君は私を振り返りながら言った。


「今からお前が石を避ける度にコイツを叩く。コイツが可哀想と思うなら避けるな!」


 はああああ?

 さっきの闘いぶりを見ると、彼らのバトルにはそこそこの歴史があるようだ。

 その決着をズルしてつけるなんて、タケシ君はともかくも取り巻きが納得するわけがない。


「タケシってすげーな」

「ナイスアイデア」


 むしろ賞賛されている。クズだった。


「あの、そんな勝ち方で嬉しい?」


 あおるつもりはなくてただの質問だった。

 しかしタケシ君はバカにされたと思ったらしい。


「黙れ。チビゴリラ!」


 ぱしん、と頬を叩かれて、あまりの痛さに涙が浮かぶ。

 言葉だけでなく、リアルに身体的な攻撃を受けて、思考が停止した。


「腐ったガキどもめ」


 軽蔑しきった口調で男性が言った。


「自分より弱いものをいじめて憂さ晴らしをして楽しいか。わしには全く理解不能な思考回路だ」


 私は涙に潤んだ目で男性を見た。共感しかない。


「俺に当てろよ。祠が壊れたら大変なことになるけんのお」


 男性は言う。

 えっ。もしかして助けてくれるの?

 男性は杖を下ろすと目を閉じた。


「やれ」


 その姿は潔くて……。

 私は思わず息を呑む。


「このやろう!」


 こん、という不快な音が聞こえてきた。

 取り巻きの一人が、男性に石を投げたのだ。

 男性は逃げないため、たくさんの石が細い体を打つ。

 それはとても痛々しく……。

 私のために……ひどい目に……!


 激しい怒りが沸々と腹の底から湧き上がってきた。

 なんなの。マジで。なんなの、これ。


「うわあああああああああああああああん」


 私は天を仰ぎ咆哮した。

 悔しくて苦しくて、もう暴れ出したいほどだった。

 騙されたことも辛いが、自分のせいでおじちゃんがひどい目に遭っている。それは耐え難い苦痛だった。

 と、悲痛な私の声は、あたりに響き渡り……。


 ガラガラ、どしゃーん。

 凄まじい、何かが崩れるような物音が私の鼓膜を震わせる。


「え?」


 恐る恐る私は振り返った私の目に、跡形もなく壊れた祠が飛び込んできた。


「誰が?」


 訝しむ私をそこにいる全員が指差した。


「えっ? 私?!」

「お前の声で、祠が壊れたんじゃ!」


 タケシ君が感心したように私を見る。


「え……私って超音波出せるの?」

「バカ! その祠は魔物を封じ込めてたんだぞ!」


 男性が私を睨んでいる。


「祠を壊したな。恐ろしい。もうおしまいだ」


 みんな私を恨めしげに見る。

 ていうか、本当に私のせい?

 助けて。不安すぎて吐きそうだ。


「おしまいって……どうなるのっ?!?!」

「……世界が……滅びる」

「げ」


 不吉なセリフと共に、男性はゆっくりと片膝を立てて立ち上がる。


「……でっかい……」


 私はその威風堂々とした立ち姿に思わず見惚れた。


「俺の手で、な」


 そう言うと男性は持っていた杖を一閃した。

 目の前でタケシ君の体がぐにゃりと歪み……。

 次の瞬間、ミンチになったタケシ君が、あたり一体へと飛び散ったのだった。


「きゃー!!!!!!!」


 私は叫んだ。


「ふん。祠を壊した罰だ」


 全く悪びれない表情で男性は言う。


「こ、壊したのは私なんだけども……!」


 どうしよう。つい弾みで名乗り出てしまった。バカバカバカ!

 次なるミンチを覚悟していたが


「でかした。これで1000年の封印から解きはなたれた」


 殺されるどころか、褒められてしまった。

 そんなこと言われたら……タケシ君の死への責任が私にあるみたいじゃない。(あるんだけど)


「じゃあなぜお兄ちゃんを……」


 男性の目が怒りのためか、血走って見える。


「……毎日俺に石を投げていた。目には目を、歯には歯を。遅すぎたくらいだ。封印さえされていなければとっくに滅していただろう」


 それって、祠関係なくない?

 いや、今はそれどころじゃない。


「……魔物っておじちゃんだったの?!」

「その通り」


 男性は、きっぱりとうなずいた。

 つまり、封じられた自分を、自分で守ってた的な?

 一人二役?


(ややこしい……)


 どっちにしても、タケシ君たちはとんでもない化け物に石を投げていたと言うわけだ。

 ありえないほどの衝撃に見舞われた時、人はむしろ落ち着きを取り戻すのだと私は知った。

 今私の頭の中では「それで、どうする?」という言葉だけがグルグル回っている。


「お前のおかげで自由を得た。恩返しになんでも言うことをきいてやる。どうする? この卑怯者たちを血祭りにあげるか?」

「ひいいい」


 ギロリと睨まれ、タケシくんの取り巻きたちは震え上がる。

 が、平常心平常心。


「それなら……お兄ちゃんを元通りにして!」


 私はかつてはタケシ君だった血溜まりをピシリと指差した。


「は? なんでだ? こんな奴くずだろ」

「なんでも言うことを聞くって言ったのは嘘?」


 幼女(私)にせまられ、男性は少々たじろいだ。


「バカ。魔物である俺様に二言はない」

「じゃあ、早く」

「……しゃあないのう」


 渋々と言った感じで男性は従う。

 再び杖を一閃させると、ミンチだったタケシ君はじわじわと人間の形に戻り、やがて元通りになった。


「お兄ちゃん、大丈夫?」

「な、な、何が起きた」


 キョトンとしているタケシ君に、取り巻きたちが言う。


「ゴリラの娘が……魔物をけしかけて……」

「タケシを……血祭りに……」

「違うでしょ。ちゃんと見てた?」


 真実を語るため一歩前に踏み出すと、


「ぎゃー!!!!!」


 まるで化け物を見たかのような悲鳴をあげ、彼らは一目散に逃げていく。なんという濡れ衣。


「あ……待って。行かないで」


 私は彼らに片手を伸ばした。


「帰り道がわからないよぅ!」


 しかしお兄ちゃんたちは、振り向くことなく去っていく。

 置き去りにされた私は膝をついた。


「ううう……どうしよう」


 涙ぐみながらチラッと男性を見る。できれば道を教えて欲しかったのだが、

 あれ? なんだかさらに若返ってる?

 幼児の私から見ても、封印から解き放たれた男性は美しかった。

 高いすっとした鼻。シャープな顎のライン。切れ長の目、ツヤツヤした黒髪。


「さてと。それじゃ、始めるとするか」


 絶望している私の前で男性がコキコキと肩を回している。

 幼女の嘆きに無関心だなんて。あんまりだ。とはいえ、なんだか嫌な予感がするから私は聞いた。


「あの、始めるって何を?」


 そして、ものすごく後悔した。


「世界を滅ぼすに決まっとろーが」

「えっ?」


 たらりと背中に汗が流れる。


「封印も解けたしこっからは無敵だ。腕がなるぜぇ」


 私は両目を見開いた。聞かなければ良かったけどもう遅い。

 ミンチになったタケシ君を思い出し、心臓がバクバクし始める。

 これは家に帰れないところじゃないかもしれない。


「1000年分の恨みを思い知らせてやる」


 独り言のような呟きから隠し切れない怒りと恨みがにじみ出ている。


「1000年……長いよね」

「ああ」

「かわいそう」


 胸の中に激しい感情が生まれてくる。これは……同情心。

 たった6年間ぼっちだっただけで辛かった。

 1000年の孤独とは、どれほどの重みがあるだろう。

 気づけばガシッと彼の手を握っていた。


「おじちゃんっ!!!」

「は? なんだ?」


 男性は両目を見開いた。とはいえ、振りほどこうとはしない。案外優しい。


「私が友達になってあげる! だから一緒にお遊びしよう!」


 そう言った瞬間、頭の中に電球がひらめいた。グッドアイディアである。なんでこれをいち早く思いつかなかったのだろう。


「俺は魔物だぞ? その俺がなんでお前みたいなチビと」

「大きくなったら、私もおじちゃんを手伝うから。だからそれまで。ね?」


 大事なことなので繰り返す。その時の私は幼児だった。

 そして友達が欲しくてたまらなかった。


「ほう」


 魔物の眉が面白そうに釣り上がる。

 よく見ると、おじちゃんの目はキラキラとしている。

 さっきの卑怯なお兄ちゃんたちよりよっぽど魅力的だった。

 自分を騙そうとした村の子供達なんか、もはやどうでもいい。

 このおじちゃんでいいわ。

 歳とか種族とか性別とか、色々懸念点はあるが、全てに絶望していた私には十分妥協できる範囲だった。

 友達になろう。絶対に。


「そういえば、お前、祠を壊したよな」


 ぎくり。


「えっと、そ、そ、そ、それはさっき正直に言ったじゃない!」

「責めてるわけじゃない。なるほど、面白いかもな」


 おじいちゃんの中で、何かが腑に落ちたらしい。

 まっすぐの目は私を見ている。


「わかった。じゃあ楽しませてくれよ」

「もちろんです」


 私は心の底からうなずいた。


 ◇


「と言うわけで、それから10年一緒にいます……」


 4月。桜の花が芳しい季節。

 男性、咲夜(さくや)と共に並び、私は自己紹介を済ませた。

 黒髪を束ね、白い和装に刀まで携えた彼は、ますます江戸時代の人ぽくなっている。


「魔物が幼馴染だなんて」

「素敵……!」


 女生徒たちの熱い眼差し。

 そう。咲夜は日を経つにつれ、凄まじい迫力の美形へと変化した。

 そして私と共に、世界を守っている。


おしまい


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